News & Column
ニュース & コラム
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
2020年3月
ジャパンモードのパリのダンス
今月は幾つかの劇場で日本関係の作品が続々と上演される!はずだったのだけれど、コロナウイルス感染拡大で、6本のうち3本は中止…
シャイヨー国立舞踊劇場では、広島の原爆をテーマにした「彼らは何も見なかった/Ils n’ont rien vu」、そして「ヴェッセル」、その後に予定されていた中村アオイさんとエステバン・フルミさんのバーチャルダンスは、ゴーグルの消毒ができないという理由で中止。秋に日本公演が予定されているので、それを楽しみにしたい。
日本文化会館では「ありか」。
大学都市内のシテ劇場で伊藤郁女さんと森山未来さんの「Is it worth save us ?」と、ベルタン・ポワレでの三東瑠璃さんの「住処」は中止。でも延期の予定。
上演された3本はどれも素晴らしかった~。
特に、シャイヨー国立舞踊劇場の中劇場で行われた「彼らは何も見なかった/Ils n’ont rien vu」は今年のベスト3に入るほどの感動を受けました!
フランス人が広島の原爆と日本文化をきっちりと描いたことへの驚き、そこにフレンチテイストが加わって二つの文化の融合、さらに戦争の恐ろしさと平和をユニバーサルに訴えるという3つのパンチに感動を覚えたのだった。
振付は、トゥールの国立振付センターの芸術監督トマ・ルブランさん。原爆も戦争も知らないフランス人が「ヒロシマ」を冷静に描き切ってくれたことが嬉しかった。
映画「ヒロシマ我が愛」に触発されて、3年の構想の後に出演者と広島に行って、町を歩き、広島平和記念資料館を訪れ、被爆者と語り、地元の神楽団の舞を見たという。聞くと見るとは大違いだったそうだけれど、その体験が作品をリアリティあるものにしていたのだと思う。
当時の日常があって、原爆が落とされる瞬間があって、被爆者の手記が朗読される。ケロイドの踊りもあった。そんな悲惨なイメージをかっ飛ばすかのように、軽快な神楽の音楽が流れてダンサーたちが頭を振りながら激しく踊る。そのシーンの衣装の美しいこと。フレンチテイストとはいえ、きらびやかで美しかった。前のシーンでの、作務衣にかすり地のボロという地味な色彩が、いきなり艶やかになったことが異様に感じられたのは一瞬のこと。これが復興なのだとすぐにわかった。
色彩色豊かな着物を羽織って一心不乱に踊る様子は、広島の人たちが地元に伝わる信仰を心の支えにして苦難を乗り越えたことを言いたかったのではないかと思う。そして、見ている私もこのシーンに救われたような気がした。
冒頭の場面は印象深い。正座した9人のダンサーが、甲高い太鼓の音に合わせて鶴を折る。その動きが所作のようで美しい。単純な動きをしながらも確実に折られ、曲が終わるとそこに白い鶴が9羽並んだのは手品のようで、見事というしかない。ダンサーが「リハーサルは鶴を折ることから始まったのよ」と言っていた。
歴史上の著名人たちが、手渡された白い鶴を見ながら崩れていく。そしてその後ろに吊り上げられたボロが、異様な存在感を発して彼らを見下ろしている。床に敷かれていたときには平らだった布が、焼けただれた壁に変わったことに息を飲んだ。
一枚の布がこれほどまでに存在感を出すとは!
フランス在住のアーティスト、Reiko KOGAさんの作品だ。以前にルブランさんが彼女の展示会を訪れて、それで今回の制作依頼になったそうだ。
ダンサーの梶原暁子さんも、何年も前に仕事をしたっきりだったのに、今回連絡が来て出演依頼となったとか。日本がテーマだから日本人を前面に出すのではなく、要所要所で的確に彼女の存在を引き出したのは、さすがルブラン!と言いたい。
戦争も原爆も知らないフランス人が、原爆の恐ろしさと、日本の文化と精神をきっちり描いていて、日本人の自分が見過ごしていたことにも気づかせてくれるような印象を受けた。そして原爆を知らないフランス人にもそれは伝わったと思う。
被爆者の折免シゲコさんが82才にしてようやく口に出せた肉声が心に突き刺さる。
「戦争なんかしちゃいけないんだよ」
吐き出すように言った言葉は翻訳されなかった。でも、その気持ちはちゃんとフランス人に伝わっていた。
忘れかけられている史実を、こうして再現してくれたルブランさんに感謝。核戦争だ、原発だと、核の恐ろしさの実感が薄れつつある現在、ルブランさんは「ヒロシマ」を通して平和の意味を問いかけたのだと思う。世界を回って多くの人に見てもらいたい作品だ。
この公演に先駆けて、ホールではパリのコンセルバトワールの生徒たちによるパフォーマンス。扇を使いこなし、元気溌剌!
やっと見れた「ヴェッセル」は衝撃的でした~
3月6日~13日までは、ダミアン・ジャレ+名和晃平による「ヴェッセル」。
「ヴェッセル」は、ダミアン・ジャレさんが滞在した京都のヴィラ・九条山で名和晃平さんと共に制作されて、2016年に京都ロームシアターで世界初演された。その後、犬島(瀬戸内国際芸術祭)、横浜ダンスコレクションで上演して、2018年のヨーロッパツアーを楽しみにしていたのに、パリではなくてレンヌでの公演。翌年アジアツアーをした後に、ようやくパリ。
美術に関して無知の私は、名和さんのテュイルリー庭園の池での展示(FIAC)を見ていたにもかかわらず、ルーブル美術館で展示をしてパリジャンをあっと言わせた有名人とは気がつかず、失礼しました。
ダミアン・ジャレさんはシディ・ラルビ・シェルカウイさんの横で影が薄い印象になりがちだけれど、私は昔から才能があると思っていましたよ。
見た人から話は聞いていたし、プロモーションビデオも見ていたので予想通りの作品ではあったけれど、やっぱり実際に見ると迫力がある。
水と白と裸体。これで「ダミアンは舞踏を真似したのか」と言った人がいたけれど、う〜ん、それは違うんじゃないかな。ダミアンは、「体の60%は水だし、死後は三途の川を渡ると言われているように、日本では水は神聖なもので、人とは切っても切れない縁だと思った」と言っている。そして、美術館で見た名和作品との衝撃的な出会い。そこから必然的にこの美術になったのではないかな。伝統芸能とかスピリチュアルなものをテーマにした作品を作ってきた人だし、フランスでは舞踏もコンテンポラリーのジャンルだし。
その水の中で動く頭のない動物たち。カエルのようにも虫のようにも見える奇妙な物体は、水しぶきを上げ、絡まる。二人で組んでいるのはわかるけれど、一体どうやって重なっているのか解読しようとしたけれど、見当もつかない。
音楽に合わせたコケティッシュなシーンが可愛くて好きだった。
白い島の上で塊になったり、組んで動いているうちに、一人の頭から白いどろりとしたものが背中に流れた。硬いはずの台のどこから液体が?
絡まり具合といい、液体といい、不思議が詰まっている。そして、やっと顔を見せたのに、ロボットのように硬直して横揺れしてから、ぐにゃりと沈んでいくラストが印象的。
ダンサーにとっては「痛みと戦いながら踊る作品」なのだそうだけれど、初演から4年も経つのにほとんどメンバーが変わらないし、カンパニーを持たないジャレさんにとっても「仲間」なのだそうで、とっても良い雰囲気。理解し合える関係の振付家とダンサーっていいね!
残念ならが、コロナウイルス感染拡大防止のため、最終日の公演がキャンセル。初日に見ておいて良かった~
待ってました!島地保武さんとROY環さんのバトルが見ものの「ありか」は、パリ日本文化会館にて。
これが今シーズン最後の舞台になるとは思いもしなかった。恨コロナ
噂通り、ラップとダンスのバトルはスリリングだった。ROY環さんのリズムと体の動きが一致しているから、見ている方も自然と体が動いてしまう。
島地さんが絡んできて、リフトで持ち上げられても、ROYさんの身体はちゃんと対応している。ダンサーじゃないのに、身体能力は高い。島地さんはROYさんの動きを瞬時に受け止めて、さくっとまとめる。さすがフォーサイスカンパニーで活躍しただけのことはある。すごいなあ。
とりとめのない言葉や突拍子もない動きがバシバシ出てきて、次に何が起こるのか予想がつかない面白さにハマった。
私は興奮して見ていたのだけれど、なんとなく客席の熱気が感じられなかったのは、前日に発令された100人以上の集会禁止令のために、急遽入場者を制限したことでできた空席のせいかなあ。それと、ROYさんのラップの言葉遊びに笑うのは日本人だけで、フランス人は取り残され感が残ったのもよくなかったのかなあ。隣にいた友達に「なんで笑ってるの?」と聞かれた。プログラムににフランス語訳が書いてあったけれど、公演中に読むわけにもいかないし、言葉遊びのニュアンスは日本の文化を知らないと理解できないから。残念だったけれど、ROYさんの音楽性は伝わっていたみたいで「驚異的」と言っていたのに救われた。
同時に開催されていた塚原悠也+コンタクトゴンゾのエクスポジション「トランスフィア♯7」
奇妙というか、遊び心いっぱいのオブジェがずらり。何気なさそうに見えるけれど、よ~く見ると奥が深い。
パフォーマンスも予定されていたのに、残念ながらコロナ騒動で中止になってしまった、でも、展示にはビデオがたくさん流れていて、はまりました。実際に観たかったなあ
会館のホールでは「ワフリカ」展
セルジュ・ムアングさんによる日本とアフリカの融合
アフリカの女性が髪を結って着物を着ている。アフリカンヘアーは、日本髪と思想的に似ているのかも。
照明を落としたホールにずらりと並んだ人形は…結構インパクトあり。今にも動き出しそう
今月もコロナウイルス真っ盛り
寒暖の差が激しい今日この頃、
いつもより早く桜が咲いて、明るい春の到来かと思いきや、今月はコロナウイルス関連のニュースしか流れていないと言っても良いくらいで、フランス全土、コロナウイルスに怯えています。
イタリアの感染拡大にものんびり構えていたけれど、パリ近郊北部で死者が出た途端に慌て出した。この頃からあっという間に「いつもの習慣」が変わっていった。挨拶の仕方とマスクの着用。これはフランス文化に大きな足跡を残したんじゃないかと思う。
*挨拶
顔見知りになれば、親しくなくてもほっぺたにチュッとキスをするのだが(アメリカ式のハグは日常ではしない、感情が極まった時くらいかな)、これが握手もせず、肘を軽く合わせての挨拶となり、今では体が触れ合うことはなく、50センチ以上離れての会話になった。
「日本式の挨拶を」と言われる度に褒められているのだかそうでないのか、変な気分になる。
*マスクの着用
顔を隠すのはテロリストという認識のフランス。イスラム教のニカブ姿で外出すると罰金を取られる。昔からマスクをつける習慣がないし、政府は月初めには感染者だけがつければ良いと言っていたのに、ある日突然予防のために手術用マスクをつけろと言い始めた。いきなり言われても、薬局には在庫がないし、どこにも売っていない。あるのは工事用のマスクくらいだけれど、工事用品を扱う店は閉まっている。どこで買えばいいんじゃ~!
マスクをつけると感染者と思われるから付けないでいたけれど、ちらほら予防マスクをつけている人を見かけるようになったから、付けてみた。すると、人が避けてくれる!歩道を歩いていたら、前からきたマスクをつけた男の人が車道の真ん中まで歩いてよけてくれた。これはグッド。人が寄ってこなければ感染の確率が減るではないか!人がなんと言おうと、自分を守るのは自分だけなのだ。運良く日本から大量に持ってきたから、これからは付けることにした。
月末になってようやく政府が「予防マスクは効果があります」と。しかし、相変わらずマスクはなくて、政府が550万個を中国に注文したと発表。
なんで中国?なんでフランス企業に頼まない?感染発生国の中国に注文するのが悔しい。
ところが、出荷直前にアメリカが市価の3倍の値段で買収したために、フランスには一部しか届かなくて、次の優先国はスエーデンだとの報道。これがデマという話もあるけれど、テレビで流れた映像は、機内の座席にぐちゃぐちゃに積み込まれた段ボール。もちろん中身はマスク。民間機を飛ばしてマスクを調達したみたいだった。
これがフランスに到着すると、盗まれたら困るという理由で、警察による重装備、銃装備、護衛車に囲まれて各地の病院に運ばれた。医療関係者優先です。まるで国宝級の扱いで、たかがマスクだけれど、されどマスク様様なのだ。
注文した量のマスクが届かなかったことから、大統領はやっとフランスの会社に注文。で、も、もちろん一般人用のマスクが手に入ることはなく、「皆さん家で作りましょう」ということになった。こんなことになるのなら、マスクをつける日本人を馬鹿にせず、最初から予防マスクは効果があると言えばいいのにと思う。習慣の違いって恐ろしい。
挨拶の仕方といい、マスクといい、日本では当たり前のことがフランスでは新たな習慣。この点では日本は先進国なのだ!とこんなことを自慢しても仕方ないけどね。
まあこれで、予防マスクが普及すれば、マスク=日本人観光客⇒すりやひったくりに襲われる危険性は少なくなると思う。
ちなみにこちらのスリは、家族に代々伝わる職業で、3才から鍛えられ、想像を超える技術を持っています。神業とさえ言われているので、旅行の際にはくれぐれも注意してください。8歳くらいの子供がほんの5秒くらいで自動販売機からお金を盗むのを目撃したことがあった。驚くべき速さで完璧!
そのほかに変わったことは
*集会の禁止
5000人以上の集会禁止令が、1000人になり、あっという間に100人、そして数日後には閉鎖命令。発表の翌日に施行なので慌てる。このために、観客を1000人(出演者とスタッフを含んでの1000人という理解もあった)以下に抑える努力をして上演していた劇場の努力も虚しく、閉鎖。ストで30億円の損害が出たと言われるオペラ座は、踏んだり蹴ったりのシーズンとなった。
美術館も閉鎖したし、パリマラソンなどのイベントも中止。学校も休校で、子供がいない我が家では他人事かと思っていたら、ツレがテレワークになって家にいる…。
移動遊園地も開園間近だったのに…
アトラクションを組み立てていたと思ったら、即刻解体。虚しい…
大統領と首相からの発表は待ったなし。
12日の夜、マクロン大統領自らテレビで国民にコメントを発表。3大チャンネルは予定を変更して一斉に報道。30分にも及ぶ演説で、国民に呼びかけた。
「来週月曜日から全国全ての学校、つまり託児所、幼稚園、小、中、高から大学まで全て休校。それに伴い一時的休職に追い込まれた人の給料はを政府が保証する」。
国民を守るのは国の責任だという姿勢はありがたいが、お金のない政府がどこまで保証してくれるのか心配でもある。そして財源確保は税金?また値上がり?
とその翌日の夜、今度は首相の演説に目が点になった。
「今夜0時から全てのレストラン、カフェ、映画館、ディスコを閉鎖する」
びえ~、今8時ですよ。たった4時間後の閉鎖命令はあんまりでしょ。
市場の閉鎖もそうだった。禁止令を知らずに店開きしていたスタンドは即刻閉鎖を命じられ、多くの食料がゴミに。食品を無駄にしないようにしましょうという傍で、この命令。せめて数日の余裕は欲しい。
*外出禁止令
広場に人影は少なく、
車のない道路が広く見える。ここでいい気になってスピードを上げると捕まります。
実際に事故は減ったものの、スピード違反が増えたとか。
外出禁止令は厳しい。というか厳しくなった。
3月17日の午後12時から外出する時には所定の形式に、移動目的などを記入した紙所持義務。
午前中は地方に避難する人で駅はごった返したらしいが、午後のリヨン駅はだいぶすっきりしていた。電車は車両が増えていたのに結構混んでいた。隣席にならないようにという国鉄の配慮で車両が増えたらしい。一人が2席を使って良いわけなので、おかげでゆったり旅ができたのはありがたい。
今から思えば、この日の列車でパリを脱出したのはラッキーだった。この後、正当な理由がない限り電車にも乗れなくなった。国境も閉鎖している。31日にはオルリー空港も閉鎖された。
外出禁止令にもかかわらず、公園や海岸で日光浴する人多数。天気もいいから、日光消毒ということらしい。やりたいことをするフランス人に規則を守れという方が無理。フランスは自由の国だからね。
これには政府が激怒。公園の門を閉め、海岸にはバリケード張って侵入禁止。警官総動員での検問が始まったけれど、しばらくしたら「マスクがなくては危険なので検問はできない」と警官が職務拒否。これで検問が減ると思いきや、山や森のある観光地では、ドローンで監視と敵も抜け目がない。自宅から少し離れた畑を耕しに行った農家のおじさんが検問に遭い、外出許可証を携帯していなかったので罰金を取られたという話を聞いた。警官は頻繁に巡回しているようだ。
違反者に対する罰金は最初38ユーロだったのがどんどん値上がりして、月末には1回目は135ユーロ(1万6千円)、15日以内に違反すると200ユーロ(2万4千円)、支払い期限に罰金を納めないと450ユーロ(5万4千円)、30日以内に4度の違反を繰り返すと6ヶ月の禁固刑に加えて3750ユーロ(45万円)の罰金と超高い。実際にこの最高刑で投獄された人がいたと報道があった。その一方で、刑務所の感染防止対策が万全ではないという理由で、刑が軽い人は釈放されたらしい。出されたり、入れられたりと刑務所も忙しい。
早速ニセ警官が出没して、検問と称して現金で罰金を要求するらしいけど、「値引きしますよ~」というセコイ偽警官もいるらしい。どの家にも人はいるし、街に人もいないから、空き巣やすりは商売上がったり。閉店中の店を狙い始めたとの報道も。あの手この手の新手が出現。
警官と言い争いになって、自転車を没収された知人。競技用自転車だから10万円は下らない高級車だったらしい。
外出範囲も狭くなって、今では自宅から半径1キロ以内、一時間以内。外出許可証には自宅の住所と出発時間を記入し、身分証明書携帯の義務。近くのパン屋に毎朝行く時もこの許可証を携帯しなくてはいけないので面倒くさいが、罰金を払いたくないので、仕方ない。プリンターのインクが切れても、どこで買えるのだろうか、手書きはめんど~と思っていたら、携帯電話に書式を取り込める方法ができた。しかし、ネット登録は記録が残るからあとでチェックされる可能性があるよとツレは言う。本当かな。
今自由に散歩できるのは猫くらいだ。羨ましい~~~!
鳥になりたい。
外出禁止令が出る前の3月6日の写真が懐かしい。人は少なくなったけれど、それでも人がいた。
オペラ近くの大通り。ガラガラ、でも自由に歩けた
グレヴァン博物館の前に誰もいない
トロカデロ駅。こんなにスカスカなのを見たことがない。いつもは改札が見えないくらいの人で埋まっているのに。でも人がいた。
3月末は人通りほとんどなし。たった2週間でこの変わりようを誰が想像したことか。
とはいえ、じっと家に篭るフランス人ではない。天気の良い日には散歩する人によく出会う。以前は散歩する人などほとんど見かけなかったんだけどなあ。もちろんすれ違う時は1メートル以上の距離を保って。
車の減少と工場の閉鎖で公害が減った一方で、家庭内暴力が増えているとの報道。ホットラインが新たに設けられたが、監視が厳しくて電話できない人のために、薬局が駆け込み寺になった。同伴されて訴えられない場合の合言葉までできている。
ラジオでの公開電話相談室には、「妻の苛立ちが日に日に増している」との相談も。回答は、話しかけずに一人にさせる時間を作ること。狭いアパートではなかなか難しいことではあるけれど。。。
この直前に引越しや転職をした人は運が悪い。新しいことを始めようにも、八方塞がりだ。春休みのバカンスを予定していたくじ運の悪い人も多かったけれど(我が家も同じ)、家があって仕事があるだけマシということだと気を落ち着けなくては。(この後バカンスがずらせることがわかってほっとした)
リヨンの領事館が毎日のようにメールで地域ごとの感染者数や注意事項、規則の変更などを報告してくれるので大変に役立っている。テレビのニュースでは流れないような細かいことまで報告してくれるので、不謹慎ではありますが、毎日メールを楽しみにしています。
例えば、
・逮捕された売春婦(現在フランスでは売春行為は禁止)を調べたら、コロナウイルスに感染していたことが発覚。客は10人ほど取った。
・報道によれば、17日の外出禁止令発表後、フランス全土で86万7695件の検問が行われ、うち3万8994件の違反があった。
・外出禁止令下,ニセ警官(含:私服警官)・ニセ憲兵隊による罰金徴収事件が発生している。罰金を現金で要求したり、減額(本来135ユーロのところを50ユーロに値引きする)を提案する者は偽者であり、疑わしい
ドローム県のヴァランス市では,男性が医者を偽り家々を訪問し,コロナウイルスの検査を提案,検査料を要求する詐欺事件が発生。警察が注意を呼びかけている。
こんな温かみのある報道もいただきました。
・リヨン国立管弦楽団の26人楽団員が,外出禁止令下での小コンサートを披露。
https://www.youtube.com/watch?v=iVvtXGDX_CU
・イゼール県のミシュラン2つ星シェフであるChristophe Aribert氏が,グルノーブル大学病院の医療関係者のために45食分の昼食を提供。同氏はインタビューで,人に喜びを与えることが私の仕事の中心的な思想であり,モティベーションだと語った。
などなど、フランスのことだけでなく、日本への入国情報も細かく知らせてくれるので、助かっている。
郵便配達は週3~4回しかこない。そして、日本から来るはずの手紙が2週間経っても届かない。どこで止められているのかしら。
コロナウイルスでてんやわんやのフランスは、首相が議会を通さずに強行採決した年金改革案に対する反対派のストも、ジレジョーヌ(黄色いベスト運動)のストもどこかに行ってしまった。これでうやむやにされないことを祈る。
今パリで一番人気のラーメン屋へ行ってきた
レストラン閉鎖直前に行ったラーメン屋。懐かしい~と思うようになってしまった今日この頃、「昔々パリにラーメン屋がありました」っていうところでしょうか。
この前フランス人が焼くギョーザバーの前を通ったが、今度はフランス人が作るラーメン屋。超人気で、行列ができるとの噂。その名も「こだわり」。その2号店「こだわり築地」へ。
行ってびっくり、店内そのまま築地場外。場内かな、場内に入ったことないもので…
ここは日本?ではなくてパリ、パレ・ロワイヤル近くなのだ。
客はほとんどがフランス人
マンホールの蓋まである!日本から持ってきたのよね、芸が細かい!
店員はほとんどフランス人で、日本語OKのお兄さんがほとんど。「い~らっしゃいませぃ」と日本人とは明らかに違う発音で迎えてくれる。
ここは魚がメインのようなので、鯛のパイタンラーメンを注文。
前菜に「こだわり餃子」を頼んだのに、なぜかメインのラーメンが先に出てきた。まあいいや。それにしても、注文してからラーメンが出てくるまで数分とは、これまた日本並みの早さ。
では、ラーメンから。いっただきま~す♪
うまい!麺にはコシがあり、スープは濃厚。ラードまでついているのでゲエと思ったが、これがまたうまい。しかしだ。小さく見える丼なのに、深さがあるから量が多いのか、油がきつくて胃に重いのか、半分ほど食べたらお腹が張ってきた。
気分を変えて餃子に挑戦。包まれていない餃子は、見た目は新鮮だったが食べにくい。しかし、美味しい!これも鯛の身をほぐしたものが入っている。
初回はトッピングなしのシンプルなものにしたけど、ネットでおすすめのピリ辛柚子ソースを注文。これがまた美味しくて、スープに混ぜると美味。ただし、元々のスープの味は壊れて別物になる感じ。これがまた油がドロドロしている。大食いの私がたかだかラーメン一杯と餃子一個で満腹になり、デザートまで食べられなかったのは尋常ではない。油がキツくて胃が張ったからだと思う。餃子は2つしかないけれど、かなりの量なので、友達と半分こして正解。
これがトイレの中。
照明は赤提灯
ここまでやるか、フランス人!あっぱれでござんす。全部日本から持ってきたのだろうなあ。日本人なら絶対にやらないコンセプトの店。装飾も、味も。
デザートなんかすごいですよ、「お米のプディングホタテ味」。うわ~微妙
鯛焼きは3種類あって、惹かれたのが「胡麻風味の餡の鯛焼き」。餡は中に入っていなくて、たい焼きの上にかかっているらしい。なのでお持ち帰り不可能。次回ぜひチャレンジしてみたい。
ちなみに1号店は6区オデオンの近くで、内装は「横丁」。「築地」とはメニューが違うので、こちらもぜひ次回。
外に出てびっくり、ずらりと行列ができていた。観光客のいないこの時期なら、オープンとほぼ同時に行くのがお得かも。築地の喧騒がテープで流れているので、席によっては結構うるさくて、落ち着かないと友達はブツブツ。
今年もフランスは福島を忘れない。
3月11日。コロナウイルス報道に時間が割かれる中、メディアはちゃんと福島の現在を特集報道していた。
テレビやラジオでは放射能汚染で放置された家屋、土地を追われた人々の仮設住居での生活、原発で働く人たちの姿(社屋潜入だけれど途中からは撮影禁止)をインタビューを交えて紹介していた。そして政府が汚染水を海に放出することを決定したと。海は世界を回っているから、福島から流された汚染水は海流に乗って世界中に回る。
そして今日は、テロで犠牲になった人の追悼会が行われた。3月11日はスペインの電車爆発テロの日でもあったのだ。多くの人がトロカデロ広場に集まって冥福を祈った。
今月の一枚
道路にこんな物を置き去りにするな!ギョッとするじゃないか~!