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うらわまこと
 
Vol.17 芸術祭をもっと全国的なイベントに 
  -ある先達の意見に学ぶ-
2000年11月1日
 

 先日、ちょっと調べたいことがあって村松道弥さんの「おんぶまんだら」(昭和54年発行)という本を読み返しました。村松さんは、音楽、舞踊ジャ-ナリストとして、音楽新聞を創刊、村松賞を設けられたことでご存じの方も多いでしょう。もう数年前に亡くなられましたが、90歳を超えてもお元気で、地方の公演にも足しげくかよっておられました。舞台芸術、とくに舞踊というか、わが国の舞踊界を心から愛され、そのために厳しいこともずいぶん言われていました。久し振りで本を開いたのですが、その熱意ある内容に必要な部分だけでなく、ついいろいろと読み進んでしまいました。私としてはそのきちんとしたお考えと気骨ぶりに反省するところ、参考になるところがたくさんありました。
  そのなかに芸術祭にかんする記述があったのです。それは、昭和37年(1962)、当時の担当部門・文部省の芸術課長あてに公開質問状形式で提案されたものです。この内容には納得することも多く、その後改正されているものもあるのですが、とくに私が興味をもったのは次の点です。
  それは、芸術祭参加公演についてで、当時も洋舞よりも邦舞の方が盛んだったのですが、その参加公演の姿勢や質量 がまちまちであったことに関連しての提案でした。村松さんの提案の主旨はつぎのとおりです。
  「芸術祭参加公演は廃止する。その代わり前年1年間に全国で行われた公演の中から芸術的に優れた作品を特定の委員によって推薦してもらって、それを一定の期間にまとめて上演する。会場は国立劇場と虎ノ門ホ-ル(新国立はなかった)とする。東京で上演されたものは、その一部を組み合わせて地方にも巡回公演する。」
  そして昭和43年に、さらに具体的な提案をされています。すなわち、「公演費用は主催者である国と協賛企業などが全額負担する。上演作品のなかからなんらかの賞(大賞、奨励賞など)をだすのもよい。そして国家的な舞台芸術フェスティバルとして、広く海外にも宣伝し、またNHKTVなどでも放映するようにして観客動員や収入増をはかる。」
  現在では当時よりは芸術祭参加公演も大分整備されていますし、これをやめることがいいかどうかには異論も多いと思います。ただ、それとは別 に過去の優れた作品を選び、芸術祭としてまとめて上演するというアイディアはとても魅力的です。もちろん、これにもいろいろな問題があります。だれを選考委員とするか。全国で上演されている作品を(主要なものだけであっても)全部見ている人は多くはいませんし、といって少数の委員では主観的になってしまうという異論がでるでしょう。また逆に選ばれたほうのスケジュ-ルが合わないというおそれも大いにあります。そんなことで現在の主催公演の方式になったのかも知れません。また趣旨は多少違いますが、過去の優れた作品の再演はア-ツプランの助成公演や移動芸術祭のなかで一部行われています(とくに現代舞踊)。
  こうなると、村松さんの提案は、一部は実現しているし、全体としては実行が難しいということになってしまいます。ただ、私が重要だと思うのは、国としての姿勢です。率直にいって、現在の芸術祭は国家的行事とは言えません。これは村松さんが国民体育大会と比較して指摘しておられることで、全く同感です。せっかく邦・洋の国立劇場も整備されたことだし、国家的なビッグイベントとして位 置づけて、マスコミや海外対策を含めて盛り上げてもらいたいものです。芸術については国として積極的に乗り出すより、民間に任せるべきだという意見もあります。しかし、文化国家を目指す以上、国として経済だけでなく文化にももっと力を入れるべきではないでしょうか。皆さんはどう思われますか。




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