その蘭が今回は、やはり能の演目に題材を取った「花がたみ」を上演した。「日高川」「明烏」「桜幻想」に続く、“和もの”素材の演繹である。ただしプログラムは2本立てで、「Los
Tres Colores」という組曲の形式をとった、40分ほどの踊りが最初に組まれている。これがなんとも実にいいのだ。“いい”というのは、上記したようにフラメンコ技法による純正な現代舞踊の評価という意味においてである。
もちろん後半のタイトルワーク「花がたみ」も、得難いオリジナル・フラメンコ作品である。制作、演出、振付、美術のすべてが一体となって、この国のスペイン舞踊のレパートリーに、また記念すべき1ページが加わった。しかしこの種の“和もの”の西洋舞踊化には、バレエの場合と同じく、まだまだ行く手に大小のハードルが横たわっている。その問題点についてはいずれ他日論ずるとして、ここではダンス・エスパニョルが、本来の資質を最大限に生かし、短編ながら見事現代舞踊としての花を咲かせた今回の作品「Los
Tres Colores」に、なにはともあれ絶大なる拍手を送りたい気持ちだ。(27日マティネ所見)