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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2023年3月

オニール八菜さんとマルク・モローさんがエトワールに!そして更なる驚きが!

3月2日のバランシンプログラムの「バレエ・アンペリアル」で、オニール八菜さんとマルク・モローさんがエトワールに任命されました!フランス人にも人気のオニールさん。応援してます!

1回の公演で二人がエトワールに任命されることは珍しい。まず、オニールさんが任命されて、自分が任命されると思い込んでいたマルク・モローさんがガックリと肩を落とした直後に、モローさんもエトワールに。

韓国人のセウン・パクさんがすでにエトワールになっていたので、二人目のアジア人エトワールはあり得ないと思っていたので、めちゃ嬉しい~

と喜んでいたら、
3月11日、初の黒人エトワール誕生!

ギヨーム・ディオップさ~~~ん
彼は韓国公演でジゼルのアルブレヒトを踊ってエトワールに。

彼を任命するために、多忙なスケジュールを調整して韓国へ飛んだ新舞踊監督のジョゼ・マルティネズ。彼の下でパリ・オペラ座はどう変わってくのか。楽しみ~~~

パリ・オペラ座は階級制で、他のバレエ団でプリマとして踊っていた人でも、入団後は新人と同じくカドリーユからのスタートで、毎年昇進試験を受けてコリフェ、スジェ、そしてプルミエと上のクラスに登っていくという伝統があって、リュドミラ・パリエロさんも、セウン・パクさんも、オニール八菜さんもそれぞれの国ではソリストだったのに、パリ・オペラ座に入団したら、それまでの経歴は全て消されて一番下のクラスのカドリーユから始めて、毎回試験を受けて上のクラスに昇進して、ようやくプルミエールになって、それからやっとエトワールに任命されるという長い道のりを歩いてきた。
が、ギヨーム・ディオップさんはまだスジェだったのに、プルミエを飛び越してエトワールになったのだ。しかも有色人種。オペラ座初の黒人エトワール。これはすごいことで、素晴らしいことなのだ!
以前からパリ・オペラ座には黒人はいないと言われていたけれど、実は何人もいる。確かに昔はフランス国籍じゃないとダメとか、白人じゃないとダメだったみたいだけれど、実力があってオペラ座の雰囲気に合えば入団可能。そして外国人の入団第一号が藤井美穂さんだったのだ。ヨーロッパ圏外のダンサーを雇うには労働許可証の取得が必要なのだけれど、オペラ座にとっては初めてのことなので手続きがわからず(当時は外国人の労働許可証取得手続きは非常にややこしかった、ネットもないし…)、オペラ座側もかなりあたふたしたらしいという裏話。

今月のダンス~

ブラジル人の振付家リア・ロドリゲスの「Encantado」。
カラフルな一枚の布が、あっという間に形を変えてドレスになる。動いて踊って、一体いつ平らな布をドレスにしているのだろうかと目を凝らしてみたけれど、わからない。まるで手品のよう。しかも体に巻き付けているだけなのに、激しく踊っても着崩れしない。ふわっと脱いだら一枚の布に戻る。有名ブランドのファッションショーより面白い。
村祭りのように踊って騒いでいるだけに見えるけれど、差別や社会情勢などへの風刺が織り込まれていて、さすがロドリゲス!しかも、ダンサーが素晴らしい。膝は曲がって、つま先はだらだらなのに、ある瞬間すごいテクニックがチラリと見える。基礎がきっちりとできているダンサーばかりなのだ。
混沌として、無秩序的な作品の中に生きることの強いメッセージを感じさせる作品を多く作っている振付家で、これまでに見た作品はずしりとくることが多かったのだけれど、こんなに明るく楽しく、それなのに鋭い視線で社会を冷静に見る作品に大きく心を動かされた。直球も良いけれど、変化球で観客を揺さぶっている。
公演後のトークを楽しみにしていたのに、急用ができたとかでブラジルに帰ってしまった。残念。

ここ数年、家族で楽しめる作品が人気だ。3歳以上、5歳以上という作品が多い中、この作品はなんと1歳からOK!
マリオン・ミュザックの「Le Petit B」。
スタジオパフォーマンスで舞台と客席の界がないから、小さな子供たちがダンサーに向かって走り出すことも。でも、全然問題なし。二人のダンサーは踊りながら子供達の様子をしっかり見ているようで、最後の方では奇声を上げ続けている子をクッションに座らせたり、うつ伏せで見ているこの背中にクッションを乗せたり、動き回っている子供達の間にポンとクッションを置いたり。すると子供達はそれに反応するわけで、あちこちでパフォーマンスが始まって面白い。
親は子供が走り回っても怒らない。時々たしなめるだけで好き勝手にさせているから、邪魔になるんじゃないかとハラハラしたけれど、ダンサーは子供たちをうまく制しながら踊り続けている。日本のお母さんだったら「じっとしていなさい!」というのだろうなあ。ここでまた、日仏の文化の違いを実感。

公演後は舞台を解放。広いスペースを走り回り、オブジェに群がる子供たち。ほほえましい~

カンパニーXY、アーティストは舞台で訴える

日本公演でも大評判だったカンパニーXYの「モビウス」。コロナ禍で延期となって、やっと見られるとワクワクしていたら、年金改革反対のストにぶつかった!また中止か?!いやいや、公演やりますよ~
中止するより、舞台から年金改革反対のメッセージを発信する方がベターということなのでしょう。

そして公演後に舞台から訴える。
確かにこんなに激しい動きを64歳まで続けることは不可能だよね。

ブレイキンがオリンピック種目に!

なんと、ダンスがオリンピック種目になるという。
ダンサーが「選手」と呼ばれて競技する。ダンスはスポーツ?ゲイジュツじゃなかったの?
「スケートだって同じじゃん。数字みたいに割り切れないものに点をつけてる」と友達弁。確かに。
新種目が入って、空手が追い出され、友達の息子は泣いていた。オリンピックを目指していたのにね…

今フランスで何が起こってる?

スト、デモ、デモ、でも…

年金受給を62歳から64歳に引き上げる法案が、国会で無投票の強行採択!このゴリ押し採決に国民の怒りが爆発してデモが続いている。特に3月23日のデモは暴動化して、パリでは特にオペラ界隈が大変なことになった。
パリのデモ

そして、パリはゴミだらけになった。

パリのスト

清掃員のストライキ。これはマジで困る。歩道はゴミで埋まり、ネズミがちょろちょろ。

そのせいでイギリスのチャールズ国王夫妻の初の海外旅行先のフランス訪問は延期。
観光客のキャンセルも続いているとの報道。まあ、このような写真や動画を見たら、行く気なくなるよね。

そんな映像をテレビで見て、わが町クレルモン=フェランの人々はなんて穏やかなのだろうかと驚く。
確かにデモはあった。でも暴動はなく、政府機関の建物の前にプラカードを山積みにしただけ。可愛いもんだ。

しかも、ごみ収集はきちんと行われていて街はいつも通りに綺麗だ。

私もデモに参加しました~

ここが集合場所。和気藹々で、友達を見つけてはワイワイやってる

ホットワイン(VIN-CHAUD)の屋台も出ていて、お祭りかと思ってしまう



歩き始めたら、ぺちゃくちゃお喋りと、歌って踊ってで、真剣味に欠ける感じ。
でも、パリの暴動よりはマシ。この街の人たちは本当に穏やかなのだ。

たった2年の延長でしょ、日本ではとっくの昔から65歳よ、と日本の人に言われたけれど、ストレス溜めて、体を壊してまで働きたくないというのがフランス人の言い分。働くために生まれてきたんじゃない、41年間一生懸命働いたら、その後は年金というご褒美をもらって、それまでにできなかった夢を叶えたり、旅に出たり、ボランティアとして社会福祉に奉仕したりして、人生を楽しんで一生を終えるというのがフランス人の一般的な考え方みたい。

コロナもぶっ飛ぶ年金改革。定年退職は64才になり、数年後には67才になると予測されている。今食い止めないと、若者たちが働く意欲を失ってしまうという危機感もあって皆必死。で、高校生もデモをしている。たった2年。されど2年。
これだけデモが続いているのに、政府は知らん顔。「年金改正法案反対!強行採決は民主主義ではない!」という国民の声に、「もう決まったことだ。それ以外の話題はないのか?」と開き直る政府。これまでにも多くの大統領が失敗に終わった年金改革。このままいくと、マクロン大統領の勝ちになりそうだ。

踏ん張りたいけれど、会社休んでデモに参加すると給料減らされるから、だんだん参加する人が少なくなっている。諦めもあるのかも。シューん

日本はかなり前から65才定年。年齢が引き上げられた時、日本人は反対のデモをしたのかなあ。国民性の違い何だろうなあ

あら、そういえば、もう誰もマスクをしていない。コロナなどなかったのように。
劇場で、後ろの席の人がゴボゴボと咳をしていたのでマスクをつけたら、隣の人に「なんでマスクをつけたのですか?」と。
咳はウイルスをばら撒いていることさえ忘れている。
「密の場所ではマスクをしましょう」という政府広告も流れなくなり、その代わりに「がんの検診をしましょう」になった。

ウイズコロナ。自分のことは自分で守らないと。

冬の水不足

雨も雪も降らず、ただ寒いだけの冬。井戸水も湧き水も枯れている。その結果、野菜が高騰している。ロシアとウクライナの戦争のせいでガソリンが値上がりしたことで、畑を耕すトラクターの経費も膨らんで野菜が値上がりしたのに加えて水不足で野菜が育たない。ダブルパンチ。
フランスは農業大国だと思っていたのだけれど、今や国外からの安い輸入野菜に押され、さらにガソリンの値上げに水不足。それに加えて年金受給の年齢が64才になろうとしていて、農家はくたびれ果てて廃業する人も。頑張って家庭菜園をするしか方法はないのかしら?どうなるフランス?

ちょっと小旅行

春スキーはサヴォア地方のグラン・ボルナン(Le Grand Bornand)
3月なのに雪があるのは、それまでに降った雪を溜めておくからだのだとか。
どうやって?
雪を山にように積み上げて、その上に土を被せるのだって。谷間で陽が当たらないから雪はそう簡単に解けないのだと。ふ~ん

バイアスロン初体験!

初心者は5mの目標に向かって撃つ。命中率が良くて得意になっていたら、すかさず指導員に「プロは50m先の点のような的に当てるから、至難の業ですよ」とグサリ。

春を告げる草~ペルス・ネージュ

フランスでは冬が明けて最初に咲く花がこれ、ペルス・ネージュPerce-neige。percerは「穴を開ける」、ネージュは「雪」の意。つまり、雪を突き破って咲く花のこと。雪割草かなと思ったら、日本の雪割草とは違ってた。
春はもうすぐ。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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