D×D

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト

 

ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

藤井 修治
Vol.78 「思い切ってのアドリブ旅行です」
2003年5月8日

 またサクラー?といわれそうですが、桜の「追っかけ」としては最大の目標だった弘前城の桜を見て来ました。叔母がここの桜を気に入って毎年のように花見に行っていたのですが、老齢のために行けなくなったようですし、一度だけ花見に行った妹は日本一の桜だなどといっています。ということで僕も老人といわれる年になってきたので動けるうちに何とか行ってみたいと考えていました。ところが開花時期がはっきりしなかったり、ホテルがとれなかったりして実現できなかったのです。さて、僕の親友たちもつぎつぎに年輩フリーターになって来て自分の時間がとれるようになりました。その中の一人が弘前の桜の満開時期を予想して東北一泊旅行を計画、東北新幹線「はやて」で八戸(はちのへ)まで、そして東北本線にのりかえて青森までの往復のチケットと青森のビジネスホテルの宿泊のセットプランを格安で予約してくれました。ところがテレビのニュースでは開花が相当早まってきていて出発日には散っているかも。でもせっかくの機会を逃がすわけには行きません。
 4月30日8時23分東京発「はやて」5号の速いこと。東北本線とは違う線路が多く、春景色に感心。山桜をはじめ、れんぎょうや山吹等々の花々や芽が出たばかりの若葉の色が夢のようです。石川啄木の歌など思い出すうちに北国に入り梅も咲いています。北国の春は「桜桃梅里(おうとうばいり)」といっていろんな花々が一斉に咲き競うと母が言っていたのをウン十年後に実感しました。
 3時間足らずで八戸に到着、東北本線にのりかえて、青森では降りずに弘前まで乗り越して桜に直行することに決定。早くも1時すぎには弘前に到着しました。弘前公園を通るバスにとび乗って公園が見えてきますと、お堀ばたの染井吉野はほとんど散っています。
 ガックリ!しかしバスを降りて近づくとお堀には桜の花びらがびっしりと白いじゅうたんのように敷きつめられていて不思議な見ものでした。公園に入るとまず何本かの背の低い濃いピンクの八重桜が満開です。立て札を見ると横浜緋桜とか。神奈川の横浜でなく東北の横浜らしい。派手なのでびっくり。公園の中心に天守閣がありましたが以外に小さい。かつては5層だったのが江戸時代末期に3層になったとか。大名も苦しかったのでしょうか。
 さらに奥の広場では淡いピンクの紅枝垂れ桜が満開です。曇天でしたが岩木山の下半身が美しい背景となっていました。反対側には整備された植物園があって、各種の桜が一本ずつ植えてあります。新宿御苑で先日満開だった種類がまだ固いつぼみだったので日本もけっこう広いなと感心もしました。
 公園を一周してだいぶ疲れたのでガイドブックを開けて相談。公園の近くで津軽三味線のライブをやっている和食の店をさがしました。ゆっくりとスローフードを楽しんでから第一回目のステージ。といっても広間の片隅で若い男女の三味線奏者の息の合った二重奏でした。歌がないのでジャズのインストルメンタルのライブのようなスリルもありました。
 食事もすんだので外に出ると夜桜が見たくなって公園に戻って夜桜見物を洒落ました。ちょうちんに映えた桜並木がお堀の水面に映っているのも優雅で幻想的でした。コール・ド・バレエが整然と並びながらも各自が個性をも主張しているようで感心感心。ものすごく疲れたのでバス停に行く元気もなく、タクシーに乗り込み弘前駅へ。普通列車で青森に戻って駅近くのホテルになだれ込みました。
 翌日はもう5月、奥入瀬渓谷の若葉を見たいと騒いだのですが、まだ少々時期が早いとかであきらめて、青森近くの国特別史跡の三内(さんない)丸山遺跡にいくことにしたのです。駅構内の食堂で焼魚定食の朝食をとって、一番のバスで遺跡前に到着。9時開場少し前なので昨秋出来たばかりの「縄文時遊館(じゆうかん)」のロビーでパンフレットをもらって事前のお勉強、開場と同時に超現代的設備のととのった時遊館での解説や映像に感心してから東京ドームの8倍もあるという遺跡を巡りましたが、とうてい全部は廻れません。半分は映像だけ見てダウン。出口近くのお土産コーナーで地ビールを飲んだりしたら疲れがドット出てもうクラクラです。
 バスで青森に戻ってもまだ時間があるので東北線で少し戻って浅虫温泉というところで昼間から温泉に入ろうということになりました。浅虫の駅の案内所で入浴だけできる宿をたずねますと、近くの旅館で、食事をすると入浴料が無料になるというのでフリーターたちのこと、そこに決定。釜飯を頼むと50分かかるというので注文して大浴場でのんびり入浴させてもらい、いい気分になっての出来たばかりのうに釜飯のおいしかったこと。、まだ時間があるので歩いて10分ほどの浅虫水族館に行きました。ラッコの餌づけを見たり、呼びもののイルカのショーを楽しみました。イルカの動きの美しさと振付の面白さにも感心。水の妖精クリオネが小さいのにもびっくり。等々。けっこう発見がありました。
 帰りの列車の時刻になって、浅虫から八戸、そして東北新幹線で帰途につく間に日が暮れました。年甲斐もなく走り回った2日間、車中でおくれをとっていた原稿を書こうなどとは思ったのですが、同行の友人にイヤ味になるようにも思ってやめました。ということで仕事のことは一切考えないでのリフレッシュには成功しました。たまにはこういうこともいいのだと確認もしたのです。
 弘前城の桜を見る旅だったのですが、車中での風景や多種多様の花々を見て東北の春を満喫できました。いささかぜいたくに感じられるようですが、友人が駅でのチラシなどを比較検討して、すごく安くセッティングしてくれたのです。そして値段の割りに得るものも多かったような気もします。今回なんかお金持ちでなくても何とか実現できる旅行でした。
 桜以外にアドリブを加えての気まま旅、何かを求めているわけでもないのに何かが見えて来たりして・・・。こんな旅行は一文の得にもならないと思う人もいるでしょうがそこがいいのだと思います。
 今回は僕自身の行楽記ばかり書いてしまいました。それも遠足のつづりかたみたいになっているのですが、まだ童心や好奇心が残っていたのかと少し安心もします。つい偉そうになってしまいますが、飽きもしないでの桜を求めての外出は、単純に桜の花が綺麗なので、つい見物に出かけて行くだけなのに、それが美の探求につながってしまうというのが本音でしょうか。




掲載されている評論へのご意見やご感想を下記連絡先までお寄せ下さい。
お寄せ頂いたご意見・ご感想は両先生にお渡しして今後の掲載に反映させて頂きます。
また、このページに関する意見等もお待ちしております。
 
mail:video@kk-video.co.jp