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山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、フレンチ生活を山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

2023年6月

フェスティバル・モンペリエダンス

今年も行ってきましたフェスティバル・モンペリエダンス。

真っ青な空と照りつける太陽。南仏に来た~!と実感
本拠地のアゴラの中庭でダンスのワークショップ。参加無料が嬉しい
ワークショップ後に会話する人たちをパチリ。参加していたので、ワークショップ中の写真はありません。かなりの人数がいたのに、終わったらサクッと帰ってしまって、一息ついてカメラを取り出す頃にはほとんど人がいなくなってました。熱いし、お腹すいたし~ってことかな

今年のフェスティバルのテーマの一つが「記憶」。
リバイバル作品は、年月が経つとこう変わるのかと、懐かしさの中に新鮮なものを感じたのでした。

ジャン=クロード・ガロッタ。80年代のフレンチ・ヌーベルバーグの騎手は、昔と変わらず元気いっぱい。

リバイバルの「ユリシーズ」は、なんと42年ぶりの再演!
初演時には生まれていなかったダンサーによる新生「ユリシーズ、グラン・ラージュ」で、モンペリエのアゴラ屋外劇場用に再構築したとのこと。
昔と変わらぬお茶目なキャラクターで踊ったガロッタ。まだまだ活動は続けて、来年には新作を発表すると。元気いっぱい!

ピナ・バウシュの「パレルモ、パレルモ」は、30トンもある石の壁が崩れるという衝撃的な始まりの作品。
ピナから直接指導を受けたことのないダンサーが半分ほど。ピナが亡くなって、もうこんなに時が経ったのか…、思えば今日がピナの命日だった。
あら?パリ・オペラ座のプルミエダンサー、シモン・ル・ボルニュとレティツィア・ガロニがいる!1年間移籍するんだって
笑いと皮肉を込めた風刺に笑ったけれど、大劇場の後ろの方じゃあ、何も伝わらないよ~

ボリス・シャルマッツとディミトリ・シャンブラスのデュエット「A bras-le-corps」。
30年もの間、二人で踊り続けているとは驚き。つまり、17才で初演して、今47才ってこと。何度踊っても飽きが来ないのだとか。
65才でやめるつもりのシャルマッツと、死ぬまで踊るというシャンブラス。さて、この作品はいつまで見られるのかしら

カデル・アトゥの「Symfonia Pieśni Żałosnych」は13年ぶりの再演。新鮮味を感じられなかったのが残念

ミカエル・フェリッポーが2008年から続けているポートレイトシリーズの最新作「バトンガール/Majorettes」は、大受けだった。
なんと平均年齢60歳、最高年齢者74歳、最年少が40歳という地元モンペリエの現役バトンチアーガールグループに振り付けたのだ。
昔はさぞかしすごいテクニックで話題になっただろうなあと思わせる場面もあるけれど、よろけたり、バトンを落としたり、振り付けを忘れたりと、なんとも微笑ましい公演でありました。
途中ポツリと雨の雫が落ちてきたけれど、それも止んで、花火が噴き出すラストに大歓声。熱いカーテンコールが終わった1分後に土砂降りの雨。雨も公演を応援してくれていたんだなあ

私が注目している若手振付家のピエール・ポンヴィアンヌの新作「Oe」。
一連の短いフレーズが少しずつ変化しながら連なっていく。ミニマルダンスではあるけれど、そこに日常のたわいもない感情が見えて素敵だった。

ピナ・バウシュの下で踊っていたアンヌ・マルタンは68才。
再度自分を見つめ直したいと創作した「Unwandlung-Dialogue avec l’Absent」は、ホリゾントを流れる現実と非現実が混ざる絵が印象的で、彼女の歴史と重なる奥行きの深い作品だった。

ダヴィド・ヴァンパクの新作「アルジェリア・アレグリア」
アバンギャルドではちゃめちゃな作風に期待しすぎたのがいけなかった。思った以上にまともだった。いやいや、作品を先入観や思い込みで見てはいけなかったのだ。反省

フェスティバル閉会のトークで、引退を表明したディレクターのモンタナリ氏。ディレクター変われば全てが変わるで、来年はどうないのだろうかと、不安がよぎる。(追記:2025年のフェスティバルまで続投するそうです)

オペラ座コメディ劇場の2階からコメディ広場を眺める。あちこち工事中。

モンペリエの宿泊はHotel des Arts。2つ星。デラックスではないけれど、家族経営のスタッフが親切で、いつもここにしている。
ちょっとレトロなホールがかわいい

クネクネとした細い道があちこちにある旧市街
レトロ感覚がいいなあ

必ず寄ってしまうユニクロ。ゆったりした売り場が気持ちいい

ダンスの合間にちょいと海。プールみたいな静かな海なので、安心、安心

今年の流行は背中が大胆に開いた服。

ちょっと独り言

パリ郊外のナンテールで17際の少年が警官に射殺された事件後、毎晩のように各地で暴動が起こっている。全く関係のない街の市庁舎の建物が壊されたり、市長の自宅内に止めてあった自動車に火炎瓶が投げ込まれたり、集合住宅が放火されたり。そして、これに乗じた盗み。店舗を壊して商品を盗む。店内の商品も倉庫のストックも盗まれて空っぽになった店もあったという。それがあっという間にネットで売られている。
モラルが失われて、犯罪や暴力が日常化している。なんでこんなことになるのだろう。こんなニュースを見るたびにうんざりする。
でも、幸運なことに私が住む街も、フェスティバルで訪れていたモンペリエも穏やかで、兵士の一団が銃を持って街を警備しているのを見かけたけれど、なんの心配もなくフェスティバルとソルドを楽しめた。パリの友達に聞いたら、報道されているような暴動は見なかったと。場所によるのね。

山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!
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