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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2022年9月

秋~、新学期~、シーズン開幕~

あっという間に日が短くなって、夜8時半はもう暗い。7月は夜10時くらいまで明るかったのになあ。1日3分の速さで日が短くなっている。薄暗くて寒い冬に向かっているのかと思うと、気持ちが暗くなる。

でも、秋にはいろいろな楽しみがある。グルメには嬉しい季節だ。

ツレがきのこをとってきた~。市場でも色々な種類が並んでる。山で採れたキノコは風味が濃くて美味しいよ~。でも、毒キノコもたくさんあるから気をつけて!昔は薬局で見分けてもらえたのだけれど、今はどうなのかな。

ももクリ3年柿8年というから、拾った栗を植えたけれど、3年経ってもこの大きさ…15センチくらいかなあ
「一体君はいつになったら大きくなって実をつけてくれるの?」

来月はくるみと栗!パリでは思いつかなかったけれど、山好きのツレのおかげで秋の味覚が楽しめる。というか、それが目的でハイキングということも。

でも、食べ物だけではありませんぞ!

9月は新学期だから、朝学校に向かう親子連れを見かける。幼稚園と小学校は保護者付きでの登校・下校が義務付けられている。ルンルンと歩く子供もいれば、幼稚園の前で泣き叫ぶ子もいて、どこも同じだなあと。日本は4月が入学式だけれど、こちらは9月から心機一転。
そして、そして、劇場のシーズンが始まるし、9月中旬には歴史的建造物の公開日もあるなど、イベント盛りだくさんの9月なのです。

イベントとなると必ず登場するのがブラスバンド。
街は開発が進む一方で、緑地帯も増えていて、劇場やプールがある地区は憩いの場所となった。ここでイベントが開かれていたのだ。パフォーマンスに屋台、野菜も売っている。
劇場でも新シーズン前のイベントがあった。

ヤン・マルテンスがリヨン・オペラ座バレエ団のクリスティナ・ベンツに振り付けたソロ「PERIOD PIECE」が素晴らしかった。装置も何もない大舞台にツカツカと出てきて、「ワン!」「ツー」「スリー」などと叫びながら踊る。圧倒的な迫力に飲み込まれた。
https://www.numeridanse.tv/videotheque-danse/period-piece
音楽をきっちりと分析した振り付けがマルテンスらしい。
これはリヨンのオペラ座の「7人の振付家による7人のダンサーの7つのソロ」という企画で創作されたものだ。たった14分、されど14分。見応え十分!

パリ・オペラ座バレエ団の開幕演目は、アラン・ルシエン・オイエンの「Cri de cœur /心の叫び」。

コロナ禍でのびのびになっていたとはいえ、シーズン最初の演目がダンステアトルとは、思い切ったことをしてくれたものだと感心する。チュチュを着たバレエ作品を期待した人には驚きだったかもしれないけれど、私は大絶賛!パリ・オペラ座バレエ団はここまでやるぞ!なのでした。
エトワールは一人も出ず、最高位はプルミエールのマリオン・バルボーだけ。それ以外はスジェとコリフェとカドリーユ。踊って、セリフを言って、演技して。これがめちゃいい。しかも映像と現実を交差させた演出が素晴らしくて、休憩を入れて3時間弱という長さを感じさせなかった。
オイエンって天才!マリオン・バルボーも映画出演の経験がものを言ったと言われているけれど、それは元々彼女に素質があったからなのだと思う。
エトワールがいなくても、これだけのものを見せられますよというオペラ座の自信が満ち溢れた公演だった。これを機にオペラ座のダンサーがダンサーとしてだけでなく、多くの場で活躍する予感。めっちゃ楽しみ~

中央のロングドレスを着ている人が、元ヴッパタール舞踊団のエレナ・ピコン。
その右隣がマリオン・バルボー、そしてタケル・コスト。ピコンの左側がアントニン・モニエ。

パリはやっぱりエキサイティング

自転車族が増えたパリ。盗難も頻発。後輪盗まれてますね

わ!これは前輪も後輪も、サドルもない!可愛い自転車だったのにね~
目立つところに駐輪すれば大丈夫というのは通用しなくなった。やっぱりパリ市の貸し自転車を使うのが一番安全かも。

コロナ禍で流行ったテラスは健在。でもなあ、車と人がバンバン通るところでの食事は落ち着かないなあ。

ちょっと小旅行 ~バスク地方~

バスク地方とは、フランス南西部からスペインにまたがる大西洋岸の地域。
赤と白のイメージで、毎年夏に開催されるバイヨンヌ祭りは、白いシャツに赤いネッカチーフ、腰にも赤い布、というお決まりの服装で参加すべし。この格好をしていかなかった私は、めちゃ浮いてた(恥)

この地方の家の特色も、赤と白。エスプレットという赤唐辛子が有名で、秋に収穫した赤唐辛子を束ねて軒に吊るすお祭りもあって、目がピリピリしそうだけれど、ここの唐辛子はマイルドで美味しい。
とまあ、赤と白の街なのです。

今回はちらりとビアリッツに立ち寄った。

ここにはマランダン・バレエ・ビアリッツの国立振り付けセンターCCNがあって、毎年9月に開催されるダンスフェスティバルTemps d’Aimerを見に。トンデメと発音するけれど、とんでもないわけではありませんぞ。

昼間はビーチ、夜は劇場、これって最高だと思わない?

今夜はカジノの劇場での公演を見に。これが劇場への入り口。
反対側のビーチから見たら、建物の屋上のテラスに集まるセレブを発見。彼らはカジノに行く人たちで、ダンスを見に行く人たちとは明らかに洋装が違う。セレブとの格差を感じざるを得ない瞬間だった。しかし、そんなことを妬んではいけない。金よりアートだ!

これが建物の内部。高級感たっぷり!

今夜の公演は、マルタン・アリアーグ&ビラカ・コレクティボアの「ゲルニカ」。
1937年にスペイン内戦により空爆を受けたバスク地方の史実を題材に、この地方の音楽とダンスをベースにした作品。戦争の悲劇から立ち上がる市民の強さを、ダンサーとミュージシャンがエネルギッシュに盛り上げて、会場は熱気ムンムン。バスク地方はカタルーニャ地方同様、独立派が多いからか、抑圧されても負けずに立ち上がるぞ~という作風は、地元の人の大喝采となった。この盛り上がりはパリでは見られない、貴重な公演を見せてもらいました。

実は、ここに来たのは、気になる振付家のピエール・ポンヴィアンヌ(カンパニーパルク)の公演を見るためでもあったのだ。

演目は「Motif」。あら?新作を期待していたのだけれど、2014年の作品の再演。な~んだとがっかりしたものの、見ているうちに「うわ~」という感動になった。2014年にすでにこんな素敵な作品を作っていたんだ!当時はさほど話題にならなかったように記憶している。つまり、時代を先取りしすぎていたのだと思う。
男女の動き自体には感情はない。しかも短いシーンが暗転で展開していく。淡々と過ぎていく時間。それなのに引き込まれてしまう。不思議な魅力を持った振付家にますます興味が湧いた。

https://dansercanalhistorique.fr/?q=content/motifs-de-pierre-pontvianne
追記;2014年に撮影された動画を発見。当時はポンヴィアンヌ自身が踊ってた。ローザンヌ国際バレエコンクール受賞者だけあって、素敵!

ビアリッツはセレブが集まる高級リゾート地でもあるのだ。

海岸近くは高級住宅街で、お屋敷が続く。

こんなところに泊まって見え張っても財布の底が見えてくるだけなので、アルボンヌというビアリッツからは8キロ、大西洋岸からは6キロほどのところに宿をとった。口コミでは誰もが5点満点をつけるという大評判の宿で、農家らしい。地図を見れば、周りは畑か牧草地帯で、車がなければ食料品を買いにくのも難しそうだ。ちょいと不安。

ここの1階を借りた。もと農家をリニューアルして、めっちゃ気持ちの良い家だった。こんなに心地の良い宿泊施設は久しぶり。丘の上なので視界が広く、大きな窓からは牛や鶏が見えるし、豚の鳴き声も聞こえた。都会人には憩う~~~なのだった。

大家が飼っている牛の生牛乳と鶏の卵を買って、田舎って素敵!生牛乳は美味しかったけれど、かなり濃くてお腹を壊してしまい、トイレを何度も往復する羽目に…
ここにいて牛を見ているだけではつまらないので、海に行こうということになった。
夏はやっぱり海ですよ!

宿泊地から一番近い海、ビダールへ行ったのだが…

かなり遠くから、波が打ちつける音が聞こえる。風は強いわ、波は荒いわ、ちっとやばい?
この辺りは波が荒いので有名だそうで、ここで泳ぐのは明らかに無理~
ということになって、ライフセーバーがいるビーチに行ったけれど、やっぱり波は超パワフル。
膝くらいまで海に浸かるところでも、波が来ればうちのめされてしまう感じで、怖いのなんのって。
サーファーには人気のビーチみたい。

波が穏やかなうちに沖に行けば、クラゲのように浮いていられるけれど、戻るタイミングが悪いと崩れる波に叩きのめされるスリリングな海でした。
ただ、腰に上手く波を当てるとジャグジーになって、マッサージにはちょうどいい。この方法でぎっくり腰を治したことがあります。

ちょっと風変わりな家を発見。何気に傾いているようにも見えるけど…

全ての犬は海が好きなのかと思ったら、波が怖い犬もいることを発見。年老いているからかなあ、飼い主が木の枝を波間に投げるけれど、怖くて行けないよ~と目で訴えている。
私と同じじゃん。

コロナ、コロナ、コロナ~~~

9月7日から日本の入国制限が緩和されて、搭乗72時間前までのPCR検査による陰性証明書の提出が必要なくなった!これでホッとした。PCR検査はややこしい。検査をしてから結果が出るまで2日かかるから、少なくともパリに2日間滞在しなくてはならない。地方在住者の悩みだったけど、これがなくなることで随分楽になった。
けど、外国人の日本入国はまだまだ厳しい。個人旅行はダメで添乗員付きの団体旅行者のみ入国可。これが7日以降は添乗員なしでもOKだけれど、まだ訪日パッケージツアーのみだそう。自由行動ができるらしいけれど、旅行会社を通しての旅行で、ビザが必要とか。島国ニッポンへの入国はややこし~

海外に長く住んでいるのに日本国籍を持っているから入国できて、日本にずっと住んでいるのに日本国籍がなければ再入国できないって、なんか変。

今月の1枚

イギリスの女王エリザベス2世が亡くなった。亡くなる2日前まで仕事をしていたそうで、まさに人生を女王としてまっとうした方でした。冥福を祈ります。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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