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藤井 修治
 
Vol.6 「新しいダンスは恐くない」  
2000年5月23日
この世紀末、コンテンポラリーダンスなど新しいダンスがけっこう盛り上がってます。でも公演数は多いのですが、観客数は多いとはいえません。客席は同業者や友人がほとんどのようで、一般 の人はあまりいないようです。現代芸術の宿命かもしれません。人間はやはり見なれたもの聞きなれたものに安心します。またかといわれながらも「白鳥の湖」がくり返し上演されるのは、そんなことからきているのでしょう。
それにしても力作が上演されているのに客席がまばらなのは淋しいものです。現代のダンスはよくわからないからみないという人がいます。食わず嫌いの人もいれば、一度見てがっくりきてもうけっこうという人もいます。たしかにバレエに比べて一般 性は乏しいのですが、現代人が現代を表現するのですから、存在意義はあるはずです。しかしやはり意味もなく難しい作品は、存在意義も乏しいのかも知れません。要は難解さに必然性があるかどうかでしょうか。前衛詩などで難しい言葉をちりばめていることがよくあります。一見してとっつきにくいのですが、よく読み込むと、それなりに難しい表現をとる意味がある場合があるような気もします。
ところがダンスの場合はやみくもに難しくしていることが多いようです。舞踊家の責任もありましょうが、観客が無批判に新奇なら面 白い、難しければよしとする傾向があるからでもありましょう。要するに本物か偽物かを見極める能力を身につけることが大切なのではないでしょうか。それには多くの舞台を見て判断力をつけたら大丈夫です。
「あの人の作品は解らないからいやだわ」と自信なげにいう人も少なくないのですが、御心配には及びません。作った本人も解っていない場合が多いのですから・・・。
何だか解らなかったり、とにかく新しかったりすれば感心してしまうのは考えものです。とにかく舞台を見るのが先決です。そしてその上でまじめにダンスをして観客にアピールしようとしている人と、仲間内にかっこよく見せようと、大した必然性なしに舞台作りをしている人をちゃんと見分けなければ、まじめな舞台を見せてくれる人に気の毒でしょう。
日本は学歴社会といわれます。人生何事でも知的そうなポーズをとったほうが有利かとも考えられます。しかし舞踊家は小さい時からトレーニングを重ねているわけで、頭がよくても学問をものにできる余裕のある人は多くはないようです。そんなわけからかえって知への憧れがつのったりして、必要以上に難しい作品がふえているような気もします。そして、そんな舞台を見た周囲の人々は、「こんな舞台は解らないワ」といってバカにされないかと思ってしまいつい「ヨカッタワー」などと変な作品を評価してしまいます。そうすれば褒められた人もその気になってまた解らない作品をつくる悪循環となってしまいます。つまらないものは正直につまらないという勇気を持って欲しいものです。
もちろん一回見てよく理解できなくても、よく見ると立派な作品もあります。そういう舞台をじっくり見て自分のものにしていくのも大切ですし、新しい発見もありましょう。
要するに僕たち観客は、古いものを楽しむのもいいですが、新しい作品をも恐がらずに見るのも大切でしょう。古いもの新しいものの両方のバランスをとりながら見たり聞いたりすることで人生が豊かになるような気がするのです。


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