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うらわまこと
 
Vol.21 「今年書き残したこと 
  各地でユニークな活動をしている人たち
2000年12月12日
 

 20世紀にやり残したこと、言い残したこと、などというと大変おおげさになりますし、たくさんありすぎます。ですから、ここではこのページで書き残したことのなかから取り上げてみたいと思います。私が今願っているのは、日本舞踊界が発展すること、とくに各地で頑張っている人たちがきちんと認められ、報いられるようになることです。というのは、役所や舞踊関係の協会の本部、あるいは情報などが東京中心なものですから、それ以外のところの団体や個人はどうしてもいろいろな面 で不利になってしまうからです。
 いうまでもなく私は力はまったくありません。できることといえば、舞踊関係の審査や選考会で、そして機会があればいろいろなページでその活動を紹介することくらいです。そこで、今年の最後に、充実した、ユニークな活動をしているのに、これまであまり取り上げられていない人たちについて少し書かせていただこうと思います。
 このようなグループ、個人はたくさんありますが、ここではそのうち2000年の秋から暮れにかけて、中部、関西で行われた公演から3つを取り上げることにします。
 それは公演順に名古屋のフラメンコ依田由利子、神戸のモダンダンス藤田佳代、そして大阪のクラシックをベースにしたコンテンポラリーの矢上恵子です。
 依田は幼い頃邦正美や笠井叡に学び、舞踏の天使館で活動、それからフラメンコの世界に進んだ異色の経歴。しかしフラメンコの経験もけっこう長いのです。フラメンコの技術を使った具体的なテーマや筋のある作品は珍しくありませんが、象徴的に意味を表現するものが多いなかで、彼女は具体的に話を進めます。今年の彼女の作品は「マヤ」。美しい少女マヤをめぐる王子と貧しい彫刻家、王子の地位 と富に惹かれたマヤが、彫刻家の彫った自分の像を見て彼の深い愛を知るが、すでに遅すぎたという悲劇を多数の出演者によって分かりやすく、しかしドラマチックに描きます。これまでも「マクベス」や「赤と黒」などの名作をフラメンコ化し、名古屋地区で多くの支持を受けています。
 藤田佳代も、もう古いモダンダンサーでオーソドックスな技法を使いますが、創作の姿勢が興味深い。発想とその処理がユニークですし、地元の他のジャンルのアーチストたちとも積極的にコラボレーションを行っています。
 今年の「時の変容」は一人の道化師を軸に時代の流れを描くのですが、音楽は古いゴスペルから精々ナット・コールまでのトラッドやスイング、そのノリのいいフォービートとは別 にたんたんと時代は流れます。ミスマッチが奇妙な魅力になっているのです。もう一つは彼女が大震災を思い、勇気づけるための作品活動をもう一つ、「神戸・蕪村」。蕪村の句に音楽をつけて、良き時代のそして将来への神戸へのオマージュを表現しています。ここでも俳句の静けさのなかにフラメンコダンサー(東仲一矩)が登場したりするのです。
 矢上恵子は、もうある分野では超有名人です。バレエコンクールの創作作品では他の追従を許しませんし、今年の前半に佐々木大たち男性4人に振付けた、ラヴェルのボレロによる「ダイア」は、その激しさで見る人に衝撃を与えたものです。今回は名古屋の国際コンクールで振付特別 賞をとった田中ルリと佐々木大のためのデュオ作品を芯にした40分ほどの「ACCORDANCE」を上演。動き、構成、照明、音楽などが相俟って、激しい、しかし爽快なインパクトを感じさせました。これからは東京でも見る機会ができそうです。
 クラシック、モダンなど、ジャンルを問わず、札幌、仙台、福島、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、高松、北九州・福岡とそれぞれの地域でユニークで質の高い活動が行われている。嬉しいことです。




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