古典バレエの公演並みに、たっぷり2時間半をかけてプログラミングされたイヴェント。5作品はどれもがそれなりに独自性があって興味深い。ただその仕上がりへの評価は、コンテンポラリー・ダンスの多様さゆえ、当然ながら観る人の好みによって異なる。私の照準に照らし合わせての採点では、前半に出てくる「Green」(地主作品)と、トリを受け持った「Le
Petit Prince」(藤原作品)の2本がよかった。二人のコレオグラファーは、ともに“コンテンポラリー・ダンス”の合格ラインを充分にマークする、たしかな実力と可能性を備えている作家だとみる。。
藤原作品「小さな王子(Le Petit Prince)」は、もともと特異な感性を持つこのコレオグラファーが、今回はその本領を遺憾なく発揮した好作品。初景は数名のダンサーが、真っ白な衣装を身にまとい、ねそべったり壊れた椅子にまたがるなど、異様なストップモーションではじまる。そこへ黒いマスクに真っ赤な衣装をした怪異な人物が加入し、あとは空間にスモークが流れたり、異様なノイズとサウンドのうちに、ダンサーが奇妙な動きを繰り返し、赤衣の王子は身をもがいて仮面をはがしとるというのがコンテンツのほとんどだが、その白と赤の視覚対比だけでも、初手からあくどく藤原カラー。そしてこの爆弾仕掛けのようなダダ的造型に、最後までまっすぐ体当たりを敢行した振付の姿勢は強烈。久々に純正アヴァンギャルド・スピリットの日本版を見た思いだった。