藤井 修治 | ||
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2001年 1月23日 | ||
人間は他の動物と違って、生まれてから死ぬまで各人各様の歴史を辿ります。 古代のスフィンクスがかけた謎は、「朝は四つ足、昼は二本足、夕べは三本足は何?」だったとか。正解は「人間」です。赤ん坊時代は四つん這い、成人したら両足で歩き、老人は杖をつくから三本足だとか。しかし一人一人の歴史はそう簡単には行きません。人間は人によって肉体的にも精神的にも成長したり衰えたりする部分やタイミングが異なります。それをどう対処して生きるかは、各人の器量 や努力次第だということでしょう。 2500年前の中国の聖人、孔子さまは、名著「論語」の中で「私は15歳で学問を志し、30歳で独立、40歳で迷いがなくなり、50歳で天命を知り、60歳で人の言葉を素直に聞くようになり、70歳で欲望をおさえることができるようになった」とかっこよく自慢しています。聖人じゃない僕なんか、いまだに迷ってばかりです。だけどそれが人間らしいのかも・・・、と負け惜しみをいわせてもらいます。しかしそれでも少しずつは成長してるかな? 同じ映画を何回か見ることがありました。子供のころは物語を追うのが精一杯。まして恋だの愛だのの場面 はさっぱりわかりません。ところがおとなになるとそれなりにわかってきて、登場人物になった気さえします。そして年をとると客観的に見て、いいとか悪いとかも判断がついて来ます。 バレエについても同様、若い時に「またハクチョーコ?」などといわれながら「白鳥の湖」を見つづけたおかげか、こんな僕でも「白鳥の湖」だけでなく、バレエ全般 、さらに芸術一般についても少しずつわかってきたような気もします。誰でも学んだり仕事をしたりする間に、意識しなくても成長するものなんですね。少しずつでも高みに登ってあたりを見渡せば、視界も広がってきます。これは芸術だけでなく、全ゆる物事にあてはまるのではないでしょうか。 少年時代、先生から読書の方法として精読と乱読を両立させなさいといわれました。同じ本をくり返し読み込んで、内容や文章の構造から細部の表現に至るまで自分の血や肉にしてしまう精読も大切。いっぽうで、斜め読みでもできるだけ多くの本を読んで世の中のことをできるだけ知りなさいということでしょうか。ところが僕は結局ぼんやり時を過ごしてしまい、両方ともうまく実行できず今日に至りました。人間は心がけ次第ですね。反省。失敗者として反面 教師として申しあげておきます。 さて、去年の暮、例年にも増してバレエ「くるみ割り人形」の公演が多かったようです。しかし演出や振付、美術、そしてダンサーが変わっても「くるみ割り人形」に変わりはなく、音楽も同じ音楽です。人生も残り少なくなると、他の作品、さらに他のジャンルのものも楽しみたくなります。ということで今冬は「くるみ」は精勤せず2回だけ見たんです。クラシックの年末の定番、ベートーベンの「第9」もそう。少年時代から親しい曲ですが、ちゃんと聴き通 すのには体力、集中力が必要です。この暮れは演奏会に行かず、佐多達枝振付によるバレエの「第9」に行きました。一回で見て聴いてというわけです。けっこう楽しみました。若いころの「第9」精読のおかげかも。 ということで21世紀には乱読気味で今まで仲々できなかったことをしたい。お花見やお絵かき、バイオリン、温泉旅行等々。優雅ダネーといわないでね。いままでけっこう働いたんですから。そのために批評や評論などを減らして自分の時間が欲しい。すでに新聞評や雑誌連載はおことわりしています。しかしこの欄は楽しいし、少しは若い人のお役に立つかもと思ってもう少しだけ続けたいと思ったりもしています。よろしく! |
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