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  2004.6/25
「日本人舞踊専攻生と韓国舞踊専攻生の身体観比較」

 日本女子体育大学舞踊学生に行ったアンケートのうち、身体的特徴に関する部分を一部、紹介する。美人が多い日本女子体育大学舞踊専攻生が、自身の顔や体型について、厳しい印象を持っていることが分った。体型を示すBMIでは、細くて長い肢体の韓国学生に敵わない。分野比較では、新体操が厳しい身体観を持つていることが示された。
 
(1)  身体的特徴
・体型
 日本女子体育大学舞踊学生は、平均が、身長 159.8cm、体重 50.1kg、BMI指数 19.6であった。理想体型の平均は、体重163.6cm、体重 46.6 BMI 指数 17.4であった。韓国、芸術総合大学、芸術大学の舞踊専攻生は、平均が 身長 165.7cm 体重 50.6kg、BMI 18.4で、長身で細身となる。BMIとは、体重を身長の自乗(立方体)で割った指数である。
 日本舞踊学生は、同年齢の一般女子(158.2cm、52.5kg、BMI指数21.0)に比べ、身長が高く、体重が少ない。身体的にほっそりし、手足が長い。
 韓国舞踊学生も、同年齢の一般女子(161.0cm、50.6kg、BMI指数19.5)に比べ、有意に身長が高く、体重が少ない。日本一般女子、日本舞踊学生、韓国一般女子、韓国舞踊学生の順でBMIが、高くなる。残念なことに、日本人の舞踊学生は、韓国より太めで、ルックスでは、韓国が上にあたり、BMIで1.2の開きがある。問題は、BMI値にある。理想体型が、BMI指数17.4は、骨皮の極めて、痩身で、健康な若い女性としては、疑問がある。
日本一般女子
日本舞踊学生
韓国一般女子
韓国舞踊学生
158.2 BMI 21   <159.8 BMI 19.6   <161.0 BMI  19.5 <165.7  BMI 18.4
理想体型
<163.6 BMI 17.4
 これらの自由記述を見ると、舞台におけるルックスに関心があることが分かる。舞踊学生にとって、性意識を棚上げし、自身の身体をどのように舞台に曝すかを、中核としていることが分かる。これはまた、次の身体的特徴の項でとりあげる。
 
・ 稽古に時間が掛かる推定
 ついでに説明したいのは、舞踊学生とは、日韓ともに、大学の舞踊学専攻生をと取り上げている。この舞踊学生は、平均年齢19.7で、バレエレッスン経験月数を見ると、合計で117.3ヶ月、これは、7年と8ヶ月にあたり、休みの月を勘案すると、実質、10年のレッスンキャリアであることが分かる。
 韓国の場合も同様で、男性を除くと女子は全員、人生の半分以上、10年以上のキャリアを持っている。その膨大な身体訓練の時間は、精神構造に反映し、見られる身体、演じる身体という認識が無意識化すると考えられる。
 
Table 1 舞踊学生の身体属性・日本
項目 調査対象者 年齢 身長 体重 BMI 稽古月
単位 cm kg   ヶ月
平均   19.7 159.8 50.1 19.6 170.3
分散   1.7 28.1 21.2 2.3 2662.6
人数 346          
       
      19歳で14年間稽古
 
一般女子
20歳
158.2 52.5 21.0
 
 
Table 2 理想とする体型
項目 調査対象者 身長 体重 BMI
単位 cm kg  
平均   163.6 46.6 17.4
分散   16.0 13.0 1.2
人数 120      
計算上の便利さのため、標準偏差でなく分散を出した。
 
・ 演じる身体
 身体構成から見ると、異性好みの体型であるよりは、舞台のルックスと可動性の両面から判断されているようだ。例えば、見られる身体としてモデルのように170cmを越えた身長がある。しかし、この調査で、170cmを越えることが、理想と見られていないのは、踊りの動きやすい身体、機敏な、反応、そして、日本の舞台での男性舞踊手や、先輩達との釣り合いも考えていることが推測される。
 
 
Table 2 舞踊学生の身体属性・韓国
項目 調査対象者 年齢 身長 体重 BMI 稽古月
単位 cm kg   ヶ月
平均   19.9 165.7 50.6 18.4 153.7
分散   2.1 31.4 25.0 2.9 2470.0
人数 73          
       
     
 
一般女子
20歳

161.0

50.8 19.6
 
 
・ 身体的特徴の因子分析
 質問紙の項目は17項目で、5段階表示チエックを行った。項目間の内容を解釈するため、主因子法・バリマックス法による直行回転を行い、日韓比較をした。因子の決定は、固有値1以上を基準とし因子負荷量0.4以上をまず取り上げた。これらから6つの因子が導かれた。
 第一因子は、「胴体が細い」「首が長い」「顔が美しい」「頭や顔が小さい」「痩せている」の5項目が該当した。これを、<容姿>と命名した。第2因子は、「身長が高い」「上肢・下肢が長い」「全身のバランスが良い」の3項目、これを<長さ>と命名した。第3因子は、「脚が真直ぐである」「0脚である」の2項目、<脚線>と命名した。第4因子は、「骨格が太い」「筋肉質である」の2項目、<逞しさ>と命名した。第5因子は、「X脚である」の1項目、<X脚>と命名した。第6因子は、「胴体が短い」の1項目、<短胴>と命名した。
 
Table 3 身体的特徴 調査項目
脚が真直ぐであると思う/ 骨格が太いと思う/顔が美しいと思う/ 胴体が短いと思う/顔が個性的であると思う/O肢であると思う/ 胴体が細いと思う/S脚であると思う/ 筋肉質であると思う/ 背骨が真直ぐであると思う/上肢・下肢が長いと思う/頭や顔が小さいと思う/ X脚であると思う/全身のバランスが良いと思う/痩せていると思う/ 身長が高いと思う/首が長いと思う/  
 
Table 4 身体的特徴 因子分析
 
日  本 固有値 負荷量
容 姿 3.37  
胴体が細い   0.54
首が長い   0.65
顔が美しい   0.50
頭や顔が小さい   0.64
痩せている   0.60
長 さ 1.70  
身長が高い   0.50
上肢・下肢が長い   0.63
全身のバランスが良い   0.59
脚 線 1.70  
脚が真直ぐ   0.50
O脚である   0.63
逞しさ 1.33  
骨格が太い   0.59
筋肉質である   0.45
X 脚 1.12  
X脚である   0.64
短 胴 1.03  
胴体が短い   0.72
韓  国 負荷量
痩 身  
痩せている 0.81
胴体が細い 0.79
首が長い 0.64
背骨が真直ぐ 0.46
長 さ  
X脚であると思う 0.84
S脚であると思う 0.77
直線美  
脚が真直ぐである 0.82
胴体が短い 0.69
背骨が真直ぐ 0.44
全身のバランスが良い 0.41
美顔小頭  
顔が美しい 0.79
頭や顔が小さい 0.61
キャラクター向き  
顔が個性的 0.79
筋肉質である 0.61
長 さ  
身長が高い 0.85
上肢・下肢が長い 0.74
全身のバランスが良い 0.54
 
 韓国舞踊学生も同様な6因子で、類似していた。しかし、韓国では、47名の男性が答えているので、差異もある。第一因子は、「痩せている」「胴体が細い」「首が長い」「背骨が真直ぐ」の4項目が該当した。これを、<痩身>と命名した。第2因子は、「X脚である」「S脚である」の2項目、これを<脚線>と命名した。第3因子は、「脚が真直ぐである」「胴体が短い」「背骨が真直ぐ」「全身のバランスが良い」の4項目、<直線美>と命名した。第4因子は、「顔が美しい」「頭や顔が小さい」の2項目、<美顔小頭>と命名した。第5因子は、「顔が個性的」「筋肉質である」の2項目、<キャラクター向き>と命名した。第6因子は、「身長が高い」「上肢・下肢が長い」の2項目、<長さ>と命名した。
 韓国に関連の無い因子は、「0脚である」「骨格が太い」で、これらは、他と相関が少ない。何らかの傾向と結びつかない。日本に関連の無い因子は、「背骨が真直ぐ」「顔が個性的」「S脚である」で、これらは、他の質問と相関が少ない。
 全体を見ると、舞台の姿勢や、舞踊の動きの関連が捉えられる。
 
 
Table 5 厳しい体型観~4分野

 

脚直 短胴 細胴 背直 X脚 高身 骨細 個性
S脚
バレエ 2.26 2.18 2.07 2.62 1.86 2.40 2.39 2.90 1.89
モダンダンス 2.13 2.33 2.16 2.31 1.78 2.20 2.70 2.98 1.77
ヒップホップ 2.18 2.18 2.09 2.59 1.81 2.22 2.73 2.99 1.74
新体操 2.30 2.26 2.02 2.24 1.66 2.35 2.84 2.80 1.63
平均 2.23 2.23 2.09 2.47 1.80 2.30 2.62 2.93 1.78
分散 1.53 1.33 1.40 1.59 1.64 2.01 1.72 1.29 1.25
検定統計量 11.64 12.39 14.47 7.77 17.44 9.12 5.44 1.19 20.28
  四肢
均整 首長 美顔 非O
筋少 小顔 痩せ 平均
バレエ 2.10 2.00 2.47 2.02 3.32 2.48 2.24 1.78 2.29
モダンダンス 2.07 1.96 2.27 1.87 3.20 2.74 2.11 1.79 2.26
ヒップホップ 2.18 1.92 2.16 1.95 3.18 2.86 2.18 1.68 2.27
新体操 1.73 1.92 1.84 1.68 3.34 3.34 2.14 1.60 2.27
平均 2.05 1.96 2.25 1.91 3.27 2.77 2.17 1.73 2.27
分散 1.14 1.07 1.59 1.14 2.74 1.77 1.50 1.12

1.52

検定統計量 16.54 18.76 11.07 18.91 3.02 3.29 12.58 22.31 12.13
 
・ 平均値
 個別の集計を見ると、肢体の恵まれて見える舞踊学生は、自身の身体を、否定的に捉えていた。舞踊家として良い条件を5、否定的条件を1とし再構成した。該当したのは、骨太、筋肉質で骨細、筋肉少と捉えなおした。全体の平均2.3とかなり、マイナスイメージである。また、分布から見た検定統計量が、1.64に満たないものは、個性顔の項目のみであった。個性顔は、良い悪いの判断がつかない意味もある。痩せていると見ていない(平均1.7)。5段階表示の2を下回っているとは、言い換えれば、かなりの劣等感を示している。
 分布で見ると、X脚やS脚でないは50%を越えて、学生は、良い脚が多いが、自身を瘠身でない(太っている)と考える舞踊学生が61%、美顔でないが51%に達する。反対に、自身を、痩せていると記入したのはわずか2.3%、美人と記入したものは1.7%に過ぎなかった。
・ 分野の差異
 バレエ、モダンダンス、ヒップホップ、新体操の4分野で見ると、どの分野も否定的な体型観を持ち、なかでも、新体操グループは、2.1と最も自己否定的な体型観であった。
 しかし、これは、美人学生を見かけることの多い、日本女子体育大学・舞踊学生の実情に合わないかのように見える。ダンサーにとって、身体は、舞台の身体であり、日常の身体を意味しない。彼女達にとって、美人とは、売り物になる美貌であり、痩せているとは、舞台で楚々と見える体型と思われる。一方、もし、劣等感が、一定を越すと、多分、別な職種に切り替わるはずである。回答は、額面とおりとは、思えない。