東京リズムボーイズ――いかにも都会的でしゃれた名のコンビを組んでいる松本晋一氏と穴田英明氏。異なった道を歩んできた二人はタップダンスをとおして出会った。米国留学、ディズニーランド、ナショナルタップディ…。イキイキとした話に表れるのは、タップに対する二人の静かな熱意と誠実さ、そして日本のタップダンスのパワーとレベルの高さだ。
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Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi Photo
: 長谷川香子 Kyoko Hasegawa |
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今日は私のような素人で申し訳ありません。タップダンスが大好きなので楽しみにやってまいりました。さっそくですが、お二人のタップダンスとの出会いを教えてくださいますか。
松本「僕の場合は中学の2年ぐらいでしたか、「ザッツ・エンターテイメント」っていう映画を見て、そこでいわゆるMGMミュージカルにハマッてタップにハマッたところがある。バレエのタイツ履いて非日常的なことするのも、ジャズダンスも身体が固かったので適していない。タップは自分がこのままでいい、気恥ずかしくなく自然体で踊っていられるのがよかったんですよね。」 |
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タップの練習ってご自分の家でしますか?昔は裏庭に板を置いてやった、という話を聞いたことがあるんですが。
松本「ほんとに始めたばかりの頃は、家で古い板で練習したことあるけど、うるさいんだよね。(笑)」
穴田「周りに迷惑かかっちゃうから多分できないんですね。」 TRBタップダンススタジオ
http://www005.upp.so-net.ne.jp/view/trb-home.htm |
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ところで、日本のタップダンスをめぐる今の環境というのは、変わっていますか。
穴田「大きく変わってきています。たとえばタップ用語はアメリカでも統一されていないんですが、留学して学んできた人たちが増えたので、まだ十分ではないけれど15年前に比べたらはるかに整備されてきています。」
松本「そうだね。」 穴田「以前はPタイルのような足に悪くて膝も痛くなる床のスタジオもあったけど、今はタップ専用のスタジオも増えました。それと、一時期衰退期があって、現在50、60代でスタジオで活躍している人があまりいません。そんなこともあって、僕らの世代は仲がいいんです。昔は門下が違うと、他の門下の違うステップを学べませんでした。狭めるのはよくないと思って、自分がスタジオ開くときにはいろんな先生を呼ぶことにしました。 |
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うちは十数人の先生がいてどこにも気兼ねなく教わることができます。いいところを互いに誉め合いながらみんなで伸びていこう、それが僕らの世代のスタンスなんです。」
松本「戦後ぐらいまでの世代の方々は、渡米すること自体がたいへんだった。弟子を育てるというよりは、学びたかったら来なさいというかたちですね。 |
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そのあとの中野ブラザーズの両先生方や佐々木隆子先生の世代でちょっとアマチュアに広がったけど、まだ限られたルートしかなかったんじゃないかと思う。で、僕らの時代になってくるとぼちぼちアメリカに行って、僕より下になるといきなりニューヨークで教わってくる。’90年代にはもう師弟関係というのがなくてもよくなってきていた。さらにその世代から学んだ世代は、昔と全然違ってほんとに自由。実際、今、日本のタップのレベル高いんですよ。」
穴田「タップ仲間のみすみゆきこさんがおっしゃっていた事なのですが、昔、アメリカにあった環境っていうのが今、日本にあるんですね。僕もそう実感しました。自由に踊れて、みんなが集まれる場所があれば、ぐっと伸びるんです。」 |
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お二人は、ナショナル・タップ・デイにも関わっていらっしゃるとか。
穴田「もともと牛丸謙先生という方が始められたんですが亡くなられて、今は、僕らがやらせていただいています。タップの交流を目指した大きなイベントで、プロもアマチュアも集まって、年に一回タップを見せるんです。お客さんが、タップってこんなに楽しいのかと感じてくれればいいかな、と。」 |
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そのお客さまがリピーターになったり、習い始めたりするといいですね。
松本「今、タップの横のつながりってすごくいいんですよ。へんにスタジオの隔たりがない。こういうイベントをやろうというと、ふだんは別のスタジオでそれぞれやっている人たちが、うまくコミュニケーションをとってやっている。」
穴田「できることを少しでもやっていこうと、一般公募で子供たちを集めてダンスを教えてショウをしたり、海外に派遣する組織に協賛金を出したり。今、27団体あるんですけど何をやるにしても、僕は直接会いに行くんです。大切なのは人間同士の関係だから、賛同して一緒に入ってやってくださいね、と。紙切れ1枚で参加を決めるというのとは違うから。だから今年もそうですが、失礼なんですけど技術はあまりという方でも熱意があればいい、と。アドバイザーとして松本さんや何人かお願いしている人たちが、せっかく交流を目指しているのに、そこで切っちゃいけないから、と。お祭りだから当然プロも呼んでいいものを見せるということも考えていますが。」 |
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松本「ひとつのスタジオでの発表会では、お客さんは限られているけど、20団体以上でフェスティバルやると、ふだん見てもらえないお客さんが来る。そういう意味では、お客さんのなかにはタップをやっている人もいるんで注目されることにもなります。」
穴田「登竜門的な扱いにもなるんです。だから今活躍しているプロタップダンサーのほとんどの人達は、ナショナルタップディから巣立っているように思います。。」ナショナルタップディ ホームページ http://www.ntd1991.com/ |
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お二人の公演はないんですか。
穴田「10月に博品館劇場で、東京リズム劇場をやります。先生方がご自分の稽古をもっているので、週1回集まって集中的にリハーサルをしているんですよ。演出は松本さんで。」
松本「宝塚とワハハ本舗が一緒になったような舞台で、間にコメディスケッチが入ったり、タップでダンサーのことを皮肉ったりとか、そういうコントみたいなこともやるんです。一応エンターテイメント性を重視したショウを穴田と冨田かおるさんと3人でプロデュースしてやってきています。」東京リズム劇場 ホームページ http://www.tomitatap.com/trt/ |
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10月の舞台が楽しみです。最後にタップを踊る楽しさについてお話いただけますか。
松本「ジャズダンスとかバレエは悲しみとか喜びを表現しようとしますね。タップでそれをできなくはないけど、タップじゃなくてもいいんじゃないか。じゃ何がテーマにあるかなと思ったら、ジミー・スライドっていう人の踊りを見た時に、人間味がすごくあるんですね、生きているって楽しいでしょうっていうことが伝わってきて。基本的に、楽しいよねっていう気持ちで踊っていればタップは間違いないんだな、と。楽しさをステップの音といっしょに曲にのせて動いていると、もうそれしかないのかなと、最近思うんです。」
穴田「ミュージカルでジャズダンスを踊っている時にはメロディーに合わせていたんですが、その時、むしょうに音を出したかった。それで休憩中、一人でずっとタップの練習していたんだと思う。音を出せたらどんなにいいだろうというストレスをずっと持っていたんですね。だから今、タップシューズ履いて自然に踊っていられることが楽しいですね。」 |
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