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うらわまこと
 
Vol.5 「スタジオ発表会」の役割と見所
   
2000年5月16日
 

舞踊、とくにクラシック・バレエについては、わが国には世界的にみて大変に独特の部分があります。それは公演活動やダンサーの生活基盤の問題です。 バレエやオペラのような舞台芸術は、公演だけの収支で採算をとることはきわめてむずかしく、欧米のように、公的な、あるいは民間の援助がなければやっていけません。
わが国でも、アーツプラン21や芸術文化振興基金などの助成も行なわれるようになり、また国立の劇場もできましたが、この面 ではまだ十分とはいえません。助成対象は公演や団体の一部にとどまり、しかも赤字の全てが補填されるわけではないのです。また国立劇場には、国費での養成所(学校)も、それだけで生活できる専属アーチスト制度もありません。もちろん、国として大きな経済、財政問題をかかえ、また基金は超低金利で運営が苦しい状況にあるなかでは、予算面 でよくやっているとは思います。ただいずれにしても、民間でも企業業績が悪く、消費も低迷している状況では、そちらからの支援もあまり期待できず、バレエ団活動やダンサーの生活が非常に厳しいことは事実です。にもかかわらず、わが国のバレエ界は、公演回数もダンサーのレベルも高い水準にあります。それを可能にしている重要な要素のひとつが、バレエスクールの、そしてその発表会の存在です。
海外にもプライベートなダンスのスタジオはありますが、日本ほど多いところはないのではないでしょうか。このようなスタジオについての正確なデータはありませんが、あるバレエ雑誌のバレエスクールガイドに掲載されているだけで約400、実際にはその倍以上あるでしょうし、大手では一つのスクールで10以上の教室を持っているところも少なくありません。ごく大雑把にいって教室単位 で2000をはるかに越えると思われます。
このようなスタジオはどのような役目をはたしているのでしょうか。主要なものだけでも、レッスンで1から3,発表会で4から5のような効果 をもたらしています。

1 ダンサーの育成
  全国各地のスタジオから優れたダンサーが多数生まれています。国内外のコンクールの入賞者の多くは首都圏以外の、あるいは中小スタジオの出身者です。
2 教師、助教師などの経済面の保証
  舞台活動ではなかなか収入が確保できない、特に女性ダンサーは「教え」で収入を得ているケースが多いのです。
3 公演、発表会の経費の確保
  授業料収入(月謝など)が公演の赤字補填、そして発表会経費の基金となります。
4 男性ダンサーの生活保証
  公演よりも発表会の出演料が、とくに男性の生活の糧になっています。
5 振付者の育成
  なかなか正式公演が開けないスタジオ、あるいは将来振付に進みたいダンサーが発表会に作品を発表して、その存在を示したり、振付の勉強をすることもできます。
たしかに、発表会には小さいお子さんがたくさん出たり、レベルも高いとはいえないケースもありますが、上のような重要な役割を果 たしているのも事実なのです。
「なんだ、発表会か」、といわずに発表会に足を運んで下さい。将来性ある若いダンサーを発見したり、おもしろい創作にであうことも、発表会の楽しみなのです。
実は私(うらわ)は、先日あるスタジオの発表会に出演、ここに記したこととの関連で具体的な体験をしました。いつかこのお話もしたいと思っています。


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