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うらわまこと
 
Vol.6 「創作の面白さ、むずかしさ
  ~J-バレエに思う~」
2000年5月30日
 

新国立劇場のJ-バレエを見ました。これはダンス・クレアシオン(クレアシオン・ド・ラ・ダンス)とショルダー(肩書き)が付いているとおり、なぜここだけフランス語なのかは別 として、日本人振付家による創作シリーズです。J-バレエというのも、とくに説明はないのですが、多分ジャパニーズ・バレエの意味なのでしょう。
ちょうど一年前、新しく芸術監督に就任することになった牧阿佐美さんの記者会見で、新国立として世界に発信する創作を考えていますかと聞いたとき、このJ-バレエのことを話してくれました。いよいよそれが舞台にのったのです。
作品は3つ。上演順に金森穣「悲歌のシンフォニー」(グレッキ曲)、石井潤「十二夜」(マイネリオ他曲)、望月則彦「舞姫」(シュニトケ他曲)です。金森は二十代半ば、後の二人は四十代後半。年齢順に抽象から具象度が高くなっており、石井はシェイクスピア、望月は森鴎外の原作というのも面 白い。また作品のスタイルや振りにそれぞれ本人らしさがよくでていて、個々には多少の注文もありますが、出演者のレベルも高く、全体としては楽しめる公演でした。私の作品を評価する基準のひとつに、「もう一回見たいか」、があります。これには個人的な好みが入りますが、この点からも合格でした。
しかし、ここで作品評をするのではありません。取り上げたいのは、お客の入りについてです。チケット実売枚数の話もでていましたが、初日でも招待含めてざっと7~8割でしょうか。内容は悪くないのに残念です。
海外でもそういう傾向はありますが、とくにわが国では創作はお客が入りません。よくいえば、新作は当たり外れがあるから、評価が定まってから見ようということもあるでしょう。また、創作は難しいという固定観念があるかもしれません。さらに、一般 の公演では出演者(とくに女性)が切符を負担することが多いが、ここではそれをやらない。当然だけれど、つまりこれが実力なのだ、とか、演しものがやや古臭い、地味、とかいろいろなことがいわれています。それぞれが当たっているのでしょう。たしかに、あまりバレエに関心をもっていない人をひきつける要素には欠けていたようです。
ここでいくつか考えるべき点があるように思います。ひとつは「バレエ(ダンス)における芸術性と大衆性」の問題です。もちろん、芸術性、大衆性とはなにかといいはじめるときりがありませんが、私は両立すると思います。分かりやすくて笑いと涙、そしてお色気があって、それで見る人を感動させるものもあります。この点では、この日の作品はややお品が良すぎたきらいはありましたね。先端的な若い人は抽象的なダンスが好きなようですが、バレエやダンスをあまり知らない人には、「良く分かって、面 白い」ものが必要なのです。「笑い」や「涙」はむしろ日本舞踊の方に多いようです。歌舞伎や宝塚のようにスターも必要です。もちろん、これだけですべてが解決するわけではありません。そういうのは民間が考えることで、国立劇場では、採算や大衆性よりも実験的、先駆的なものにチャレンジすべきである、という意見も当然あるでしょう。また、バレエやダンスは面 白いものだと、見方を説明してファンの幅を広げるのが大事だという主張も。それらをうまくミックスしたプロを組んだらいいという考え方もあります。要はこれらは、国立劇場はいかにあるべきかという、ビジョンと方針の問題になります。
方針に関連して持論を一つ。ぜひ学校を作って下さい。そしてそこでダンサーとともに振付者も養成して下さい。どんな方針を出すにしても、長期的な視点は絶対に必要です。今回についても、だから創作はだめなんだという結論を急がないで欲しいのです。



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