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カバーストーリー

ダンスの世界で活躍するアーティスト達のフォト&インタビュー「Garden」をお届けします。

HOMEカバーストーリー > カバーストーリー 小林照子 03
今の先生のお話は、あらゆる仕事にあてはまることだと思います。その舞台メイクですが、まず大切なことは何ですか。
小林「顔は骨格と筋肉でできていますが、骨格と筋肉の付き方と人種によって多少違います。目蓋が上がっていたりとか。だからまずは自分の顔を彫刻するような技術があったほうがいい。たとえば西洋人に彫りを近づけるにはどこにシャドーを入れて、どこを出っ張らせるか、その人の顔に彫像のように入れていく。たとえば悪役なら上昇線を入れて、淋しい顔なら下降線を入れるか、年寄りだったら少し色を変えるというようにいろいろな方法があるんです。」

先生にメイクを習う舞台の方も多いそうですが。
小林「自分からすすんで習いに来た人が作った顔に納得して舞台に上がり、いろんな役をこなしているのはいいことですね。でも、ダンスの先生がメイクまで教えるのはおかしいと私は思います。私がメイクを教えてダンスもこうやりなさいと教えることはできないように、専門が違いますから。あるお母さんはお子さんが小さい頃、私のところに連れてきました。今、娘さんはバレリーナになって活躍していますが、やはり基本がきちんとしているから自分でメイクしても、舞台に上がると見栄えがします。そのお母さんは、お子さんが少女時代むっくりすることがあっても、
 

自分の顔を彫刻する方法さえ覚えておけばあとはできると考えたんですね。彫刻のメイクは究極のナチュラルメイクですから。」

いわゆるベーシックなメイク。
小林「そうです。たとえばちょっと痩せてみせようとする時には頬に影を入れますが、くぼむところに肌色の濃淡を使う。素顔に見えますがそれは彫刻を入れた顔。あとは先生がブルー入れてとか、目に白を入れてって言った時にハイってやればいいんです。」

コンクールなどで小さな子供さんが宝塚のような濃いメイクや真っ黒のアイメイクで出てくることがあります。舞台の外ではメイク上手な女性が増えてきた一方で、舞台メイクは遅れているように感じるのですが。
小林「日本の舞台の人々は低予算に慣れているんですね。そこにメイクの専門家を雇うことはお金がかかりますから。外国では、メーキャップアーティストがいて、出演者は2時間前に入ってやってもらうところもあります。今でも、私たちは舞台の人たちが経済的にたいへんなことを知っているので、自分たちのギャラが安くても他で働くからいいわと思っている。でも実は、それをやっているのはあまりよくないと思っているんです。この舞台ではメイクはいくらというような予算配分があってほしい。でも結局、予算がないから俳優やダンサーは自分でメイクすることが多くなるんですね。それはメイクが大事だと思われていないということ。でも、見る側の目は肥えているわけです。」


 

おっしゃるとおりです。海外の劇場には専門のトレーナーやメイクアップ・アーティストがいるし、舞台は照明と合わせてメイクのプランもたてていきます。日本のバレエ団のなかにはメイクの講習会を開いているところもありますが、残念ながら全体にはまだまだそういう考え方が浸透していません。
小林「そうですね。だからまずは顔の彫刻。日本人の私たちが西洋人になるにはそこから発展させていろんなキャラクター作りをしていく。子供にする、若く見せる、大人に見せる、個性を出して意地悪な顔とかいろんなキャラクターも作れます。それを勉強したうえで、どんな化粧品を使えばいいか、発色のいいのはどれかを知っていけば自分自身で十分顔を作れると思うんです。」