藤井 修治 | ||
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2000年5月9日 | ||
明治元年が1868年だというのは歴史の勉強でおなじみですネ。数えてみるともう132年も前のことです。維新以来、文明開化が叫ばれ、西欧の文明・文化が押し寄せてきましたし、第二次大戦後はアメリカの文物の攻勢が激しく、日本独自のものはすっかり影が薄くなってしまいました。日常生活がすっかり便利になったのはありがたいのですが、日本人が心身ともに本来の日本人でなくなりつつあるのは少々心配です。ふだんはこれを当たり前だと思い勝ちですが、考えてみると不思議なことだと思わざるを得ません。現代日本人は、もはや衣食住、あらゆる面
でほとんど外国人しちゃっているようです。 「衣」から考えると、女性陣は成人式に着物を着る人が多いようですが、結婚式ではウェディングドレスが圧倒的に多く、お色直しですらドレスのほうが優勢みたい。男性たちは着物を着ないまま一生を終わる人も多いのではないでしょうか?それでも花火大会などで若い人たちが浴衣に下駄 をはいていたりするのを見ると嬉しいものです。 「食」について。今や若い人はハンバーガー中心に生きているよう。たまにはリッチにイタメシですか?西洋料理のマナーは知っていても、懐石料理はつい敬遠してしまうのがいまどきの日本人といえましょう。 「住」についても同様。椅子生活で足が長くなったらしいのはいいのですが、正座できない人ばかり。お葬式で座っていたら、足がしびれて立ち上がれない人も多いとか・・・。 「現代日本人とは日本のことを知らない人のことだ」とかいった人がいました。僕も反省!反対に、在日の外国人の人々で、日本のことを本当によく理解している人が多いのには驚きます。日本文化に対する積極的な姿勢には圧倒されてしまうほどです。だいぶ前のこと、外国で資生堂の「禪」という香水をお土産に持って行った時、禪について質問されて困ってしまったことを思い出しました。 この四月、歌舞伎座の昼の部で、お芝居の間にはさまって「舞鶴雪月花」という珍しい踊りをやっているというので、その一幕、約35分だけを見に行きました。600円払って一幕見席へ。エレベーターがないので最上階まで登山するような気分ですが、これも楽しい。隣席に外国人のオバさんたちが並んでました。聞けばニューヨークからの観光客とのことなので、片言英語で説明してしまいました。「雪月花」のはじめは花の春。玉 三郎が美しい花の精に扮して色っぽく踊っています。あれは男性の役者だと説明すると彼女たちはびっくり。つづいて月の夜の松虫親子の踊りでは、勘九郎の親松虫がコミカルに踊ります。最後に人間国宝の富十郎が雪ダルマになりました。人々が寝静まった夜の間だけ元気に踊りますが、朝日が昇ると次第に崩れて融けてしまいます。いかにも日本的な風物を扱った三つの小品、もののあわれをも感じさせる上質のエンターテイメントでした。彼女たちは日本文化を少々ものにし、洋物で育った僕もほとんど外国人でエキゾチック・ジャパンを楽しんでしまいました。反省? 歌舞伎の舞踊は理屈抜きに楽しめます。皆さんもたまには劇場に行ったらどうでしょうか。とかく日舞系と洋舞系は融合しません。しかし、両方を見ると両ジャンルの共通 点や相違点も見えてきて、両方のよさを一層理解できるようになりますし、楽しみも倍増どころか、飛躍的に増加するはずです。 |
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