ダンスの動画・コラム・コンクール情報専門サイト

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオ。
HOME > ニュース & コラム > 山田マミのやっぱり、パリが好き 2021年3月

News & Column
ニュース & コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2021年3月

星と踊るために旅立ったパトリック・デュポン

3月5日、メディアはまだ61歳だったパトリック・デュポンの死を大々的に取り上げた。
突然の訃報で、死因は急性の肺癌だった。

若き頃のビデオを見れば、天才!という言葉しか思い浮かばない。テクニックも演技も完璧で、古典の決まりきった振り付けを勝手に変えても誰も文句を言えない。バレエだけでなく、コンテンポラリーだってお手の物。ベジャール振り付けの「カルメン」やローラン・プティの「長靴をはいた猫」など、何度見ても惚れ惚れする!

ダンサーとしては天才的で世界の四大ダンサーの一人と言われていたし、現ロレーヌバレエ団の芸術監督としても、同バレエ団の世界ツアーを行うなどして成功。そしてパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督をヌレエフから引き継いで、伝統でガチガチのパリ・オペラ座にダニエル・ラリューなどのヌーベルバーグの振付家に作品を依頼するなどして革新をもたらした。怖いもの無しの華やかな人生に見えたのも束の間、突然オペラ座を解雇された後は真っ暗闇の人生に突入する。自動車事故で再起不能と医師に宣言されたり、火事を起こしたり。のちにこれらの悲運の連続は、占い師の予言通りだったという。通りすがりに呼び止められて不運を予告されて、「ありえない」と一笑、ところがそれが現実になったと。フランスにも凄腕占い師はいるのね。
しかしこの一連の不幸をその精神力の強さで克服して、あっという間にミュージカルの舞台で復帰して、歌まで歌ったという。多才なのだ。
その後は「スター誕生」のようなテレビ番組の審査員として活躍して、テレビとオペラを繋げた人と言われる傍ら、生涯のパートナーとなるレイラと運命の出会いをして、17年間活動を共にした。バレエを教え、作品を作り、踊り、そしてホワイト・イーグル・ダンス・アカデミーを設立して、若いダンサーを育てることに尽力していた。来シーズンの生徒募集のプロモーションビデオを配信したばかりだった。

3月11日パリのサンロック教会で葬儀には多くの人が訪れ、その死を悼んでいた。

パリ・オペラ座はデュポンへのオマージュとして1992年7月18日にオペラ座バスティーユで録画されたブラディミール・ブルメステル版「白鳥の湖」を無料配信。
これがめっちゃ面白かった。デュポンもすごいが、相手役のマリー=クロード・ピエトラガラもすごい。ゴールデンカップルのダンスと演技に目が離せない。しかも、エトワールになる前のニコラ・ル・リッシュ、ウィルフリード・ロモリ、アニエス・ルテステュ、マリー=クレール・オスタ、デルフィーヌ・ムッサンなどを見つけて懐かし~。道化役のエリック・キエレやロットバルト役のオリヴィエ・パティもいい。

パリ・オペラ座では近年ヌレエフ版しか上演しないから新鮮に映る。

毛利巨男のド派手な衣装が悪魔の手下らしくてこれまたかっこいい。上流社会では絶対に使わない色使いこそが悪魔の世界!という感じだ。いつかこのバージョンをリバイバルしてくれないかな、オペラ座。

パリ・オペラ座バレエ団の「ガラ」を初めて見た!

パリ・オペラ座バレエ団のシーズン開幕として行われる伝統の「ガラ」公演。切符入手が難しく、「正装で」というのもネックになっていて、見る機会がなかったのだが、コロナのおかげでネット配信してくれた。オペラ座に感謝!
いつもは見られない舞台奥のフォワイエが開いて、そこから次々とダンサーたちが出てくるデフィレ。

オペラ座バレエ学校の生徒たちに続いてスジェ、コリフェ、プルミエダンサー、エトワール。ただ歩くだけなのに、その美しさに目が釘付け!さすが350年の伝統。

見よ、この爪先まで伸びた歩き方!そしてひきしまったお尻を!

マスクをしてのデフィレというのも、オペラ座バレエ団350年の歴史が始まって以来の出来事だと思う。誰だかよくわからない…

この後は3作品、ヴィクトル・グソフスキ振付の「グラン・パ・クラシック」、ジェローム・ロビンス「イン・ザ・ナイト」そしてウイリアム・フォーサイスの「精密の不安定なスリル」と続いた。

ヴァランティーヌ・コラサントとユーゴ・マルシャンの「グラン・パ・クラシック」
安定していて、ドーンと来い!という感じ

三組のそれぞれの愛の形を描いたジェローム・ロビンス「イン・ザ・ナイト」。細かな表情まで見えたのは、カメラワークのおかげ。

ウイリアム・フォーサイスの「精密の不安定なスリル」は、若いエネルギーが弾けていた。エトワールのアマンディーヌ・アルビッソン、リュドミラ・パリエロとポール・マルクに混じって、オニール八菜とパブロ・レガサがキラキラしていた。

コ~ロナは続く~よ~、ど~こまでも~!?

3月14日は、レストラン閉鎖命令が出て1年目の誕生日。ちっとも嬉しくない記念日だ…

劇場は閉鎖したまま

3月20日からパリ近郊県とフランス北部と南東部の16県に外出禁止令。最低4週間。最低ですよ!前日の19日はパリ脱出組で道路と駅はごった返し。
その他の県は夜間外出禁止が夕方6時から7時に。これはまもなく始まる夏時間を考慮してのことだと。今年から夏時間・冬時間は無くなるはずだったのに、コロナのせいでヨーロッパ各国そこまで手が回らず、今年も夏と冬の時間変更ありだそうです。

フランスに戻ってメディアの映像を見て驚いた。
天気が良ければ川べりや公園でわいわいやっている人多数。いくら野外でも、これじゃあ感染が減るわけがない。自分は感染しないとか、ワクチン接種が始まれば、そのうちなくなるだろうとでも思っているのだろう。
日本では1日の新規感染者は1000人台なのにフランスでは軽く2万人を超え、時々3万人とか報道されている。なんでだろう。意識の差ですかね。日本で推進されている「黙食」なんぞ、あり得ない~。人が集まればぺちゃくちゃと口が動く。
パリの空港の免税店。客そっちのけで店員は無駄話に花を咲かせている。フランスの空港職員もぺちゃくちゃ。もちろん客が話しかければさっと応対はしてくれるけど、日本ではそんなことをしたら上司から怒鳴られるのがオチ。
これも文化の違いだなぁと思っていたら、東洋経済オンラインにガッテン納得の記事が載っていた。
https://toyokeizai.net/articles/-/415236
私もよく「いつもニコニコしているね」と好感を持って言われることが多いのだが、実は会話についていけないか、くだらなすぎて聞いていない状態なのだ。だから突然「どう思う?」と意見を聞かれて慌てる。右から左に聞き流していたのがバレてしまう。

今シーズン、とうとうアルペンスキーのリフトの運営許可が降りないまま春を迎えた。コロナ禍です。雪山愛好家は仕方がないから雪山ハイキングかノルディックスキーで我慢。それでも!という人は自力で登って滑る。1時間かけて登って、5分で滑り終わる。あっという間だけれど、この快感はやめられないのだ。

スキーに興味がない私は、ハイキング。
氷霧
下山する頃にはもう消えている。早起きさんだけの特典。

春が来たぁ~

街では桜が咲き始めた。

高校の庭の桜

見事な桜棚。毎年枝を切りそろえているからね。こんな高校で学べる学生が羨ましいけれど、高校生にとっては花より団子、花よりおしゃべりだろうなあ。

カエルの産卵現場を目撃!

メスの上にオスが乗っかっています。動物のように交尾するのかと思ったら、そうではない。メスが卵を産むまでオスは背中にしがみついてじっと我慢。卵が出てきたら即座に性液を出して受精させる。これは魚と同じなのだよ、との説明。へえ~、知らなかった。

1匹のメスの上に3匹のオスが乗っかっている。モテるメスなのだ。
私たちが動いたから驚いて逃げちゃった、ごめんね。お邪魔してしまいました。

今月の1枚

黒い毛皮を着た人が座っているのかと思ったら、犬だった。金網が犬の背中の形に変形していたということは、ここがこの犬の定位置なのだろう。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
TOPへ