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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

藤井 修治
Vol.70 「笑顔にも努力します」
2003年1月22日
 ことしの第1回目です。もう早咲きの梅が見頃です。御近所の庭に咲き始めた梅の花がこちらを向いて微笑んでいるような気もするのは思いすごしでしょうか。
 この十数年は、正午にNHKのニュースをちょっと見て、内容的にもういいやと思うと喜々として他のチャンネルに切りかえます。健康のためと考えて、みのもんたの「思いっきりテレビ」を見てることもありますが、タモリの「笑っていいとも」に落ちつくことが多いようです。この番組も20年以上の長寿を保ち、タモリはナマ放送を一人で司会しつづけて5000回?とか、ギネスブックにも載ったって本当らしいです。何故この番組にするかって?番組名どおりに笑いが満載だからです。その笑いも自然発生的な笑いなのでこちらも気楽に笑えるのもいい。泣いても一生、笑っても一生、だったら笑ってすごしたいとも思います。
 かつては男は笑うもんじゃないという人もいましたが、いまはやっぱりしかめ面 よりも笑顔のほうが本人のためにも周りの人のためにもよろしいようです。
 笑顔には天性のものと努力したものが混じっているようです。僕なんか藤井スマイルなどとおだてられたり、皮肉をいわれたりもしますが、それなりに努力しているかも。僕は幼少のころは多分にネクラだったように思います。わがままで自分中心、可愛いいなどとおだてられても可愛くなかったような気もします。しかし幼稚園に行くころから、楽しく生きるには楽しそうにしなくてはいけないと、子供なりの知恵で、次第に笑顔を見せるようになったような気もします。おかげでいじめに会ったこともありません。そしてその間に性格も少しずつ明るくなったような気もします。明るいから笑うのではなく、笑顔のおかげで皆と仲よくなれて明るくもなれたのでしょうか。僕もやはり人間で暗い部分や影の面 もあるのですが、それは自分だけの問題にしたいと思っているのです。明るい人は周囲を明るくするといえますが、これも努力が必要ですが、次第に自然体になってくるのです。
 きょう、1月20日朝のNHKのニュースで就職戦線での研修のセミナーで笑顔の作り方などを指導していたのですが、生徒たちの作り笑顔がこわばっているのが痛々しく見えました。実は僕の友人の一人が、まだ40代なのにリストラされてしまったんです。頭がよくて容姿もいい。さらに性格も最上なのですが、一つだけ笑いが足りないみたい。職安をのぞいて職さがしをしているのですが、まだ見つからないんです。といって僕が笑顔の振付をするわけにいかないし・・・。
 これもNHKテレビの話です。時々瀬戸内寂聴さんが人生相談などをしておられますが、いつも笑顔です。彼女は京都の寂庵と岩手の天台寺の住職をされているのですが、いつだったか天台寺での御説法の一部が放送されたのを偶然見ました。寂聴さんは参詣の人々に向かってとにかく笑いなさいとくり返し強調しておられました。彼女はここで「和顔施(ワガンセorワゲンセ)」という言葉を教えてくれました。にこやかな顔を相手に与える。ニコニコすれば相手も本人も楽しくなる。それだけでその人の存在価値があるとか・・・。むずかしいお説教よりも笑顔で笑顔をすすめることが最上の効果 をあげているようです。彼女はいまでこそ悟りすましていますが、かつては不倫とかいろいろ修羅の世界をのたうちまわったとか。だからこそお話に説得力があるのでしょうか。
 僕も多くの人々のお話を聞いたり、笑顔に接して笑顔が大切と実感し、できるだけニコニコするように努力していますが、それをあいつは調子がいいとか思っている人もいるはずです。しかし調子いいほうが悪いよりずっとましです。僕も必要があれば怒る時は怒ります。しかし数年に一回でしょうか。その時は皆がびっくりするので最大の効果 をあげます。どうでもいい時の不機嫌な顔などは最悪と思います。
 かつて日本人は外国に行くと言葉が通じないためか意味もなくヘラヘラ笑っているなどという声を聞きました。ところが実際に外国に行くと日本人は笑顔が少ないと思います。欧米に行くと全く知らない人でもニコニコ笑い顔を見せてくれる人がもの凄く多いと思います。こちらがニヤニヤしてるからだけとも思えません。日本だと、こちらが笑いかければセクハラ常習と思われるかも知れませんが、向こうでは若い女の子でも笑顔ですれちがってくれます。日本では男性陣がやはり内気なようです。僕も実は内向的なのですが、がんばってようやくこうなったんですヨー。海外の音楽などを取材に行った時でもフィンランドやハンガリー、チェコなどで自国語しか話せない庶民たちと交流するのは、笑顔で対応するしかないのです。何とか仕事ができたのも努力して笑顔を見せたおかげかとも思ったりしています。世界各地で言語が全く違っても、笑顔は世界共通 だと実感したのでした。
 思いつくことをもう一つ二つ。これもNHKテレビで、朝8寺35分からの「生活ほっとモーニング」で、時々地方の市民会館のような会場で、公開で名医の先生がたの病気や健康のお話があります。そのあとゲストが「健康エッセイ」という講演をします。女優の和泉雅子さんが人々を前にして元気いっぱいのお話しをしました。彼女は近年は何回も北極に行くとか、探検家、冒険家として大活躍していますが、この日は「一日一笑」とかいっていました。「一日一善」からでしょうか。ところがこのお話の間、彼女は笑いっぱなし、百笑ぐらいしていたのですね。そのおかげで元気なのかも知れません。男性も負けないようにしましょう。年末から年始にかけて格闘技のボブ・サップという黒人の大男がバラエティ番組に現れて人気を集めています。ビーストというだけあって恐ろしそうな容姿ですが、いつも必ず大口をあけて大笑い。気は優しくて力持ちといった感じですっかりファンになりました。
 情報網や交通の急速な発達で世界は小さくなっています。遠くの国の人とも隣人のように話すこともできます。しかし言語はなかなか一つにはならないでしょう。地球上の人々は現在も敵味方に分かれることが多いのですが、本来は仲間だと思うんです。日常生活から外交まで、とげとげしい顔つきでなく、笑顔が広まればと思って僕もそれなりに努力しているんです。大きなことをいってすいません。
 小さいことを一つ。先日、琉球舞踊の名人として知られる志田房子さんと電話でお話しする機会がありました。彼女は十年以上も前に文化庁の芸術選奨文部大臣賞を受賞されています。彼女の舞台は品位 格調の高さは類のないもので、彼女が一年間の洋舞邦舞を通じてのベストワンに選ばれたのも当然でしょう。その彼女が授賞式でコチコチになっておられた時に僕が笑顔でおめでとうございますと申しあげたらようやく緊張が解けてリラックスできたとかのお話でした。実は僕はそのことを記憶していないんです。十年以上もたってそのお話を聴いてびっくりすると同時にすごく嬉しく思いました。日頃の努力が報いられたのか、僕が意識しないでも和顔施ができるようになっていたのかとも思ったのです。電話でうかがったお話で、僕のような役たたずでも少しは役に立つこともあると、ちょっと元気になりました。
 笑ったからといって偉くなったりお金持ちにはなれませんが、少なくとも幸福な気分にはなれます。昔から「笑う門(カド)には福来たる」といいます。小さい時に母親から教わった言葉でした。母は一介の家庭の主婦でしたが、いま考えるとちょっといいことを沢山教えてくれたのです。そういうささいなことがいまになって少し役に立って来るのですね。21世紀まで生きのびていてよかったと実感するきょうこのごろです。
 まだお正月だと思って少しのんびりと書き連ねてしまったので、舞踊について書く余裕がなくなってしまいました。つぎは舞台芸術での笑いについて思いついたことを書いてみましょうか。

 


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