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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2021年7月

モンペリエダンスゥ~

去年はコロナ禍で通常開催を延期して、9月から12月に延期。短期集中で公演を見ることができなかったので行くのを諦めた。でも、今年はOK。久々のモンペリエ!

公演も大切だけれど、夏はやっぱり海。
コロナのせいなのか、時期的に少し早いからなのか午前中のビーチはまだ人が少ない。日差しは強いけれど、水はまだ冷たい…

わーお、透明度が高い!こんなにきれいな海を見たことがない。砂の粒まで見える感じ。コロナ禍で海水浴をする人がいなかったからかな。

海で遊んでばかりいてはいけない。ダンスを見に行かなくちゃ。
これがモンペリエダンスの本拠地にある屋外劇場アゴラへの入り口

アゴラ劇場。オルレアンの国立振付センターのディレクター、モー・ル・プラデックの新作「カウンティング・スターズ・ウイズ・ユウ」のカーテンコール。
ダンサーが踊って歌って演奏して、最後はコンサートのようになってノリノリの客席。
踊るだけでなく、歌のレッスンにも励むダンサーのリハーサル風景を見て、体に潜む可能性を見つけて追求しなくてはならないのかと実感
右6人が出演したダンサーで、左の6人がスタッフ、中央がプラデック。
作品に関わった裏方さんも表に出て、「みんなで作り上げました」というのがいい。みんなの協力なしでは公演は成り立たないものね。

余計な一言:振付家のモー・ル・プラデック。Google検索するとモード・ル=プラデックと表示される。「モー」、「モード」?どっちかな。
フランス語では、単語の最後の子音は発音しないので、Maudは「モー」になると思うけれど、名前は固有名詞なのでフランス語の規則が適応しないこともある。
「au」は口を大きく開けないで「お」と発音。

圧倒的だったのがディミトリス・パパイオアヌーの「トランスヴェルス・オリエンテーション」。頭が小さくて異常に背の高い人たちの奇妙な行動の後は、大きな牛が出てきてギリシャ神話にタイムスリップ。そのギリシャ神話が誇張されてパロディになり、社会風刺になり、そして壮大な光景になる。ディミトリスの想像力の豊かさにただただ息を呑むばかり。

そのほかジャンヌ・ガロワのソロ「イネファーブル」は、彼女の全てが見られる秀作。日本の太鼓集団直伝のバチ捌きが見事。そして多様なダンスは、音楽学校での経験を活かした演出で、シーンが次々と展開する。可能性を広げる努力を惜しまない人なのだ。

ダンス界だけでなく、ファッション界でも人気のシャロン・エイアルは「チャプター3;ブルタル・ジャーニー・オブ・ザ・ハート」。
つま先立ちのステップ、胸とお尻を突き出したポーズ、セクシーなヴォーギングの独特な振り付けで、真っ赤なハート型が印刷された衣装のダンサーたちが、生きていることの素晴らしさを表現する姿が心に残った。

モンペリエに来ると夏のソルド(バーゲン)が始まるというのがいつものパターン。

フェスティバルのイベントの合間にお買い物~

カラフルなディスプレイ。パリとはスタイルも色使いも違うのは、太陽いっぱいの南国だから?う~む、これをパリできるとどうなるかなあ、悩みながら歩くのも楽しい

ちょっと裏道に入ると、こんな狭い道がクネクネと続く。

アイスクリームでちょっと一息。
この店はアイスクリームを花の形にしてくれる。フレーバーを好きなだけ選ぶと、注文した値段の中できれいに作ってくれるのが気に入っている。でも眺めている時間はない。溶ける前にいっただきま~す

モンペリエ、バイ・ナイト。
6月30日からコロナ規制が緩くなって、店内での飲食もできるようになった。
でもやっぱり南の夏はテラスが似合う。すぐ横を車が通ろうと気にしない。夏を満喫するのだ!

アビニヨ~ン

コロナに打ち勝つ!そんな意気込みで始まったアビニヨンの2つのフェスティバル、インとオフ

「張り紙しないでください」なので、窓の部分以外にポスター貼りまくり

街に入ればポスターの嵐、これだよね、夏のアビニヨンは。

コロナ禍なのか、閉店した店のウインドウは絶好のポスター掲示板。
今年は入国制限もあってフランスからの参加がほとんど、それと欧州の国から。残念ながら日本からの参加はなし。

それでもオフの参加団体は千を越えている

子供が刺青?

少し人通りは少ないけれど、公演の宣伝マンは健在です

牧師さん?いやいや衣装を着た役者でしょう。

パンツ1枚?多分宣伝マンだと思うけれど、単純に暑いからかも

警官と並んで歩くパンク女。見れば手錠で繋がれている。ジョークなのだと思うけれど、真相はわからん。いろんな人がいて楽しい

役者さんたちは、公演の合間に路上で宣伝活動。忙しい1日が3週間続く。
路上専門のパフォーマーもたくさんいる

この人は宣伝マンというより路上で小銭稼ぎでしょう

ちょっと寂しいおじさん。手押しオルゴールで音楽を流して小銭をもらう昔ながらの路上稼ぎだけれど、目に留めるどころか誰も聞いていない。他に派手なパフォーマーがたくさんいるからね。今日は少し稼ぎがあったのかな。

法王庁の横の細い道にあるスペースは路上パフォーマー定番の場所。音楽、ダンス、語りに演劇など、いろいろ見られます

道路に落ちたポスター専用の回収車。アビニヨンにしか存在しない清掃車だと思う。ご苦労様

法王庁前の広場の4時。日差しが強いし、コロナ禍で今年はストリートパフォーマーも少なそう

法王庁裏の公園で休んでいたら、宣伝を兼ねたリハーサルが始まった

巨大な壁画アート

人出が少ないとはいえ、レストランはほぼ満席

朝の気温13度。日中は25度。今年は冷夏で過ごしやすい。

セミも健在。頑張れ~
でも車のタイヤで孵化しないで欲しい。出かけられない~

自由、平等、博愛。フランスの三色旗

お気に入りの光景

名物大観覧車

環境問題に取り組むアビニヨン市。トラムを建設したけれど、運行されてないみたい。その代わりなのか、自転車移動の推進で、橋の袂には自転車が何台通過したかを示す掲示板。試しに行ったり来たりしてみたら、ちゃんと数えてくれた
7月16日夜8時55分22秒時点で、この1日で3185台の自転車が通過したわけだ。ふ~む

城内移動は自転車に限る。
面倒くさがり屋さんはこうして鉄柵に固定するけれど、

私は自転車置き場に。以前より増えたみたいだし、裏道に行けば空きがある
あっという間に盗まれるので、チェーンでしっかり固定してね

城壁内を走るバスがなくなって、週末のカルノ通りは歩行者天国で、市場が出ていた。野菜、サラミなどの食料品から小物や洋服まで、お土産に何か買おうかな~で、アフリカンスタンドでハイビスカスのお茶を値切って買いました。
土曜日に市庁舎前に行けば結婚したばかりのラブラブ新郎新婦に出会えるかも。市長さん直々に結婚の手続きをしてもらうのです。

タンチュリエ通りを歩いていたら牧師さんがいて、横には「無料ガイドしますよ」の看板。
無料なら、と思って参加したら、なかなか興味深い構造の教会だった。

入り口を入ると天窓のついた長い廊下。教会としては珍しい造り。というのは、本堂は通りから奥まったところにあったために、信者さんが雨の日にぬかるんだ小道を歩くのをかわいそうに思って、屋根付きの廊下を後から作ったとのこと。天窓を作れば照明要らず。エコロは中世から存在していたのだ

廊下にあったキリスト像。どこで誰によって作られたものなのか出どころ不明の像。

廊下の奥にある最初のホール。

ホールを抜けると緩やかに右に曲がって本堂へ。その手前にあるマリア像のある祈りの部屋
本堂までまっすぐに繋がっていない変わった構造

これが本堂

ローマ・カトリック教会とは繋がりのない、独立したキリスト教の宗派なのだそうです。
中世のアビニヨンはすごく小さい村だったとか、街の歴史も話してくれて少し知識が増えました。イケメンの牧師さんでした。 うふっ

フランスの建国記念日

建国記念日の7月14日の夜10時過ぎから始まった屋外コンサート。パリをはじめ多くの都市が、この日の夜に派手に花火を打ち上げるのだけれど、アヴィニヨン市は花火なし。花火は8月25日、第2次世界大戦時の法王庁解放日に打ち上げるのだそうです。でも強風で中止や延期になることもしばしば

インの公演

さてさて、肝心の公演は?

インで印象的だったアリス・ラロワの「ピノキオライブ2」。生きた子供が人形に作り替えられるという衝撃的なシーンに席を立つ人も。でも最後は感動的で大喝采。

絶賛を浴びたのがイタリアの演出家エマ・ダンテの2作品「ミゼリコルディア」と「万聖節の甘いお菓子」。人間味あふれる作品で、言葉がわからなくてもちゃんと伝わる演出が見事。
写真は役者そっくりの人形を使った「万聖節の甘いお菓子」のカーテンコール。ピンボケですみません

プールをカフェに。
狭い城壁内に立派な劇場が何百もあるわけがないわけで、学校やカフェ、ガレージが劇場に早変わりするのが恒例のアビニヨンのフェスティバル

ここがヴィヴ・ル・スジェの会場、サン・ジョセフ高校のマリア像のある中庭。
ジャンルの異なるアーティストのコラボレーションを目的とするシリーズで、ここでしか見られない作品もあるし、座席数も少ないのですぐに完売になってしまう。今年はコロナ禍でいつもより観客が少なかったからか、ウエイティングリストの人の多くが入場できた模様

注目の振付家ヤン・マルテンスの「Any attempt will end in crushed bodies and shattered bones」。ダンスの歴史と現代社会の問題を提起しながらの究極のミニマルダンス構成が宇宙観をも感じさせる秀作。才能のある人だと思っていたけれど、ここまでやるとは思わなかった。すごいっ!

オフの公演

新人発掘はラ・パランテーズ劇場で。パリの隣のサン・ドニ県のルイ・アラゴン劇場の提携アーティストを送り込んでいる。題して「ラ・ベル・セーヌ・サン=ドニ、サン=ドニの美しい舞台」。
朝10時開演というのがきついけれど、見る価値あり!完売になることが多いので、予約するか、早めに行ってウエイティングリストでトライするか。

屋外の小さなスペースで照明なし。ごまかしの効かない会場だけれど、エネルギーがダイレクトに伝わってくる。この日は3組3作品を見ました。

アビニヨンで海水浴をする二人。意表をつかれました。クレダとプチピエールの「海水浴をする人」

観客を巻き込んだ下手馬ダンスで爆笑だったシモーヌ・ムセの「アンドレア2のパッション」。イヴェルナル劇場にて

アビニヨンのフェスティバルは演劇が中心。でもダンスを上演する劇場はある。マニュファクチュールもその一つ。公演案内を見ると「上演時間2時間」というのがいくつもありうけれど、恐れることなかれ。無料送迎バスでの移動時間が含まれているから。
シャトーという会場へ行ったけれど、どう見てもお城の形をしていない建物での公演だった。

ディディエ・テロンは2作品。女性3人がお尻が膨らんだ衣装で踊る「テール」と、男性3人の「上海ボレロ」をルール劇場で。
「上海ボレロ」は公演中に一人のダンサーが怪我をして、急遽ピンチヒッターをパリから呼んでの上演。たった1日のリハーサルを感じさせない完璧なダンスでした

ノーマスク、ノーパス、コロナ規制反対のデモ行進。この日フランス各地でデモがあったようです。アビニヨンは暴動なしの良い子のデモ行進。

欧州外からの参加も観光客もほとんどなかったけれど、例年通り7月14日前後は人通りも増えて盛り上がった。後半にオフの出演者にコロナ感染者が出て、劇場そのものが閉鎖されてしまったところもあったけれど、とりあえず無事に開催できてよかった。来年こそは例年通りの状態に戻ることを願うばかり。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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