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藤井 修治
 
Vol.12 「いまどきの宗教心」  
2000年8月16日
8月15日は終戦記念日ですが、お堅い話は別の機会にします。この日は月おくれの盆ということです。 東京のお盆は7月15日なのですが、東京以外は月おくれだそうで、帰省する人が多いとかで都心はすごく静 かで交通渋滞はありません。友人がきょうお墓参りに行くとのこと。お盆に先祖様が帰宅するということだ からお墓に行っても仏様は留守なんじゃないのかとも思うんですが?
一年を考えると、お正月には神社に初詣で。お彼岸やお盆は仏教の行事、クリスマスはキリスト教。人の 一生では、生まれたらお宮参り、近ごろは教会で結婚式、死ねば仏様になるということでマルチな宗教 に接しています。
外国の人で日本人は宗教心がないとか、節操がないとかいう人もいるようです。そうか も知れませんが、いい意味で寛大です。神社の前を通ればかしわ手を打ち、お寺では宗派を問わずお賽銭を あげ、教会でも神妙に手を合わせる人もいます。特殊な宗教の信者の人は別として、われわれ一般 人は、宗 教的には柔軟に対応しているようです。宗教や政治体制の違いなどで憎しみあったり殺し合つたりすること がないのはありがたいと思います。
僕も信仰心はないにひとしいのでが、毎朝、神棚と仏壇に水をあげたり、ろうそくを灯して拝んではいま す。これは信仰というよりも習慣ですね。でも拝んでいる時は神妙な気持ちになります。結局は自分の気持 ちをひきしめ一日がんばろうという気になる点では効果があるようです。日本人の宗教心はだいたいこの程 度でしょうが、いいんじゃない?
芸術全般についても、われわれは宗教的な差別をしていません。日本全国の神社仏閣を訪ねますと、仏像な どを美術品として見てしまうのですが、やはりありがたい気持ちになり、心が洗われるような気がします。
20年ほど前でしたか、仕事をさぼって母や叔母、姉を連れてフランスに行ったことがあります。パリのノ- トルダム寺院の暗い内陣の一角にろうそくがたくさん並べられている台がありました。母は浅草の観音様な んかとおなじだわねと火をともしていました。あちこちのマリア像などをみても美人だとか何とか、けっこ う楽しみながら拝んでいました。数少ない親孝行の思い出です。20世紀から21世紀にかけては、このてい どの宗教心の方が生きるのには気楽だと思います。事実、母の晩年はおだやかで楽しそうでした。
明治以来の教育のおかげか、音楽についてはキリスト教関係の名曲がポピュラ-ですね。イエス・キリストの死の前後を描く受難曲をはじめ、ミサ曲やカンタ-タ等々から賛美歌まで、それぞれ感動させられる場 合が多いようです。それに対して仏教の声明(しょうみょう)はいまや日本人にとってはエキゾチック・ジャ パンといった感じで魅力十分。さらにイスラム教のモスクの高い塔の上から聞こえる祈りの声アッザ-ン なども一度はイスタンブ-ルでナマで聴いてみたい。バリ島のケチャも宗教的な歌や踊りとのことです。
踊りといえば、あの「白鳥の湖」も愛は死よりも強しというようなキリスト教的世界らしいです。しかしそんなことを知らなくても感動します。この名作が無宗教のはずのソ連時代にも温存されていたのは、宗教 心や民族、政治を越えた普遍性があったからでしょう。宗教に関係なく無心に芸術に接すれば、いろんなものがみえてきたり聞こえてくるようです。いまや世界中の文化をわけへだてなく楽しむことができる時代に なろうとしています。
戦後55年です。21世紀には世界平和が実現しますように!これは宗教心からではありません。普通 の人間 の平常心からの願いです。結局堅い話になったかな?



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