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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2021年4月

え〜!また〜

出ました3回目のフランス全土緊急事態宣言。3月にすでにパリ近郊を含む19県に発令されていたけれど、うちの県は大丈夫だろうなどとタカを括っていたら、いきなり「全土」。しかもいつも通り「明後日の夜中0時から」。うううううっ
3月31日夜発表で、4月3日になった途端の午前0時から施行。2日間の余裕しかない。今回は外出禁止と言っても10キロ以上の移動禁止で、それ以内なら時間制限なしだけれど、これから春休みという時期には厳しい。学校は閉鎖、地域によって時期が異なる春休みが、いきなり全国統一になって、予定が狂って慌てる家族。田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に親が子供を預けに行ったり連れ戻しに行くのは許されるとあって、列車の予約は新規購入とキャンセルが飛び交った。
我が家も1週間後のバカンスは中止せざるを得ない。が、緊急事態宣言がうまく理解できない高齢の義父は、予定通り田舎の家に向けて一人で車で行くと言うので、慌てて追いかけることにした。今回は復活祭の祝日があるから、実際には4月5日の夜7時までに家にたどり着けばお咎めない。ちなみに夜間の外出禁止令はずっと続いている。
4月1日木曜日の朝、ツレは上司に翌日1日の休暇と4月の有給休暇のキャンセルを電話で伝えたけれど、返事なし。上司も予定が狂っててんやわんやだろうし、皆同じ状況だろうから、自己責任で好きにしろということなのだと勝手に理解することにした。寛容というか、いい加減なところがありがたい。こういう時だけフランスにいて良かったと思う。

国民の不満が溜まりまくっているのを承知の大統領は、「レストラン、美術館、劇場は5月中旬にオープンする方向で調整している」と言うけれど、新規感染者が減らなければさらに延長されるのだろうなあ。ちなみに1日の新規感染者は軽く4万人を超えていて、マスク着用義務もワクチンもなかった第1波を大幅に上回っている。
この先どうなるのだろう。

パリに行きたいのに行けないから、パリの友達に連絡した。
「息子さん、家に閉じ込められてふてってるんじゃないの?」
「ぜーんぜん、以前の外出禁止令と違って、10キロ以内なら時間制限なしで出かけられるから、友達に会いに行ったりして、家になんかいないわよ。バカンスに出なければいいわけで、今回は意味のない外出禁止令だね」

そうか、そういうことか。時間制限なしの10kmならなんとかなる。でもパリには行けない…400キロ離れてる…

じゃあハイキングでもするか。でも行きたい場所は全て10km超。仕方がない、近場で我慢と出かければ、世の中は春だった!

山が黄色い。そう、菜の花畑だ。

もう少し歩けば目の前にも菜の花畑が広がっている。花は綺麗だけれど、匂いが良いとは思えない…

桜も満開になった。近くの小高い丘には野生の桜があって、小さめの花をつけている。
こんな時、自然が近い地方都市に住んでいて良かったと思う。パリ市内なら、ブローニュの森かヴァンセンヌの森へ行けば良いけれど、驚くほど混んでいて、なんだかなあ…と思うことがある。

街路樹に八重桜があったので、花を摘んで桜の花の塩漬け、いや、酢漬けです。普通は塩漬けにするのだけれど、作る過程でできるお酢は桜の香りがして美味なので、我が家ではこれ以上塩を加えずに、ここでストップ。この桜酢でいただくサラダは春〜

水仙もリラも咲いて、家の中が明るくなった。
こちらでは春になると花が一斉に咲くので綺麗。異常気象のせいもあるのか、特に今年は順不同で花が咲くから、綺麗だけれど季節感がないなあ。そういえばコスモスは6月に咲いてたっけ。秋桜じゃなくて夏桜になってしまう。。。

フランスに戻って思うこと

あちこちにベンチがある
街を歩いていると、あちこちに緑のスペースや公園があって、歩道にはベンチがある。疲れたらちょっと一休みができるのはありがたい。以前に具合が悪くなった時、ベンチのありがたみが身に沁みた記憶がある。老齢の方がベンチで日向ぼっこしながらお喋りする姿を微笑ましく思うし、昼寝をしても誰も文句を言わない。みんな色々な事情があるわけだし。
ベンチって日常に必要なものだと思うのだけれど、日本ではほとんど見かけなくなってしまった。

東京でベンチが撤去された駅の職員に撤去の理由を聞いたら「歩行の邪魔になります」。返す言葉がなかった。

腰の曲がった老人がほとんどいない
老人はたくさんいるけれど、みな真っ直ぐだ。杖をついて頼りなさそうに歩いている人の腰もほとんど曲がっていない。生活習慣の違いだろうけれど、収納が高い位置にあるからなんじゃないかな。鍋とか皿が高い位置に収納されている家庭が多いように思う。日本に行くと収納が低い位置にあるから腰が痛くなる。でもこれは地震国の宿命かも。
ちなみに我が家では、フライパンは170センチの高さの棚に収納している。置き方が悪かったようで、買ったばかりのフライパンが落ちて、円形ではないフライパンになってしまった(涙)

みだりに人のプライベートに関わらない
フランス人は冷たいというけれど、そうは思わない。お節介を焼かないだけ。こちらから言い出さない限り、放っておいてくれる。でも、そろそろヤバいかもという時には必ず声をかけてくれる。これが挨拶を交わす程度の間柄でも起こる時があって、ほっくりする。私はフランス人は人間的で心優しいと思っている。困っているとなんだかの形で助けてくれる。もちろん、人によるけれど。
アパートの廊下をすれ違う時にも、必ず挨拶する。日本では顔見知りでない限り挨拶なんてしない。ただ、フランスにいる人が全てフランス人ではないということを肝に銘じておくべき。

絶交はほぼあり得ない
意見が合わなくても、その話題を避けて付き合いが続けられるのがフランス。皆考え方が違うし、違って当たり前。もちろんそうじゃない人もいる。
相手にひどく迷惑をかけない限り、大体のことは許される。

知らないことはわからなくて当たり前
知らないものは知らない。誰かが教えてくれなけりゃ、わからないのは当たり前。わからないままにしておくと、必ず後で問題になる。だから理解するまでしつこく質問しても、根気よく説明してくれる(ことが多い)。
日本でしつこく質問すると怒られる。理解できないから質問しているのに、面倒くさそうな態度をされて「いい加減にしてください」と言われる。知って、それを理解するには時間がかかる。知らない、理解できない方が悪いと言わんばかりだ。こういう態度をとられると悲しくなって、自分を閉じてしまう。

自分の意見を持っている
フランス人は主張が強いというけれど、やりたいことができないというのはストレスになる。ダメもとで、とにかく言ってみるのがフランス流。受け入れられなければ、諦めるか別の方法を考える。相手は自分とは違う意見を聞くことで多様性を認め、そこで話し合う。主張すること=わがまま、とは言い切れないと思う。もちろん主張の限度にもよるけれど。
「クラス(邦題」)と言う学校での出来事を描いたフランス映画があった。授業で先生が説明するとあちこちから質問が飛んでくる。その質問に全て答える教師。どんなにくだらない質問でも、ちゃんと答える。一つの話題で1時間があっという間に過ぎてしまう。これじゃあカリキュラムをこなすのは大変だと思うけれど、理解するためには必要なのだ。
「質問するな、黙って先生の言うことを聞け!ノートを取ること以外はするな、机に肘をついて先生の話を聞くな!」という環境で育った私には、この映画が衝撃的だった。質問もできず、ただ聞くだけの授業。
国民性は学校で養われるのかもしれない。

頭と口が直結している人が多い
性別に関係なく、頭に何かが浮かんだと同時にそれが言葉になって放出され、空気も読めず、人の話も聞かずに喋りまくる人がいる。「なんでそんなに喋れるの?」と聞いたら、「親はもっとすごくて機関銃だよ」と言われた。僕はまだマシなほうだよとでも言わんばかり。遺伝なのか、単なる家庭環境なのかはわからない。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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