ダンスの動画・コラム・コンクール情報専門サイト

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオ。
HOME > ニュース & コラム > 山田マミのやっぱり、パリが好き 2020年11月

News & Column
ニュース & コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2020年11月

また出た!外出禁止令

10月のパリ・オペラ座では、エトワールとプルミエダンサーによる二つの公演があって、それ以外のダンサーは出番がないの?と思っていたら、11月に若手組の公演「コンテンポラリーの振付家/Chorégraphes contemporains」がちゃんと用意されていた。振付家はシディ・ラルビ・シェルカウイ、ダミアン・ジャレ、テス・ヴォルカーとメディ・ケルクシュ。

特にケルクシュは、最初の外出禁止令中にネットに出したビデオダンスでブレイクしたヒップホッパーで、オペラ座のダンサーがヒップホップを踊ると話題になって、前評判バッチリ。めっちゃ楽しみにしていたのに、また「外出禁止令」発令で劇場閉鎖。ぐぐぐ・・・

11月4日初演に向けて準備万端整った10月29日に「明日から外出禁止です」との大統領発言であちゃー。上演の見込みが完全に消えたと思いきや、パリ・オペラ座はめげなかった。11月13日にFacebookを通して実況中継をすると発表。おお、ありがたや、ではあったけれど、4.49ユーロの有料配信。これまで無料配信が多かっただけに、この550円が高く感じる。後日テレビでも放映される(もちろん無料)けれど、うっかり見逃せばアウトだし、払えば48時間見放題なので、エイっとネット払い。まあそんなに悩む金額ではないのだけれどね。ちなみに日本のデビットカードは受け付けてもらえませんでした。
電波状況のせいか、フリーズしたり画面が真っ黒になったりするのでムッとしたけれど、チャットを見れば私だけではないので諦め、翌日リプレイしたらバッチリ。やっぱり何度も見れるというのはいいね!でした。

夜8時のスタートを3分前から待つも、いつも通り5分押し。やっぱりここはフランスなのだった。

なぜこの日の配信かというと、2015年11月13日のパリ同時多発テロの犠牲者への冥福を捧げるからだったのだ。時は流れて移り変わるけれど、忘れてはいけないことがある。

ガルニエ宮の正面入口から入る映像に、いかにもガルニエ宮に来ましたのバーチャル体験。
そして画面はリハーサル室へ。客入りの間、ダンサーはこんな風にウオーミングアップをしていたのね。

蛍光灯でできた人形の出迎えを受けて客席に入ると、すでに先客が。
みんな形が違うという手の込みようで、さすがオペラ座

そしてシディ・ラルビ・シェルカウイ自身がクーポールで踊る映像が流れて開演。

新作「Exposure」の音楽はWoodkid、衣装はシャネルと豪華。出演は、女性はマリオン・バルボーがメインで、エレオノール・ゲリノー、エロイズ・ジョクヴィ、ソフィア・ロソリーニ、男性がマルク・モロー、シモン・ル・ボーニュ、マチュー・コンタ、イヴォン・ドメル、アレクサンドル・ボッカラ。

録音済みの音楽に、ピアノ(Ruta Lenciauskaite) とチェロ( Cyrille Lacrouts)の生演奏付き。黒い衣装のダンサーの中にただ一人マルク・モローは白いスーツなので、彼がメインなのだと一目瞭然なのに、目はシモン・ル・ボーニュにいってしまう。スタンスが人一倍長く、身体の芯から動いているから広がりがあって、しかも滑らかな踊りに釘付け。パリ・オペラ座のコンテンポラリーダンスを引っ張っていく存在になるだろうと思う。惚れ惚れしました。

マリオン・バルボーとの息の合ったデュエットに感心していたら、私生活でもカップルだそうで納得。昔は私生活でのカップルは、舞台ではデュエットを組めないと聞いていたけれど、今では「あり」なのね。他人が入り込めない絆が見えますね。

作品の中でカメラマンが舞台上でダンサーを撮影して、それが舞台脇のスクリーンに映し出されるのだけれど、「カメラマンが邪魔!」というチャットが多くて笑ってしまった。カメラマンの名前はキャプションに出てこなくて、仕事をしているのに認めてもらえない可哀想な人でありました。

踊り終えたダンサーたちの素顔が見られるのもいい。オレリー・デュポン芸術監督も拍手で労ってます。

舞台転換まで見せちゃう

続くは23才の若いアメリカ人、テス・ヴォルカー振付の「クラウド・インサイド」。

こちらもリハーサル室からの映像。ふむ、オペラ座の中はこうなっていたのか。

音楽と振り付けが合っていて、好きだなあ、この作品。この二人も恋人同士。ばっちり息があっている。
二人のリハーサル風景を交えたインタビューも興味深い。
https://www.youtube.com/watch?v=PvStENZQQPI
リハーサルではなかったマスクが、本番では衣装の一部になっている。マスクをつけて踊るのはさぞかし苦しいだろうなぁ。コロナは衣装の概念まで変えたということか…

ヴォルカーって誰?という質問多数。現在NDTでダンサーとして踊っていて、そこでの踊りはまだ見たことはないけれど、グラン・ホワイエで踊る姿を見ると個性が強そう。
将来は振付家としても活躍するのだろうなあ。オペラ座の新人発掘は、なかなか鋭い。

そしてインスタグラムでブレイクしたメディ・ケルクシュの「Et si」。パリ・オペラ座のダンサーがヒップホップを踊ると話題になって、インタビューとリハーサルを交えた映像がわさわさ出てきた。
https://www.youtube.com/watch?v=elsZqObOZjA

https://www.youtube.com/watch?v=obIt_nbfp7Q
過去にネットアップした動画がめちゃ楽しい作品だったので、この路線を期待していたら、結構真面目な作品だった。

テレビのインタビューでは軽いノリで話しているから、思いつきでダンスを始めた人かと思ったら、なんと6歳からダンスをしている超真面目なアーティスト。ダンスも上手い。
https://www.youtube.com/watch?v=xO2wDcCqk-I
「クリスマス・イン・パリ」ステキだなあ、こういうの。元気が出る。この他たくさんのビデオをアップしているので、
Mehdi Kerkouche と叩くとヒットするはず。

次回はぜひオペラ座のダンサーが頭でくるくる回る作品を作ってもらいたい。

公演が終われば皆で労う。ケルクシュは子供みたいにはしゃいでいてかわいい。コロナ禍で母親をオペラ座に呼べなかったのが残念だったと言っていた。

本来ならダミアン・ジャレの新作も上演されるはずだったのに、今回は無し。いつか見られるかな~

2回目の外出禁止令真っ只中

1回目は物珍しさもあって、まあなんとかやり過ごしたけれど、2回目となるとさすがに参る~
前回と同じく、食料品を扱う店と大型スーパーは営業OK。これに怒ったのが食品を売らない小売店。大型スーパーには洋服、小物、日用雑貨なども売っているから、小売店がダメでなぜ大型店は売っていいのか!と怒り爆発。

そこで、大型スーパーでは一部の商品が販売禁止となった。店内に商品を置くなと言われても、保管場所もなければ時間もないから、通路を塞いだり、テープを貼って「売れません」

なぜか工具店は営業が許されているから、家の修理でもするか~という人が多いようで、結構混んでました。

天気が良いから散歩でも、という人もたくさんいる。

でも、街の中心地にはほとんど人影がない。店が閉まっていればそこに行く意味ないしね。

そしてあちこちで見る「コロナ検査できますよ」の看板。ありがたいことに健康保険が全額負担してくれるので、無料で受けられる。とはいえ、処方箋などの検査を受ける正当な書類がないとダメらしい。

それでもやっぱりクリスマス

街の広場の、恒例の巨大クリスマスツリーの設置が始まった。高さ27メートル!落ち込む心に火が灯る。少しは明るいニュースが欲しいもの。
ところがボルドーの市長は、「経費節約」で今年はツリーを設置しないのだと。お金も大事だけれど、心の安らぎはもっと大事なのでは?

ツリーもでかいが、盆栽もでかい。ちなみに、巨大ツリーとこの盆栽にはなんの関係もありません。

今月の1枚

ラグビーボールの代わりに鶏を抱えるラグビーマン。ちなみに彼らはフランスで結構強いチームの選手で、松島幸太郎選手が所属するクレルモンチームであります。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
TOPへ