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うらわまこと
 
Vol.2 「プログラム雑感 
  まず見やすいものを」
2000年4月4日
 

先日、あるダンス公演に行ったときのことです。なかなか魅力的、刺激的な舞台でしたが、問題はプログラム。12センチ四方ほどのの三つ折りで、デザイン的にはしゃれているのですが、活字が極端に小さく、しかも緑色インクで読むのに大変な苦労でした。一緒にいた批評家仲間と、この字が読めないもの、つまり年寄りには見てもわからなくてもよいということなのか、などひがみっぽい冗談をいいあったものでした。
もちろん、そんなつもりではないと思いますが(実はそうだったりして)、プログラムとは一体どういうものでしょうか。いわゆるプログラム(公演パンフレット)の目的はというと、端的には、『公演観賞の助けと、記録のためのハード情報』ということになるでしょう。そのためには、少なくとも作者(演出・振付・台本)、出演者、音楽、美術、照明などのスタッフ名をきちんと明記すること、これはお客さんのためだけでなく、それぞれに対する義務でもあります。さらに記録として、日時、場所も。これ以上の解説的なものは、団体や公演の性格や考え方しだいで、絶対条件ではありません。
では、たんにこれらのデータを記載しておくだけでいいのでしょうか。ここにデザインの問題がでてきます。そのためにはプログラムの価値を決める要素を考えることが必要です。これは大別 して2つあります。使用価値と芸術価値です。使用価値とはプログラムの基本的な目的、つまり舞台の観賞や記録という面 から十分かどうかです。ここでは記載内容とともに、読みやすい、保管しやすいということが重要です。芸術価値とは見た目の美しさとか独創性という点です。これも公演の楽しみを増すことになるのはたしかです。
デザイン(設計)は美しさとか独創性、あるいは思想が基本ですが、使用価値を高めるためのものでもあります。工業デザインとか建築デザインといわれるものがそれです。
工業デザインの例として電話機を考えてみましょう。たしかにキレイとかカワイイという点も大切ではありますが、まず電話として使いやすいデザインが一番です。家具なども使い勝手のよいことが第一で、そのうえで見た目の美しさ、ユニークさなどを工夫することになります。建築も同じ、いくら観賞に値する外観をもっていても、住むのに不便では住宅としての価値は低くなってしまいます。ここが芸術としての彫刻などと違うところです。最近有名な建築家がデザインした橋が、外観は大変ユニークなのですが、交通 という面では不便で渋滞の原因になっており、住民からクレームが起きている、という記事がある雑誌に載っていましたが、これなどまさにそうですね。
プログラムに話を戻しますが、先に取り上げたケースに限らず、活字の大きさや形、写 真に文字をかぶせたりするレイアウトなど、読みにくいものが時々見受けられます。作品のイメージをプログラムにも、とデザインに凝るのも分かりますが、やはり作る以上は見やすいもの、そして保管しやすいものを第一に考えてほしいと思います。



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