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藤井 修治
 
Vol.21 「記憶力の衰え」  
2000年12月21日
 年輩の人が集まると、記憶力が悪くなった話でけっこう盛り上がります。先日、コンク-ルの審査の休憩時間に、またまたそんな話になりました。そこで僕が「ボクはゼンゼン忘れたりしないヨ」というと一瞬座がシラケます。すかさず「だって初めから覚えられないから忘れようがないモン」というと、一同笑いながらもホッとした様子です。
 人間の脳細胞は若い時から一日に10万個ずつ減少するとか。記憶力の減退もそのせいでしょうか。しかしもともと何十兆とかとてつもなく数が多いので、一応は心配しなくてもよいそうです。
 考えてみると、記憶力がいいことと頭がいいこととは必ずしも一致しないはずです。いつどこで何を食べてそれがいくらだったとか、雑多なことをいつまでも覚えていてもしようがありません。覚えておくべきことを選別 して、断片を総合し、時に応じて物事を判断する思考力が大切でしょう。
 僕なんか、このごろはついさっきのことすら忘れてしまいますが、生命に別 条はありません。若い時よりも物事を即断即決で片づけてしまっても、あんまり間違いはないようです。社会的な経験が多少は役に立っているのかも知れません。細かいことは若い人や新しい器機がやってくれるのはありがたいことですが、これも年をとったおかげでしょう。
 そういえば、年をとっても活躍している人、例えば政治家とか社長さんとかもダテには年をとっていないようです。偉い人でもたびたび失言する人もいますが、偉くなくても総じて年長者のいうことは正しいことが多いようです。
 舞踊コンク-ルのあと、参加者の前で何かいえといわれると、こんなことをいったりします。「日本のバレエの進歩は驚異的なものがあり、若い皆さんは、先生がたの若い時よりもたくさん廻ったり高く跳べます。でも皆さんがたは先生がたに絶対追いつけないことがあります。ワカル-? それは年(トシ)です。先に生まれた人はたいてい正しいことをいいます。だから先生がたのいうことを聴いたほうが結局は得ですよ。」等々。もうおじいさんですね。
 バレエを見ていると若い人はテクニックがすごいだけでなく覚えも早い。オケピで演奏するオケの人は、ダンサ-たちがよく振りを間違えないと感心しています。ダンサ-が若いということもありますが、頭よりも身体で覚えているからでしょう。
 音楽の世界でも、オケの人や伴奏ピアニストは、楽譜を見ますがオペラ歌手や協奏曲のソリストは暗譜です。これがけっこうプレッシャ-だそうです。ピアノの巨匠リヒテルは晩年は楽譜を見ていました。忘れる心配がないうえに精神の集中ができるとか。大指揮者ベ-ムは新しい曲が覚えにくいので、晩年は自分の血となり肉となっているお得意の曲しか振りませんでした。でもそれを何回きいても感動したのをいまでも覚えています。
 さて、この世紀末、こちらも年とってつい最近のことはすぐ忘れます。先日、若い人に話しかけられ、話している間に先日紹介されたばかりの新聞社の人とわかりました。何とかつじつまを合わせたのですが、いつもうまくいくとは限りません。いつだったか、きれいなお姉さんに声をかけられました。超美人の顔を忘れたとなるとプライドを傷つけるかと思って「しばらく-! ゲンキ-?」と肩をたたいたら、「はじめまして、OO社のOOと申します。」といわれてしまいました。調子がよすぎました。今後が心配です。
 こんな事で20世紀も終わり、何とか21世紀を迎えられそうです。「白鳥の湖」「くるみ割り人形」だけでなく「バヤデルカ」等々19世紀のバレエがもてています。僕たち20世紀人はもすこし若い。もうちょっとがんばりたいと思います。来年もよろしく!



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