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幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
Vol.83 「今、舞踊界はどうなっているのかー独断と偏見の今年前半のポイントー」

2003年7月25日

 今年ももう半分が過ぎました。年齢のせいか、あるいは貧乏ひまなしで結構忙しくやっているせいか、時間の経つのが速いです。
 ここで、この半年の舞踊界を振り返ってみたいと思います。
 この間の社会は、侵略戦争はあった(まだ終わっていません)し、それに悪乗りして日本はどんどん軍国主義化しているし、景気は依然として良くないし、失業者は増えているし、世界的に異常気象は続いているし、青少年犯罪はますます若年化、凶悪化しています。悪いことばっかり並べるなといわれるかも知れません。でも良いことってありましたか。あったらぜひ教えてください。
 このような状況のなかで、舞踊界は確かに公演数といった数の面では大変に盛ん、賑やかです。よく頑張っているなと本当に思います。ただ、特徴的な出来事、動きがあったか、たとえば、十大(重大?)ニュースといわれるとほとんど思い当たらないのです。もちろん、だからといって舞踊界が低調であるというわけではありません。ただ、よくいえば落ち着いているといえますが、大きな変化が見えないことも事実です。
 そこで、まったく個人的な独断と偏見で、この半年を中心にいくつかのポイントを上げてみたいと思います。十は無理ですが、なんとか四つか五つ。順は不同です。
・コンクールますます盛ん
 この10年ほど毎年一つ以上のペースで増えていますが、今年も私の知る限り3つぐらい新しいコンクールが増えそうです。最近の特徴は新聞社やTV局はもう一段落で、アーチストの団体が主催するものが多いこと。今年の新設でも5月の「バレエコンクール in 横浜」は日本バレエ協会関東支部の主催、ほかにもいくつかの地区組織が計画しているようです。ホール、会館主催コンクールは音楽にはいろいろあるのですが、残念ながら舞踊はありません。あえていえば、目黒のパーシモンホール(目黒区芸術文化振興財団)が東京新聞の全国舞踊コンクールに共催したくらい。公立文化施設の舞踊に対する意識の低さはこのようなところにも現れています。
 コンクールの功罪はいろいろといわれています。このページでも前に書いたことがありますが、応募者、参加者が確実に増えていることは事実なのです。あとは運営、フォローの面での配慮が大事です。
・舞踊(芸術)に対する公的助成強化
 国家予算全体は絞られているなかで、芸術文化にたいするものは、僅かながら増えています。それは大変結構なこと(多少いやみをいいますと、それでも諸外国にくらべれば実質は大分少ないのですが)です。ただ、毎年内容が変わってくるところは(それで増えているのですが)、それを受けるほうとしては多少混乱が生じます。
 このなかで、とくに舞踊界として注目すべきは次の3点だと思います。
 イ.文化庁芸術祭が関東と関西に分かれたこと。これは国の方針での関西振興の一環で「関西から文化力」というスローガンで行われるようです。審査員も賞も関東、関西別々に同等でということになっています。たしかに首都圏一極集中の解消は、芸術だけでなくあらゆる面で必要だと思いますが、いささか唐突のきらいまぬがれません。もっと事前のPRが必要だったと思います。
 ロ.これは次の新進芸術家公演事業も同じです。昨年度から始まっていたのですが、舞踊界で知っている人は極めて少なかったのではないのでしょうか。
 新進芸術家に舞台の機会を与え、僅かでも出演料を払うという目的は大変結構なのですが、ちょっと公演の条件が複雑で舞踊界には厳しいかもしれません。しかしなんとかそれをクリアーして実績を上げて欲しいものです。今年度も現在募集中ですので、興味のあるかたは文化庁、全国公立文化施設協会、あるいは本サイトまでお問い合わせください。
 ハ.芸術拠点形成事業。これも昨年度から実施されております。積極的に自主事業を進めているホール、会館を選定し、その公演に助成するものです。この特徴は民間のホールも対象になっていることです。
 現在全国で約20程のホール、会館が対象になっていますが、残念ながら舞踊を自主事業にとりあげているところはあまり多くありません。そのなかで特筆すべきは大阪のNPO法人DANCE BOXが運営しているArt Theater dBが選ばれたことです。ただ、助成を受けられるのは会館主催公演だけですので、なかなか厳しい面もあるようですが。
 そのほか舞踊を取り上げてくれているところとしては、埼玉芸術劇場、世田谷パブリック、アートスフィア、京都アルティ、愛知芸術劇場、伊丹アイホールなどがあります。
・目についた新進(敬称を略します)。
 新人というのでなく、上に述べた新進芸術家という点に関連させてみました(新進の定義は、プロとしての活動歴10年以内。コンクール入賞歴のあることが望ましい)。
 バレエ畑では康村和恵(バレエスタジオミューズ、現ドレスデン国立歌劇場バレエ団プリンシパル)、福岡雄大(昨年プロデビュー、今年度こうべ全国洋舞コンクールで一位、グランプリ受賞)、三木雄馬(クラシックコンクール1位とともに上田遙作品やシアター・ドラマシティのダンスアクトシリーズで注目)。モダンでは内田香(各種コンクールで1位など受賞歴豊か、今年自作でリサイタル)、砂連尾理/寺田みさこ(昨年TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 「次代を担う振付家賞」など受賞、今年東京デビュー)。振付は新国立などで多くの実績をもち、今年リサイタルを開いた金森穣。その他フラメンコではあまり公演は多くありませんでしたが、そのなかで小島章司のフラメンコ舞踊団で群舞の芯を踊った閔晴光に期待したいところです。
・新国立劇場バレエ研修所第1期生卒業、第2期生入所
 第1期生7名は女性のみ、脱落者なく卒業できただけでもよかったと思います。全員が新国立劇場バレエ団の契約、あるいは登録ダンサーとなりました。
 第2期生は女性6、男性2名。先日公開レッスンがありましたが、第1期生にくらべてやや小粒、あえて出来上がっていないものを選んだとのこと。それは結構なことだと思いますが、そうなればなお2年でなく3年は欲しいところです。
 というより、これももう何回も書き、しゃべっていますが、本格的な舞踊学校がないとね。
 でも既存の歌劇団に芸術監督ともまるなげのオペラよりははるかにいいのかも知れませんね。
 では、今回はこんなところです(筑紫哲也さんのまね)。

 

 




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