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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2022年1月

やっぱりパリだよね~
左下に金色に光るドームはアンヴァリッド。ナポレオンが眠っています。

アフリカ人が売るエッフェル塔も美しい

一時帰国して6日間の強制隔離体験日記

噂には聞いていたけれど、いろいろなことを思う6日間でありました。

ラジオで「東京の1日のコロナ新規感染者が最高記録を達し、4千人を超えました!」
これを聞いて、こけた。こっちはフランス全土で毎日2万人近くが新規で感染している。国土は日本の倍近くもあるのに、人口は半分ほどでこの数字。どうだ、参ったか!と言いたいけれど、こんなの自慢にならないなあ。

さて、パリの空港に向かう。

ほとんど人がいない…

そして羽田空港到着。飛行機ガラガラのおかげで、エコノミークラスでも勝手にビジネスクラス気分で、ゴロリと横になって旅ができたのはありがたい。飛行機会社は火の車で大変だろうけれど、ガンバッテクダサイというしかない。
飛行中の席の移動を控えるように言われていたので、12時間近くじっとしていた体には、空港内の長~い通路をひたすら歩くのは運動になって良いと思ったのは初めのうちだけで、部屋ごとに書類や健康チェックのQRコードを見せるのが鬱陶しくなってきた。しかも入国に必要な書類を機内に置き忘れてきたことに気がついた。書き直せば良いかと思ったら、なんと機内まで取りに行かなくてはならないという。え~、今からこの距離を歩いて飛行機に戻って、そしてまたこの長い道のりを歩くのかと思ったら気が遠くなったのだけれど、客室乗務員さんが取りに行ってくれた。閑散とした部屋でぼーっと待っていると、走って持ってきてくれた。ごめんなさい、ありがとう。

それにしても活気のない空港で、たまにしか来ない旅行客の案内をする係員も大変だろうなあ。こうして一日中ずーっと立ったまま「こちらへどうぞ」って案内するだけ。張り合いのない仕事は疲れると思う。

スマートフォンで指定のアプリをインストールした状態で入国するという条件はクリアーしてきたものの、気がつけば言語がフランス語になっていて、日本語表示にする方法がわからない。びえ~!英語はわかるがフランス語がわからない係員。しかし彼は素晴らしかった。ちゃんと日本語バージョンに変更してくれて、アプリの使い方を丁寧に教えてくれた。少し訛りがあったので聞いたら韓国の人だった。日本語も英語もペラペラで、すごいなあ。
感謝感謝で次のブースに行ったら、やはり日本人ではないアジア人からの説明。これが何を言ってるのかわからない。小声でボソボソ。何度も聞き返したのが悪かったのか、愛想も悪くあっさり説明終了。人によるんだなあ。まあ、一日中同じ場所で同じ説明を繰り返しているのだろうから、仕方ないかもね。

とにかくコロナ検査も陰性で無事に入国できそうだ。
ようやくバス乗り場に向かう列に並んだ。これから6日間の政府指定宿泊所での強制隔離が始まるのだ。未知の経験にワクワクするやら不安を覚えるやら。すると、長さ20センチ、幅10センチはあろうかと思われる大きなタグをつけられて、小グループに分かれてバス乗り場に向かう。たった4人のグループに対して一人の監視人付き!逃避防止なんだろうか。そういえば、数ヶ月前に一時帰国した友達が、唾液検査が終わるまでトイレにも行けないから、機内で用を済ませるようにと言ってたなあ。理由を聞いたら逃避防止だって。

税関審査を通ってようやく外に出たものの、廊下で延々と待たされた。側から見れば、タグをつけてぼーっと待つ集団が異様に見えるのだろうなあ。ちょっと恥ずかしい。私ら、タグ付きの荷物ってことか?それなのにタグも付けず、するりと税関をぬけ、即刻自由行動の外人を数人見て、なんで?日本国籍以外の人は入国禁止じゃなかったの?日本語が全くわからない人たちに見えたけど。それとも飛行機の乗務員だったのかな。よくわからん。

やっとバスに乗り込めた。でも案内なし。どこのホテルに行くのだろう。羽田に着いたのに成田のホテルに移動したとか、成田到着後に水戸のホテルに移動したとか、飛行機で福岡へ行ったという人もいたと聞いていたので、不安がつきまとう。
専用機をチャーターして福岡に行けるなら、これも小旅行と腹を括れば楽しいかも。でも心配なのが、予約したハイヤーの時間変更。解放された後に空港から帰宅のためのハイヤーを予約していたのだ。何しろ公共交通機関に乗れないから、徒歩かハイヤーしか手段がない。徒歩は途中で行き倒れそうだ。でも途中でラーメン屋によるというのも悪くないかもしれないけれど、見つかったら面倒臭いことになるからハイヤーで直帰することにしたのだった。時間変更の場合、日本の携帯電話を持っていないから、メールで連絡するしかないなあ。もしインターネットにうまく繋がらなかったどうしよう。日本のサーバーと契約していない非居住者にはフリーWi-Fiなければ何もできない(悲)

結局横浜方面のホテルで、ホッとした。6日後の検査で陰性なら予定通り家にたどり着けそうだ。
さて、これから6日間のサバイバルに挑戦だ。ホテル隔離に関しては事前にネット投稿を読んだり、経験者に話を聞いていたので覚悟はできている。ネガティブになってはいけない。強制隔離という滅多にない経験ができることを喜ぶべきだ。多くの人がメンタルやられたと言っていたので、その点には気を付けて、元気に楽しく6日間を過ごそうではないか!とやる気満々です。

しかし、部屋に入ってあまりの狭さに驚いた。11m2。でもこれが典型的な日本のビジネスホテルの大きさなのだと。それにしても超コンパクト、便利にできている。勉強になるなあ。

ベッドの下にスーツケースを入れられるのはありがたいが、通路が狭くてスーツケースを入れるのに一苦労。確かに便利だけど、もう少し広さが欲しい。。。(苦笑)

初日の夕食弁当の美しさに感動。さすが日本だ。しかもローストビーフ寿司というのもあって、超豪華!
そういえば飛行機を降りてから何も食べていない。最後の機内食を食べたのが12時ごろで、夜7時半にホテルに到着して、今8時半。お腹すいた~、いっただきま~す。
空腹だったので、食べることしか頭になくて、写真撮り忘れました。すみません

ああ、運よく窓があって外が見える。
おお!下に見えるのは赤レンガ倉庫に続く汽車道ではないか!上から見るのは初めてだ。あら、ゴンドラが動いている!夜になればみなとみらいのイリュミネーションが綺麗~!

東京に実家がある身には、わざわざ横浜のホテルに泊まる理由もない訳で、コロナのおかげでこんな体験ができるとは思っても見なかった。ラッキー
ネットもさくさく使えるので、溜まった仕事に集中しよう。

とまあ初日は小旅行のウキウキ気分。しかし・・・・・しかしなのだった。

これが翌日の朝食。今朝は朝からお米のお弁当。元気が出そうだ。
でも、朝食は甘いものオンパレードのフレンチブレックファーストに慣れた身には重い。
そういえばフランス人の女性がいたなあ。大丈夫かしら。

2日目昼食。冷えたミートソースがこんなにまずいとは知らなかった。しかもドアノブから取り外す時に傾けすぎてソースがこぼれちゃったし…(悲)
毎食お弁当の内容とアレルギー成分表がついてくる。気を遣ってくれてありがとう。
しかしこの量じゃあ足りない。特にタンパク質が足りない。フランス人並みに肉食動物化して、デカくなった胃には物足りない。ミートソースの中の粗挽き肉とホキフライを合わせて、何グラムのタンパク質のなるのだろう。困ったな。お土産に持ってきたチーズに手を付けそうだ。そういえば、体格の良い外人さんを見かけたけれど、この量じゃあ空腹の6日間になるだろうなあ。大丈夫かなあ。と余計な心配をしても始まらない。まずは自分の心配をしよう。そうだ、ダイエットと思えばいい。ちょうど良い機会だ。

同じホテルに滞在した知人やネットで情報は得ていたものの、やはりきつい。
一歩も外に出られない。もちろん廊下にも出られない。
3食の弁当はドアノブにかけられているけれど、それも放送があるまで部屋に取り込めない。1日に何回かメールが来て、健康と場所の確認。背景が映る場所で自撮り30秒。マジで監視されているかと思うと気が滅入る。何もそこまでしなくてもとは思うのだけれど、6階のホテルの部屋から脱出した人がいたというから、監視も厳しくなっているのだろうなあ。
場所確認の携帯が鳴ったらすぐに応答しないといけないというのはストレスが溜まる。携帯が鳴るたびにドキドキしてしまう。トイレに入っている時に携帯が鳴った。キャイ~ン、出られないじゃん。参ったなあ。返答しないと罰則ですか?ふぅ

こんなことでストレスを溜めたくない。
全てポジティブに考えることにしよう。携帯は肌身離さず、トイレにも持ち込むことにした。
溜まった仕事は有名作家の気分でこなそう。原稿の締め切りが近くなると、作家はホテルに泊まり込んで缶詰状態で仕事をするという。廊下には編集者の人がいて、外に出ようものなら「原稿仕上げて下さい!」と言われるらしい。この狭さも集中するにはちょうどいい。有名作家になったつもりで頑張ろう!

この部屋からの眺めはいい。これは本当にラッキーだった。このホテルには窓が曇りガラスで外が晴れているのか雨が降っているのかさえわからない部屋があるというから、私は運が良かったのだ。しかも高層階。コロナがなければこんな体験はできなかった。コロナよ、ありがとう。

さて、少し体を動かさないと。で、まずはバレエのレッスン。バーはないけれど、プリエとポールドブラくらいはなんとかできる。簡単なジャンプもできる。下の階の人にはドタドタと騒音かもしれないけれど、そんなこと言ってられない。自分の健康管理の方が大事だ。ベッドと椅子の隙間を利用して、3メートルほどの距離を行ったり来たりのジョギング。友達が競歩もいいよと教えてくれたので、ネットで競歩の基礎を学び、これは腕の運動にちょうどいい。
汗をかいたらお風呂に入る。日本のホテルはアニメティ完備だし、湯船にどっぷり浸かれるのがいい。あ、携帯を風呂場に持ち込むのを忘れてはいけなかった。

それにしても食事が悲しい。美しいが量が足りない。特にタンパク質。

これが二日目の夕食。肉の塊が食べたい。

9つの枠のうち3つがご飯、それと春雨サラダ、かぼちゃの煮物とおでん。牛肉のスタミナ焼きというけれど、この量ではスタミナ出ない。シーフードとポテトのトマト煮。。。ほとんど澱粉と野菜。うずらの卵に救われた。

ご飯3種にスパゲティにポテトサラダで、タンパク質の塊は一口で食べ終えた魚だけ。ポークカツの卵とじと書いてあったけれど、イメージしたポークカツとは異なるものだった。
魚の缶詰を持ってくるべきだった。
一般的な日本人はこの量で足りているのかしら。私が大食いなだけ?

美しいけれど、冷たい弁当が続くと悲しくなる。ご飯の塊にお箸を立てて持ち上げたら、そのままの形で持ち上がった。風呂のお湯で弁当を温めたという人がいたので真似したけれど、30分以上待たないとダメみたいで待ちきれず、夕食にしかつかない味噌汁やワカメスープにご飯をつっこんで食べた。電気ケトルがあったのはありがたい。これで少しは暖かい弁当になった。

メンタル頑張っても、体力が落ちていく感じがする。いや、これをダイエットと呼べば良いのかもしれない。

外を眺める。美しい眺めは感動的だ。毎日眺めても飽きない。あ、汽車道の袂の青いネオンの隣りは桜木町駅だ。Googleマップで確認したぞ。そうだ、駅の構内に崎陽軒の売店があるのを思い出した。う~焼売が食べたい。しかし外出禁止だ。配達を頼もうと思ったら、ナマモノはホテル側が受け取りを拒否するそうなので無理ということがわかった。悔しい。吊られた餌を眺めるだけの自分が悲しい。ばかやろー、コロナ!目は自然と桜木町駅に行ってしまう。シュウマイ、しゅうまい、焼売…(涙)
せっかくだから晴れて退所となったら崎陽軒の焼売をお土産にするのも良いかも。あ、だめか。ホテルから貸切バスで羽田空港に戻されるのだった。

朝食にパンが出たのはありがたいが、卵とハムやウインナー、コロッケをどうやって甘いロールパンと一緒に食べたら良いのかわからない。クロワッサンはフランスの代表的な朝食のパンだが、こんなにパサパサのパンはクロワッサンとは言わない。これがフランス版のクロワッサンだと思われたら困る。知り合いのパン屋のおじさんが85%がバターだと言っていた。いや、これは健康志向で、コレステロールを抑えるための特殊クロワッサンという気配りなのかもしれない。

いやあこれは驚いた。日本のサービス精神に感動。手を汚さずにマーガリンとジャムが出てくるのだ。すごいなあ。フランス人に是非見せてやりたい。こんな便利なものを見たこともないし、フランス人は想像もしないだろうなあ。

関西の某ホテルでは、栄養たっぷりの暖かい食事が出てきたと聞いた。しかも部屋はダブルで広々していて、気持ち良く過ごせたと。悔しい。
いやいや、上と比較してネガティブになってはいけない。下には下がいる。もっと辛い思いをしている人もいる。私よりもっと極悪の環境で生活している人もいる。ここには屋根もあるしお風呂もある。ネット環境もいいし、景色は最高!アフリカでは毎日多くの人が飢餓で死んでいることを考えれば、ここは極楽だ。6日間の食事代が浮いたではないか!
泊まったこともないような高級ビジネスホテルに宿泊をさせてもらっているだけありがたいと思え、だ。ある国に旅行して、空港到着後に有無を言わさずに4つ星ホテルに強制隔離され、家族三人14日分の宿泊代と食事代を全て自費で40万円払ったという人がいたと友達が言っていた。なんのためのバカンスだったかわからないと泣いていたそうな。それに比べれば、日本政府の措置は好意的だ。たとえ真っ白なご飯にカップラーメンという澱粉質ばかりの食事が出てきたり、コンビニの冷たい弁当だったとしても。内容はともあれ、見た目の美しい弁当を喜ぶべきだろう。和食、中華、洋食と毎回趣向を凝らしてくれている。厨房の皆様、ありがとう。
そして、10日間の隔離が6日間に短縮され、しかもホテル滞在中に自宅待機期間も短くなったことを喜ぶべきだろう。以前は14日間の拘束だったから、短期の一時帰国者にはきつかった。措置緩和を日本政府に感謝するべきなのだ。

アパの社長、帰国民を受け入れてくれてありがとう。ホテルの水は飲めるのに、わざわざペットボトルを用意してくれたので、集めてみました。記念に持って帰って宣伝させていただきます。

この6日間で学んだこと。

・上と見比べてはいけない。下と見比べて、自分がどれだけ恵まれているかを知ろう。自分より条件の良い人と比べるから、悔しい思いをするし、これが妬み恨みになる。

・全ては挑戦。最悪の条件の中で、いかに可能性を見つけるか。そしてその状況を受け入れていかに楽しむか。人生はサバイバル、挑戦あるのみ!!

鍛えられました。おかげでたくさんの新たな経験ができました。生まれて初めてハイヤーに自費で乗りました。美しい夜景と綺麗な富士山も見れました。ありがとう。
でも一言言いたい。この1週間を返せ~!
3週間の日本滞在のうち、1週間を取られたのは、まじできつかったです。それなら帰るな!と言われるかもしれないけれど、この時期に帰らなくてはならない理由がある人もいるということを理解していただきたいです…

今月の感動

毎日外を眺めていたのに富士山は見えなかった。それが、最終日の夕方に突然姿を現したのです。しかも、日が暮れるとともに雲が切れてくっきりと!
部屋の位置もラッキーだった。隣の高層ビルの影になって見えない部屋もたくさんあったと思う。あ~もう感動!

今月のショック

1月18日
俳優のギャスパー・ウリエルさんが1月18日にスキー事故で亡くなった。37歳。将来を期待されていた俳優だけに惜しまれる。もしヘルメットをつけていたら。。。。
映画「サンローラン」では素敵だったなあ。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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