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舞踊評論家・日下四郎氏の連載コラム「ダンスレビュー」
クラシックバレエに対するモダンダンスという概念が生まれてから、まだ百年しか経っていません。しかし、この自由なダンススタイルは、それだけに当然なのですが、さまざまな変遷を経て、現在もどんどん変化し、多様化しています。わが国でもその新しい波を創り出したり、また波にさらされ、影響されたり振りまわされたりしているものも少なくありませんが、そのなかで、しっかりした視点、立脚点を持ち、着実に活動している団体もあります。 神戸の藤田佳代さん、そして彼女が主宰する藤田佳代舞踊研究所がその1つです。 ここでは毎年創作実験劇場として、佳代さんの作品を中心に団員の創作の発表、それ以外に団員の名を冠したリサイタル、さらにいろいろな機会に作品発表を行っています。創作実験劇場は第1回が1994年、今年(2007年)3月に第14回を数えます。 彼女の特徴は、伝統的な現代舞踊をベースにしながら、日本的とも思える繊細な感受性をもった落ち着いた動き、そして音楽、美術の構成によって作者の意思を表現する、独特のスタイルを築き上げたところにあります。その上にしっかりと社会、現代との接点をもち、声高ではなく、しかしきちんと自己を主張しています。この社会的な視点は、95年の関西・淡路大震災に遭遇したことも大きなきっかけになっていると思います。お嬢さんの菊本千永さんはじめ、寺井美津子、かじのり子、金沢景子さんらの幹部ダンサーたちも、実験劇場での発表やリサイタルを重ねるごとに進境を示し、藤田スタイルの上に個性の輝きを加えてきました。 もうひとつ社会との接点として特筆されるのは、ハンディキャップ(ダウン症)をもつ安田蓮美さんを見事なアーティストに育て上げたことです。彼女のナイーブで豊かな表現力、そしてしっかりとした動きは、障害者であることを超えた、見事な個性を創り上げ、見る人に感動を与えています。彼女は北九州&アジア全国洋舞コンクールのバリアフリー部門でチャレンジャー賞(最高の賞)を授賞、リサイタルも開き、あちこちで注目されています。 今回の創作実験劇場では、すでに各2回のリサイタルを行っている上記4人の群舞作品、新進3人のソロ作品に、藤田佳代さんが安田蓮美さんのためのものなど3作品を発表しています。成長した団員の作品に対して、藤田さんが、アウシュヴィッツで亡くなった作曲家の音楽で従来の行き方を超えた新しい試みに挑戦、戦争の愚かさを描き上げて一層の存在感を見せました。 ダイナミックな動きにあふれる作品、ハイテクを駆使した舞台もよいですが、人の心にゆっくりと染みわたり、しかもしっかりと社会との接点をもった作品も貴重ではないでしょうか。 (このなかで藤田さんの2作品「ハスミ in summer」とアウシュヴィッツで亡くなった作品家ヴィクトル.ウルマンの曲による「開く」を紹介します。) 3月11日 兵庫県立芸術文化センター 小ホール
現代のドラマティックな心理バレエ [タチヤーナ]バレエシャンブルウエスト公演