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ニュース・コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

Délice de Tokyo

河瀬直美監督の「あん」がロングランしている。フランス語のタイトルは、「Délice de Tokyo」。「Tokyo」という言葉をつけないと観客動員できないのかなぁなどと思いながら、公開から3週間経って見に行った。自然の撮り方が本当に綺麗で、言葉がなくても時間の経過が分かるのは、さすが河瀬監督。子供の頃にハンセン病をおぞましく描いた漫画のせいで怖い病気だと思い込んでいたから、この映画を見てひどく心が痛んだ。中世のヨーロッパでもこの病気にかかった人はひどい迫害を受けたらしいけれど、今フランスではこの病気は皆無だと思っている人が多いみたいなので、現在でも差別感が残る日本の状況をわかってもらえたのかなあ。それに「どら焼き」。見たことも食べたこともないフランス人にはこの映画の良さがどこまで理解できたのかなあと、ちょっと心配になった。
それ以来、ツレは事あるたびに訳もなく「どら焼き!」と叫んでいる。「言うな!食べたくなっちゃうじゃん」う~食べたい!!!

カロリン・カールソン

73歳で現役のカロリン・カールソン。とても気さくで、1時間のソロを踊った後にサイン会までしてくれている。尊敬です。

またしても、ジェローム・ベル

またしても物議を交わす作品を提供してくれたジェローム・ベル。素人ばかりを舞台に乗せた「ガラ」に引き続き、今度はオペラ座で新作「Tombe/墓」。
バンジャマン・ミルピエ芸術監督の辞任がすっぱ抜かれた翌日に、オペラ座が記者会見を開いて、その翌日がミルピエとベルの新作初日ときたから話題騒然。
ミルピエの新作「 La nuit s’achève 」は、バランシン風で3組の男女が流れるように踊る作品。後半白い衣装になったエルベ・モローとアマンディーン・アルビッソンが官能的なデュエトが素敵だった。それにしてもアルビッソンは味のあるダンサーになった。エトワールに任命された頃は不安定だったけれど、磨かれて宝石となった感じ。ブリジット・ルフェーブルは先見の明があったということなのね。
ところで肝心のジェローム・ベルの新作「Tombe」は、バレエ団の3人のダンサーが、オペラ座の舞台を踏んだことのない人と踊るというのがテーマ。幕が開けばジゼルの2幕の美術。無人の舞台に声だけが響く。「オペラ座に来るのは初めて?じゃあ案内しよう」と、舞台裏を説明して、やっと現れたのがコリフェのグレゴリー・ゲラーと、ジーンズにショルダーバックの女性。よく行くスーパーのレジ係だそうで、iPhoneでマリの音楽に乗って踊る様子は「ガラ」みたい。ベルの素人を舞台に立たせるシリーズは続いている。上手から白い百合の花束を抱えたアルブレヒトが出てきた。セバスチャン・ベルトーだ。ああ、やっと踊りが見られるのかなと思ったら、下手から車椅子のジゼルが風の如く舞台を通り抜けて行く。手の動きが綺麗だからダンサーなのかなと思っていたら、リフトされて逆さまになった瞬間にスカートがめくれて、あらら、片足がない・・・。ショックを受けていたら、バンジャマン・ペッシュがマイクを持って出てきた。「84歳のシルヴィアンヌさんは、20歳の時にオペラ座にバレエを見に来て以来、60年オペラ座に通い続けた本当のファンです。彼女は毎回オーケストラ席の中央に座って見ていて、終演後には楽屋口に来て2~3言葉を交わす、それがいつものことでした。その人と踊る予定でリハーサルをしていたのですが、先日入院したと電話連絡があって、あいにく舞台に立つことは不可能になりました。」とこれまたショッキングな発言。そこで大画面にリハーサル風景が映し出された。一番好きな演目がジゼルだったそうで、ベルはジゼルの物語を通して3人の普通の女性の人生とバレエという特殊な世界を結びつけた。♬人生~いろい~ろ~♫ で、考えさせられました。
http://culturebox.francetvinfo.fr/scenes/danse/pour-millepied-a-garnier-la-nuit-s-acheve-avec-bel-et-robbins-235013

バンジャマン・ミルピエの辞任劇も色々取りざたされていて、創作活動がしたいというのが表向きの理由だけれど、ミルピエの性急なオペラ座改革への内部からの反発も多かったらしい。300年の歴史を誇るオペラ座を変えるのは容易いことではなかったのだ。師と仰ぐバランシンの作品や、周知の仲の若手振付家の作品が何本もレパートリーに入って、古典作品は年間2本しかないと陰口を叩かれていたっけ。ボリス・シャルマッツの作品がどうして?と思ったら、リヨンのコンセルバトワール時代の先輩と後輩の関係。もちろんそれだけが理由でシャルマッツの作品がオペラ座のレパートリーに入ったわけではないと思うけれど。着任当初は誰も口をきいてくれなくて、孤立していたという噂も。彼も苦労していたのね・・・
16/17年の来シーズンのプログラムはミルピエが決めたけれど、シーズンが始まったら当の本人はいなくて、オーレリー・デュポンが新芸術監督として引き継ぐわけで、「パリオペラ座バレエ団は古典作品を踊れるレベルにはなくて、コンテンポラリーダンスに長けている」と言うミルピエと、「バレエ団はコンテンポラリーダンスが踊れるクラシックバレエ団ではない。古典作品を十分に踊れるバレエ団だ」ときっぱり言ったデュポンの見解の違いの歪みが出なければ良いのだけれど。ともあれ、再来年のシーズンには古典作品が増えるらしくて、古典作品ファンには嬉しいニュース。オペラ座らしさが戻るといいなぁ。。
ところで、ミルピエの提案によって始まった3e scène(トリワジエーム・セーヌ)。オペラ座のホームページからアクセスできる映像が素晴らしい。
https://www.operadeparis.fr/3e-scene

おすすめは、
Jacob Suttonによる映像で、オニール八菜とジェルマン・ルーヴェが踊る「アサンシオン」
https://www.operadeparis.fr/3e-scene/ascension
ジゼルの背景画がガルニエ宮に運ばれる様子を描いたDavid Luraschiによる「ジゼル/ザ・ウオーキング・ランドスケープ」。19世紀から変わらない風景だそう。機械作業が当たり前の現代で、未だにお手製が存在するとは!ちょっと驚きでした。
https://www.operadeparis.fr/3e-scene/giselle-the-walking-landscape
その他にも素晴らしい映像があるのでチェックして見て。残念ながらミルピエが辞めた後はオペラ中心になるらしい。

日本文化ってすごいわ~

折り紙文化を伝える合谷哲哉さん。鶴しか折れない私には、驚きの展示会。折り方を展示してくれているので、本当に一枚の紙からできちゃうんだという実感があっていいね。

フランスあれこれ

まだ2月なのに庭のあやめの蕾が膨らみ、春の到来を告げる水仙売りを見かけるようになった。

椅子に座ってふんぞり返っているおじさんのようなおばさん。花は綺麗だったけれど、ちょっと買う気がしないなあ。怖そうだったから、後ろからそっと写真を撮るだけ。やっぱり売り子は可愛い子がいいなあ。

地方の町でも見かける巡回の兵士。大きな銃を持って歩いているのに出くわすと、どきりとしてしまう。あ~、非常事態宣言中なのだ。

パリのテロ事件以来、フランスの国旗が売れているらしい。

3Kトイレの改革

使い方が悪いのか、フランスの公衆トイレは汚いイメージだったのだけれど、最近高速道路のサービスエリアのトイレが綺麗になって感激。

石鹸があって、手洗い用の水もちゃんと出て、乾燥機まである。しかも便器は真っ白。使用後に天井からシャワーの如く水が出て、トイレ内を洗浄するシステムだから清潔。もちろん無料!
では、その他のフランスのトイレ拝見。

これが普通だと思ったら大間違い。

これが今はやりのタイプ。何が違うって?便座がないんです・・・。壊されるし汚されるし、それなら取ってしまえ!ということみたいです。どうやって用を足すんだろう、ここに直接座るのかなあ、といつも考えてしまう。あなたならどうする?

いつもうんざりするこの状態。トイレットペーパーは散乱しているし、便座がないのに相変わらず汚いし。

異様に縦に長い

これもねえ・・・

見た目は良いが、しっくりこない。

これはありがたい。子供用の小さめの便座付き。おっと、これは日本だった。フランスにはあるわけないか。

日本なら綺麗なはず、というのは大間違い。外人観光客の多いトイレはこの通り。思わずフランスにいるのかと錯覚してしまった。

ううっ、これこれ、 通称トルコ式トイレ。和式に似ているけど違うのだ。お尻の真下に穴が来るように、つまり、入り口に向かって座るのだ。鍵をかけ忘れて、誰かが入ってきたらご対面~です。日本のように進行方向に座って用をたしてしまうと、水洗の水が届かなくて、ブツが流れ去らないので要注意。それから、水を流す時はなるべく離れた場所から紐を引っ張るように。トイレによっては水が勢いよく出てくるので、足が濡れることがあります。
便座が汚いトイレ、便座がないトイレ、あるいはトルコ式。あなたならどれを選ぶ?

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。