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藤井 修治
 
Vol.13 「月に想う」  
2000年8月29日
「満月は非日常へのパスポート」。つい先日の朝日新聞の第一面 「折々のうた」に選ばれた最近の高校生の俳句です。とかく白い目で見られがちの現代の高校生が作った句ということで少し嬉しくなりました。日本では花鳥風月とか雪月花とかいう言葉があるように、月に関する文学や美術が欧米に比べダントツに多いようです。万葉の昔から現代まで月が忘れられないのは面 白いことです。
数日前、新宿南口のルミネのレストラン街でランチタイムのすき焼きを食べたのですが、壁面 に近代の歌人、会津八一(あいづやいち)の歌三首が墨書された額がかかっていました。三首目「おほてらのまろきはしらのつきかげを つちにふみつつものをこそおもへ」。旧かな読めますか?奈良で詠んだひらがな歌集の一首です。東大寺大仏殿での歌かと思っていたのですが唐招提寺で詠んだとのこと。万葉調の調子のよさ、いかにも日本的でわかりやすい名歌です。おかげで残暑でのすき焼きもおいしくいただけました。
いっぽう同じころ、NHK教育テレビの深夜放送で、太陽系や銀河系など、天文学をわかりやすく解説した番組を見ました。中高生時代に習ったことの復習になりました。広大な宇宙の中の銀河系の中の太陽系は恒星太陽を中心に、地球をはじめいくつかの惑星が周り、地球には衛星として月があります。月はわれわれに一番近い天体です。月は満月の時は太陽の反対側にあるので、日没前後に東の空に昇りますが、一日に50分ぐらいずつ出るのがおくれ、次第に欠けていきます。
そして下弦、新月、上弦となり、四週間ぐらいで再び満月となります。そんなこと知ってるって!でも理論的に知っていても実際にはなかなか実感がないと思います。
昔の人は、電気がなくて暗かったこともあり、月の満ち欠けや潮の干潮などよく知っていたようで、それが歌になったり絵になったりしたのでしょう。しかし科学的な知識がないので月は平面 だと思っていたらしいのです。その反対に現代人は月面着陸をした人もいて、月にはかぐや姫やうさぎがいないことはちゃんとわかっています。でもこうなるとイメージがふくらまなくなってしまいますネ。
そう考えると現代人には月を科学的に観察する人と、情緒的に眺める人に分かれるような気もします。ところでこの相反するような物の見方を両立させると、新しい芸術が生まれてくるかもしれません。冒頭にあげた高校生の俳句もそんな感じがします。月の知識を持ちながら意識して非日常、非現実の世界に踏み込もうという積極性すら感じられ、イメージが二次元から三次元、四次元まで発展しそうです。
さて、月は見えるけど音は聞こえません。天空をゆっくり移動しますが、静かそのもので活発には動きません。当然のように月は絵にはよく描かれています。そして音は出さなくてもイメージ豊かな詩人や作曲家によって音楽にもなっています。ベートーベンの「月光ソナタ」からドビュッシーやフォーレの曲など。しかし月の動きがないことからバレエではとかく背景にとどまります。現代の舞踊でも欧米の作品には月はほとんど扱われません。キリアンなどは例外でしょう。それに対し、日本のモダンダンスの小品は自然現象を描くものがけっこう多く、月もときどき登場するような気もします。コンクールや新人公演などで自然を素材にした作品を見ると、日本のモダンダンスは世界に類のない独自性や魅力を持っています。機会があればごらんになるのをおすすめします。
ちなみに、ことしの十五夜、旧暦の8月15日は9月12日のはずです。たまには仲秋の名月を眺めるのもいいような気もします。



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