News & Column
ニュース & コラム
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
2022年7月
今年もやっぱりアビニヨン!
35度を涼しいと感じる今日この頃。たとえ体温以上の熱風でも、風がある~!と歓喜の声が上がる。吹く風があるだけましなのだ。今年も暑い、熱いアビニヨンのフェスティバルだった。
到着した日もその翌日も、きな臭い匂いが町中に漂っている。屋外の舞台はあっという間に白くなる。どこかで大規模バーベキューをしているのかな?と呑気に考えていたら、とんでもない。近隣で山火事があったのだ。しかも立て続けに2箇所で。
ゴーという音に空を見上げれば、消化活動にあたるカナデールの黄色い飛行機がひっきりなしに飛んでいく。飛行機がこんなに大きく見えるということは、すぐ近くの火事なわけで、火の粉が飛んで来るかものマジでヤバい状況なのだ。
どうしよう…、いやいや、カナデールが消化活動をしているから大丈夫。頑張ってくださ~いと心の中で叫び、劇場に入る。
今年はコロナ禍以前のように、マスク無しで街を歩けるようになって、アビニヨンフェスティバルらしい雰囲気が戻ってきた感じ。
もちろん劇場もマスク着用の義務はない。
コロナウイルスはまだウヨウヨしているけれど、マスクをつけている人はほとんどいない。大丈夫かなあと思いながらも、暑くてマスクなんぞ付けてられまっせ~ん
アビニヨン城内はインとオフが入り混じっていて、初心者にはややこしいかも。
町中に貼られたポスターはオフ公演で、会場もあちこちに。この時だけ店舗や民家を改造した劇場があって、フェスティバル以外の時期はどうなっているのだろうかといつも思う。
インの劇場の目印は、赤い旗
インの本拠地は国鉄駅(TGV駅ではない)から法王庁に向かってまっすぐに伸びるリパブリック通りに入ってすぐの左側にある。
ここではアーティストとのトークや、
チケット売買の掲示板もあるので、ぜひ立ち寄ってみよう。
チケット売りが多い公演は評判がイマイチなことが多いので、これを見ていくか行かないかを決める人もいる。
入り口で荷物検査があるけれど、サクッと見るだけなので怖がらずにね
インは開場時に鳥がピーピー鳴いてファンファーレが鳴り響いて、これを聞くと「ああ、アヴィニヨンにいるのだなあ」と実感するのだ。
それが今年はポップな新バージョンが流れた
アビニヨン・インもリニューアル。
あまりにもポップで吹き出す人もいて、このロックバージョンが受け入れられるかどうか、来年を楽しみにしよう。
フェスティバルOFFの情報をゲットするなら、オフ村へ!
今年は場所が変わって長~いリパブリック通りの真ん中あたりから左に入ったところの学校に移転していた。知らずに元の場所に行ってしまって慌てた。情報はネットでこまめにゲットするべしなのだった。
ここで公演案内の分厚い本と劇場マップをゲットすれば、準備万端!
さて、インで観たのは、
ヤン・マルテンスの「フューチャー・プロッシュ/近未来」。
ダンスでは唯一法王庁の中庭での上演ということもあって、大いに期待したのだけれど、う~ん、去年の作品の方が好きだったな。
https://festival-avignon.com/fr/audiovisuel/futur-proche-jan-martens-extraits-228468
ハープシコードでの現代音楽をバックに、エコロな衣装のダンサーが数グループに分かれて、一連の動きを繰り返しながら動きも構成も変わっていくのはなかなか面白かったけれど、後半のビデオと、特に水浴びが長くて飽きてしまった。
法王庁の中庭舞台
麿赤兒との共演で話題のフランソワ・シェニョーは、レ・クリ・ド・パリというジョフロワ・ジュルダン率いる声楽アンサンブルに振り付けした「テュミュルス」。
ダンスを期待すると外れるけれど、歌手の演技とアカペラの歌声には魅了された。
カーテンコールでは愛犬と共に舞台に上がって、好き勝手に振る舞う犬が笑いを誘う。シェニョーらしいなあ。
ヴィア・カトルホンは、マルコ・ダ・シルバ・フェレイアとアマラ・ディアノールに振り付けを依頼してのダブルビル。
マルコ・ダ・シルバ・フェレイアは「form Informs」
https://festival-avignon.com/fr/audiovisuel/via-injabulo-form-informs-marco-da-silva-ferreira-extraits-221509
アマラ・ディアノールは「Emaphakathini」
https://festival-avignon.com/fr/audiovisuel/via-injabulo-emaphakatini-amala-dianor-extraits-220989
私はディアノールの作品の方が好きだったけれど、友達はフェレイアの方が良かったと。人それぞれなのね。
モー・ル・プラデックの「サイレント・レカ゛シー」。
8才の女の子のクランプがすごいという触れ込みだったけれど、う~ん、もっとすごい8歳はいるんじゃないかな。
https://festival-avignon.com/fr/audiovisuel/silent-legacy-maud-le-pladec-et-jr-maddripp-extraits-228469
心に染みたのが、アリ・シャルールの「Lr temps ou ma mere racontait/母が語った時」。
息子を失った母の悲しみがじわじわと押し寄せてくる。泣き言ばかりの話はあまり好みではないのだけれど、淡々と状況を語るだけのシャルールの演出がいい。
これまでにも何度かアビニヨン・インで作品を上演していて、そのほとんどが身近で起こったことを題材にしているから現実味がある。そしてそこには生と死と愛があることをいつも感じる。
https://festival-avignon.com/fr/audiovisuel/du-temps-ou-ma-mere-racontait-ali-chahrour-extraits-228474
ダンスのジャンルなのに踊りの場面がほとんどなく、歌と語りがメインだったので、友達は大いにがっかりしていたけれど、これが彼の作品のスタイル。一つの作品としてみれば非常に良く出きているので、踊りを期待しないでに見にいけば、ジーンとくるものを感じるはず。
二人のアーティストが初めましてと出会ってから作るヴィヴ・ル・スジェは、いつも通りサン・ジョセフ高校のマリア像のある中庭で。座席数が少ないので、すぐに完売になってしまうけれど、ウエイティングリストで粘れば大抵は入れる。
今年は演劇作品が良かったかな。言葉はわからなくても伝わるものはある。
ググッと来たのが、タマラ・アル・サーディの「Partie/パルティ」、第一次世界大戦に徴兵されて前線に送られ、脱走した罰として銃殺された若い兵士の物語。語りと文字と、生演奏の効果音が見事に融合していた。
「春になったわ。あなたのところにももうすぐ春が来るわね」
母からの最後の手紙に心が打たれた。おりしもウクライナ戦争真っ只中。人が人を殺す。時には味方に銃を向ける…
https://www.theatre-contemporain.net/video/Partie-Tamara-Al-Saadi-Extraits-76e-Festival-d-Avignon
観客全員の朗読が三重奏となって響き渡る演出が気に入った。
ベルナルド・モンテとヴァンサン・デュポンの「 Silex et Craie」
おじさん二人の奇妙なデュエットだった。
https://www.theatre-contemporain.net/video/Silex-et-craie-Vincent-Dupont-Extraits-76e-Festival-d-Avignon
演劇の「Ladilom」も好きだったなぁ
ポーランド語はさっぱりわからないけれど、声が素敵だった。そしてそれがやがてフランス語になって、子供の頃に歌った歌が実はポーランド語の歌詞で、家族にポーランド人はいないのになんでポーランド語なのだろうと、そのルーツを探る会話に引き込まれた。
歌と言葉と音楽と。とても心地の良い時間だった。
https://www.theatre-contemporain.net/video/Ladilom-Tunde-Deak-Extraits-76e-Festival-d-Avignon
オフは今年も例年以上の1500の公演があって、いくらダンスが演劇に比べて少ないとはいえ、全部を見ることは不可能。暑いし。
そうそう、この暑さのせいなのか、近くの森の火災が原因なのか、公演の途中で停電になったのには驚いた。
突然プシューン、ムニュという音と共に舞台の照明と音楽がアウト。
あ?ど~した?
クーラーももちろん切れて、あっという間に会場なムンムンの暑さ。あら~と観客がざわめき始めた。が、舞台の二人は何事もなかったように真っ暗闇の中で演技を続けている。
それに気がついて会場は静まり返った。非常灯の灯りの中にうっすらと見える二人を目を凝らして見る。緊急事態にもおじけずに演技を続ける出演者に、会場は静まり返り、ものすごい緊張感、というか皆の意識が舞台に集中しているのがビシバシ感じられる。
30分くらい経った頃かな、電気が回復して舞台に明かりが戻った。ほっとするとともに、しばらくすると音楽も戻ってきて無事終了。あの暗がりの中でのアクロバットは大変だったろうなあと、作品も良かったけれど、何事もなかったように演技を続けたダンサーに拍手喝采。
これは、台湾のSun Cheng-Hsueh演出振り付けの「デュオ/彼と彼女」
公演後はたくさんの観客に囲まれていた。
公演後すぐに出演者に会えるというのもアビニヨン・オフならでは!
この公演が行われたコンディション・デ・ソワでのハン・ダンスの「See You」も良かったし、
TAI GU Tales Dance Theaterの「バック・オブ・ビヨンド」も素晴らしかった。
毎年台湾から4団体がここで上演していて、毎回すっご~と思う私なのでした。
台湾のレベル高し!
では、印象に残った作品をいくつか。
パリ・オペラ座のエトワールで、その後マルセイユ国立バレエ団のディレクターだったマリー=クロード・ピエトラガラの作品をアビニヨン・オフで見られるとは!
作品は、ジュリアン・ドルオー振り付け、ピエトラガラ演出の「綿畑の孤独の中で」。
残念ながら彼女は踊らないけれど、ドルオーが素晴らしく、照明も効果的で見応えありました。
オーストラリアから初参加のアクロバットダンスのカンパニー・シルカ(CIRCA)の「What will have been」は、まさに手に汗握る白熱のアクロバット。
クーラーをガンガンに効かせても、満席の会場は熱気でムンムン。そんな中でのアクロバットの連続で、こっちも暑いが演じる方も汗が光っていて、汗で手が滑って怪我をするのではないかと、ハラハラしながらおお!と驚き、すっごーと、飛び交う体に目を見張る。
オーストラリアは南半球だから今は冬のはず。そこから酷暑のアビニヨンに来て、しかもこんなに動きの激しい作品を3週間するのはさぞかし大変だろうなあと、感動と感心で、もちろんスタンディングオベーション!
アクロバットの中にポエムがあって、バイオリン奏者の音色も素敵だった。
カンパニー・シルカの公演が行われたルシオール劇場はいつも長蛇の列。人気の会場なのだ。演劇がメインだけれど、ダンスやサーカスももちろんあって、セレクションがなかなか良い。
ゴロヴィン劇場はダンス専門。
カンパニー・エスヴェスの「ラ・コメディア・ディヴィナ」に出演した大島紗希子さん。
存在感ありました!
振り付け拡張センターのイヴェルナル。朝10時から夜9時までダンス公演オンパレード。
朝一番、10時の公演はアナ・ペレーズの「RE?PERCUSSIONS」。フラメンコもコンテンポラリーが面白くなってきている。
午後3時からのアンヌ・ニュエンの「アンダードグス」は良かったなあ。振り付けもダンサー良くて、見ている方までノリノリになる。特に女性ダンサーが素晴らしかった。
バトー・ナシム振り付けの「DIVIDUS」。エネルギーがビシバシ伝わって来ました。
朝10時から始まる公演を見るというのはアビニヨンならでは。踊る方も大変だとつくづく思う。
ここパランテーズは、サン・ドニ県のルイ・アラゴン劇場でレジデンスしている振付家の作品が見られるとあって、毎回満席。
小さな屋外劇場だけれど、舞台とこれだけ近いとダンサーのエネルギーも、観客の感動も直で伝わる。
最後は出演した3組のカンパニーメンバー全員揃ってのカーテンコール。踊り切った喜びが満ち溢れている。
毒蜘蛛のタランチュラに噛まれたら、毒を抜くために踊り続けなくてはならないという伝説を題材にした「サルティ」。親友が目の前で刺されたらどうする?
人間関係を絡めながら、毒を抜くために友達を踊り続けさせて無事回復。
踊りは百薬の長!というメッセージに、ガッテン!
個性的なダンステアトルを作り続けているロザー・モントロ・グベルナとブリジット・セスの作品は、マニュファクチュールにて
これはマニュファクチュールの中庭。雰囲気がいい。
マリオネットを使ったヒップホップの「ALMATAHA」とドニ・プラサールの「On ne parle pas avec les moufles」もすごく良かった。
「ALMATAHA」は人形とヒップホップのコラボで、3人の男が小さな人形を操る姿にカワイイ~、すると今度はサクサクとヒップホップを踊り始めた。わ~人形も一緒に踊ってるぅ!ヒップホップを踊る操り人形を初めて見た。
あら、装置のほとんどが紙じゃん。エコロジーな演出がいいね!
朝起きたらいつものものがない!それを求めて旅に出た少年の旅物語で、場面転換に使われた紙の幕は岩肌にもなり、ただの四角い箱は山や谷となって過酷な旅を演出する。紙でできた怪物のツノは三日月にもなって、旅に疲れた少年の今夜のベッドは月なのだ。メルヘ~ン!
旅から戻った翌朝、あら?なくなっていたものがある。ということは夢を見ていたのかな?と首を傾げる少年を、牛のお面をつけた指のダンスがクククと笑う。夢じゃないよ。
これはブライム・ブシュラゲムBrahim Bouchelaghemの作品。昔見た作品は好きではなかったけれど、これはめちゃ気に入った。踊るだけでなく、人形使いもスキルして、芸を深めているんだなあ。
ドニ・プラサールのOn ne parle pas avec les mouflesは、喋りまくるプラサールと聾唖者のアントニーの掛け合いが最高。聞こえずしゃべれないアントニーなのに、阿吽の呼吸でプラサールとやり合う。本当は聞こえてるんじゃないの?と最後まで疑って見ていたけれど、本当の障害者なのだった。プラサールは最後に「嘘だと思ったら次回は手話のできる人と見てください。そうすればアントニーが何を言っているのかわかりますよ」と。
クレモン・ペラッシュとカロリーヌ・メイダの「DEUX RIEN」も好きだった。言葉のない演劇作品で、二人の路上生活者の日常にほっこり。朝10時開演なのに満席という人気作品。
中心地から6キロ離れたキャンプ場から自転車で通う私には、休憩所が必要。弁当にトイレ。そして昼寝ができる静かな場所。
いくつかのお気に入りの公園もあるけれど、今年お世話になったのはヌーヴォー・グルニエ会場だった。学校を借り切って、ロワール地方のアーティストを紹介している。もちろんダンスもある。
小学校なのかな、トイレはたくさんあるし、カフェもある。今年はセンターの広場が憩いの場になっていて、リクライニングチェアがたくさん置いてあったから、ここで一休み。
ここで若手ダンサーの無料公演があった。
イケメンのお兄さんの自転車タクシーはいかが~?
アビニヨンの城内は自転車移動がベスト。疲れたら自転車タクシーという手もある。
循環の乗り合い小型電気バスは、通りかかったら手を上げれば止まってくれるし、降りたいところで降りられる。ルートは決まっているのでいつか乗ってみたいと思うのだけれど、音もなく走る電気自動車に気づかず、私の横をサーっと走り去っていくから、いまだに乗れた試しがない。
ゴミ収集も自転車隊。エコロで良いけれど、暑いから大変だろうなあ
毎週土曜日には市が立つカルノ通り。法王庁から少し東側に行ったところです。
南仏らしいグッズに思わず財布を出してしまう。
何故かツルもいる
私は野菜と果物を買って栄養補給。
暑い。熱風でも良いから風が吹いてほしい。
こんな時、カフェのテントから吹き出すミストはありがたい。
あ、寿司のデリバリー。でもなんで日本からペルーなのだろう
パリにも、モンペリエにもいないけれど、アビニヨンには蝉がいる。
気温38度、体感温度39度
だけど夜は結構冷える。南仏は暑いというイメージだけれど、夜はかなり涼しくなるので、羽織るものを持ってくるべし。
では、アビニヨンの街の様子をつらつらと
やっぱり訪れたいのは法王庁前広場
パフォーマーを見るのも良いけれど、芸術的な建築物がたくさん残っているから、路上観察も面白いよ!
路上宣伝を見るだけでも楽しい
カメラを向けたらポーズをしてくれた演劇集団。
が、、、
「写真撮らせてあげたんだから見に来るんでしょ!え~?見にこれないの?」
と絡まれちゃいました(笑)
めっちゃ楽しい人たちで、私は腹を抱えて笑うしかできず。
公演を見に行けなかったのが本当に残念!
眠らない街アビニヨン。夜遅くまでこんな状態
ところが、
同じ場所なのにこ~んなこともある。
誰もいないメインストリートのリパブリック通り。
7月17日午後1時23分。この時間帯は暑すぎるってことだと思う。
クーラーの効いた会場に入るか、カフェでゆっくり休むのが、暑~い1日を乗り切るコツなのだ。
熱中症は日本だけではありませんよ!
今月の盛り上がり
恒例のツールドフランス。フランス人って本当に自転車好きなのね~
今年も過酷な自転車レースに盛り上がりました
近くを通るとなれば、おらが町のPRにも熱が入る
私は競技より観光に興味があるからテレビ中継を見る。フランスには見どころがいっぱいあるのね~
今年もNTTはスポンサー