ダンスの動画・コラム・コンクール情報専門サイト

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオ。
HOME > ニュース & コラム > 山田マミのやっぱり、パリが好き 2022年6月

News & Column
ニュース & コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2022年6月

シーズン最終月は色々あるよ~

シーズン最後となると、おいしい公演が目白押しだし、フェスティバルも始まる。
今月はいくつかのサプライズがあった。

まずは、振り付けコンクールのダンスエラルジーで大森瑶子さんの「HELP」が第2位と技術賞のダブル受賞!

気になる1位は、3月に見ていいなと思ったレイラ・カさん。今後が楽しみ。

もう一つのサプライズは、パリ・オペラ座の舞踊芸術監督のオーレリー・デュポンさんが辞任を発表。

突然のことに色々な憶測が飛び交っているけれど、本人は50歳になったら辞めると昔から言っていたと。で、次の芸術監督はまだ決まっていないとか。

オペラ座では、ステファン・ビュリヨンさんがアデューでした。

内面の表現に深みを増して素敵だったのに、もう見られなくなるのかと思うと寂しい。

さてさて、パリのダンスは?

新しいディレクターになって、パリ公演も多くなったマルセイユバレエ団。めっちゃ元気です。
これは5つのレパートリーの小品集「ルームメイト」。 カルダン劇場の舞台は小さいので、ダンサーが飛び出しそうな迫力に押されっぱなしだった。

フェスティバルも盛り上がってますよ~
パリのヴァンセンヌの森の中にある国立振り付け拡張センターのアトリエ・ド・パリ主催のフェスティバル・ジュン・イヴェンツJune Eventsが始まった。

爆笑だったのがクレダ&プチピエールの「Poufs aux sentiments」
ルイ王朝時代のヴェルサイユ宮殿での生活をパロった作品で、人間垣根の苦労には爆笑。貴族を満足させるために雇われた垣根役の二人。散歩中には垣根になり、植木のオブジェになり、小道のアーチになり、小川を渡る橋になる。王と王妃の動きを予測して移動しては形を作る職業は大変だなあと同情しながらも爆笑。
振付家は、まちなか海水浴の作品で話題を呼んだ二人。また次も期待しちゃおう。

インパクトが強かったのが、ベルギーの振付家アン・ヴァン・デン・ブロエクさんの「ジョイ・エンジョイ・ジョイ」。
当たり前の日常の環境は人間をロボット化させるのか?
人前では感情を見せなくても、画像を通してなら自分を曝け出せる現代人を描き、日常の仕草をベースにした動きで綴るダンスと芝居、そしてビデオカメラでの実況映像や、ハロゲンとLEDの強い光で次々と形状を変えていくオブジェとともに語られる演出がめちゃ面白い。

その他で印象に残ったのは、ピエール・ポンヴィアンヌさんの作品。

メディアを使わず、純粋なダンスの動きが効果音やシンプルな美術で作品を語る。その演出が素晴らしく、これからのダンス界をひっぱっていく振付家の一人になると思う。
ちなみにポンヴィアンヌさんは1999年ローザンヌ国際コンクールでプロ研修賞を受賞してNDT2で踊っていた人。

アメリカ人のダニエル・ラインハンさんも面白くなってきた。
これからの時代を担う振付家を見たければ、ジュン・イヴェンツへ!

公演が終わる頃には夜の帷がすっかり降りて、カルトゥシュリーの看板がヴァンセンヌの森に浮かび上がる。無料送迎バスでメトロの駅まで行ってね。夜の森を歩くのはちょっと危険だと思う

今年もやっぱりモンペリエダンスゥ~

毎年6月から7月にかけて行われるフェスティバル・モンペリエダンス。一人のディレクターが42年間も仕切っているから独裁フェスティバルと陰口を叩かれているけれど、全てを知り尽くしたディレクターのチョイスはさすが!

バットシェバ舞踊団の「2019」には圧倒された。2000席の大ホールの舞台上に細長い舞台と客席という構図。中央の舞台の両脇に125席ずつ。つまり、たったの250人しか見られないのだ。ファッションショーを見るような感覚の舞台で、ダンサーは右から左、そして左から右へと流れていく。これはナハリンさんのお父様に捧げられた作品で、多種多様な音楽とともに日常の光景が細長い舞台の上を走馬灯のように流れていく。サブタイトルは「振り付けのない物語」。

総観客動員数は3500人! は?1回の公演に250人しか入れないのに?なんで?

それは、1日2回公演を8日間続けたから~

振付家のオハッド・ナハリンさんもすごいけれど、16回の連続公演を踊り切ったダンサーたちもすごい!75分、ほぼ踊りっぱなしですよ。

ダンサーの一人がコロナに感染して出られなくなると、ナハリンさんが即刻で構成を変えて、何事もなかったかのように毎日上演していたという裏話も。

私にとってのサプライズは、山崎ハコさんの歌が2回も流れたこと。このカバーバージョンは、通常の2倍のゆったりテンポで、男の声が大きく震えるから、寂しげな歌がさらにおどろおどろしく聞こえてしまう。フランス人にはこの感覚、わからないだろうなあ。

ところで、この曲をどうやって見つけたのだろう。

装置も装飾もない狭い舞台で、これだけのものを見せるナハリンさんってやっぱりすごい

感動を胸に舞台を降りれば、目の前には真っ暗な2000席の会場。でかい!でも、これじゃあ採算取れないから、小さい劇場を使えばよかったのに、というのはナンセンス。わざわざ大劇場の舞台だけを使ったところに意味がある。なんと大胆な。

本拠地アゴラの中にある屋外劇場

ここではモンペリエダンスの創始者の故ドミニク・バグウェイさんの作品が、パリ国立高等音楽・舞踊学校の生徒たちによって再現された。こうして作品が引き継がれていくのは良いことだと思う。

あら、レペットの超有名な靴「ZIZI」を履いているダンサーがいる。セルジュ・ゲンスブールがZIZIの白しか履かなかったことで当時大ブレイクしたことを思い出して、懐かし〜

無料で参加できるワークショップは大人気

これはクルベルグバレエ団のアソシエート振付家のジェフタ・ファン・ディンザーさんのワークショップ。ファーブル美術館前の広場にて

こちらはモンペリエダンス本拠地アゴラの庭でミュリエル・ピケさんによるワークショップ。朝10時から踊れば、今日も1日元気に過ごせそうだ。

モンペリエダンスの朝のコンファレンスは誰でも参加できますよ~
最終日のコンファレンスはディレクター直々とあって、会場は満席。

ディレクターの右腕として40年貢献したジゼルさんは今年で引退。
来年の抱負を聞かれたディレクターは、「ジゼルが戻ってくること~!」と叫んだ。
彼女の代わりになる人を見つけるのか、それとも一人で頑張るのか。来年が楽しみになる。

フェスティバル・モンペリエダンスは、ちょうどソルドの時期なのだ。
今年の流行りの色はグリーンらしい。

でも、やっぱり南は明るい色が似合う

南仏での食事はやっぱりテラスでしょ。

公園の広場では偶発的に始まったフォークロワダンスで盛り上がってる。
どの地方のものだろう。バスク地方かノルマンディとかブルターニュかなあ。誰でも参加できるし、お咎めもないのがいい。

モンペリエからちょっと小旅行

やっぱり海でしょ

6月末ならまだ人は少ないから気持ち良い~

ここはパラヴァスというビーチ。市内からトラムとバスで行けるのは旅行者にとってありがたい。そしてこの白浜のビーチが延々と続くのだ。

ビーチ沿いにはどんどんリゾートマンションが立ち並ぶ。これも今年から入居が始まった。
でも味気ないなあ。ビアリッツやロワイヤンのようなお屋敷ではないところを見ると、ここはポピュラーなビーチなのだ。

モンペリエから少し内陸に入ったところにあるPont du Diable悪魔の橋。「悪魔の橋」と呼ばれるところはフランスに何ヶ所もあるけれど、ここがロマネスク建築の橋では最も古いものだって。
https://www.herault-tourisme.com/fr/decouvrir/culture-et-patrimoine/le-pont-du-diable/

ボートにも乗れるし、

泳げる!暑さしのぎには最高だよ~

この渓谷にはたくさんの橋がかかっている
アクセスは、モンペリエからバスで42分、タクシーでは30分。自家用車の場合は無料駐車場完備なので、時間を気にせずに遊べるのがいい。
モダンなデザインの観光案内所の建物には、レストランやショップ、もちろんトイレは綺麗で無料。

さて、ここに来たらもう少し足を伸ばしてさん・ギレム・ル・デゼールSaint-Guilhem-le-Désertへ行ってみよう。大丈夫、無料送迎バスが出ているのよ~
環境保護のためにここには自家用車では行けないので、観光客は無料バスに乗るしか方法はない。
一駅目の「クラムスの洞窟」には鍾乳洞があるそうだ。今回は時間がなくてパスして、終点のサン・ギレム・ル・デゼールへ。2駅しかない観光ルート。

バスを降りてから登り坂を歩くと、

見えてきた~、古ーい家並みが

坂の多いくねくねとした狭い道を歩いて街を一周。あっという間に終わってしまう小さな村だけれど、憩うなあ
https://www.saintguilhem-valleeherault.fr

モンペリエには毎年きているけれど、ダンスフェスティバルとビーチしか知らなかった。近郊にはたくさんの見どころがあるのね。
そうそう、このエロー地方(Hélault)の白ワインは美味しいのでお勧め。もちろん出来栄えは気候とワイナリーによるけれどね。

パリのお散歩

今日もエッフェル塔は元気です。

あら?エッフェル塔の4本の足の間に見慣れない造形物。よく見ると階段がある。その先のシャン・ド・マルス公園には巨大なテント。何かイベントをやっているのかな

マドレーヌ寺院の外壁工事の目隠しは、ルイヴィトンの広告!

パリのシャトレ界隈、リヴォリ通りのアーティスト村は賑やかな飾り付けで、ウクライナを応援

ケンゾーのブティック インパクトあるなあ

今月の😢

マスタードは相変わらず買えないままだけれど、サラダオイルは少し戻ってきた。
「一家に、1日一本のみ。モラルを守ってください」

ガソリンはどんどん値上がりしている…

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
TOPへ