.shtml> コラム:ダンスレビューVol.5:ダンス・舞踊専門サイト(VIDEO Co.)


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ニュース・コラム

舞踊評論家・日下四郎氏の連載コラム「ダンスレビュー」

ダンスレビュー

 
うらわまこと [2005.2.17]
 2005年都民芸術フェスティバル参加、現代舞踊公演。参加主体は(社)現代舞踊協会で2日間に4回、協会員の作品が上演された。全体は3部に分かれ、最初と最後は30~40分の中堅の作品、そして中間部には若手3人の10~15分の小品、うち2作は同一振付者の異なる作品2種類が回毎に入れ替わるので、全部で7作が上演されている。
 まず、波場千恵子『白い犬~愛のメルヘン~』。妻を亡くした車椅子の男(日比野やすたか)に、家族の知人たちが弔問にくる。なかなかドラマティックな出だしである。男は妻(島田明美)の墓前で白い犬の幻(小松あすか)を見る。幸せな結婚式の回想、ここでは賑やかな踊りの波。それが壊れて孤独にさいなまれる場ではCGの映像が迫る。そして男は再び白い犬(妻の幻影か)に出会う。力のあるダンサーたち、明確な場の設定で芝居と踊りの組み合わせが物語を伝える。
 第2部は新鋭女性の作品。まず塩入量子の『INTERSPACE』。男装の麗人風の黒いスーツでの塩入たえことのデュオ。上からのスポットライトのなかでそれぞれが踊った後、2人のからみとなる。シャンソンに打撃音をかぶせた音楽によって、揺れ動く心を描く。多彩な動きのなかの倒錯的な雰囲気が魅力。次の冴子は蓬沢太士との、Jacob Robinetteの生演奏によるまさにそのもののタイトル『Duo』。サイケデリックでコンテンポラリーな動きで、時に暴力的、時にソフトなアダージョが繰り広げられる。冴子の骨太な演技が印象的だ。自分のグループをもって活動を続けている内田香はここでは自分のソロ『ブルーにこんがらかって』。まずシャンソン調の音楽でアンニュイなムード、そして弦(コントラバス)の響きでいらだちを表現する。黒いドレスで手にする白いシャツは別れた男か、あるいは自身のしがらみか。優れた身体能力と表現力で見応えがあった。
 最後は中村しんじの『ありす』。新国立劇場公演で発表、文化庁の青少年向け本物の舞台芸術体験事業でも好評を得ている作品。キャロルの「不思議の国のアリス」に想をえてはいるが、中村のコンセプトで自由に構成されている。ありすは川野眞子。柔軟な姿態を操り、的確な表現と相俟って役を完全に自分のものにしている。一般に表情に変化の乏しい現代舞踊界にあって、彼女の存在は独特だ。舞台に自由に動かせる蔦のからまった2枚の塀、その後ろが不思議の国。時間に追われる兎(片岡通人)にいざなわれてそこに入り込み、多数の同じ衣裳の分身に惑わされ、追い出されたりする。軽妙な仕掛けが各所に施されており、おでぶさんの男性のコロラテューラなど意表を突いて笑わせ、また書物のなかから小さな兎が飛び出したりして驚かせ、一層不思議の国への興味をそそる。浅野つかさ、高瀬譜希子らのダンサーたちも達者でテンポもよく、映像で塀の裏の大忙しを種明かしするフィナーレもしゃれていて、手を入れるたびに洗練の度を増す。モダンダンスの世界では貴重な作品である。

 2月11,12昼夜 新国立劇場小ホール 12日昼所見

■ 中村しんじ
  『ありす』【前編】
作品動画
(画面サイズ480×360・4.3M・1分19秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・1.4M・1分19秒)

  『ありす』【後編】
作品動画
(画面サイズ480×360・4.7M・1分26秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・1.6M・1分26秒)

撮影協力:リムーブイメージ

■ 波場千恵子
  『白い犬』~愛のメルヘン~
作品動画
(画面サイズ480×360・3.8M・1分09秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・2.1M・1分09秒)

■ 塩入量子
  『interspace』
作品動画
(画面サイズ480×360・3.8M・39秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・924k・39秒)

■ 内田香
『ブルーにこんがらがって…』
作品動画
(画面サイズ480×360・2.1M・39秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・856k・39秒)

■ 冴子
  Duo "Complete, huh?"
作品動画
(画面サイズ480×360・2.1M・39秒)
作品動画
(画面サイズ320×240・1.2M・39秒)

現代のドラマティックな心理バレエ [タチヤーナ]バレエシャンブルウエスト公演