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うらわまこと
 
Vol.7 「成功させたい 
  ツアーカンパニーシステム」
2000年6月13日
 

岡山県津山市に行ってきました。岡山から列車で約1時間半、津山城跡をもつ落ち着いた小都市です。ここは作陽音楽大学があったりして、音楽には縁の深いところ、国際音楽祭を定期的に開催、世界と地元をつなぐユニークな活動をつづけています。
でも、今回は音楽を聴きに行ったのではありません。見たのはバレエです。日本ではじめての”ツアーカンパニー”「バレエプロジェクト フラッシュ」の初公演です。これは、主宰者(有)アートライン和田博氏のことばによりますと、「ダンサーやスタッフが中心となって組織した日本で初めての巡業専門のバレエ団」ということなのです。
ただ、厳密にいいますと、日本で初めてといえるかどうかは疑問です。しかし、これは、すでに熊川哲也のKバレエがあるという意味だけではありません。もっと本質的なことです。もともと、バレエやオペラ、オーケストラなどは劇場に専属か、少なくとも本拠となる劇場をもっているものです。欧米だけでなく、アジアでもどこでもそれが一般 的です。しかし、日本では国立、新国立劇場でもこうなっていません。バレエに限っても、残念ながらそのほとんどすべてが劇場専属はもちろん、本拠となる劇場ももっていない状況です。
話を戻しますが、ツアーカンパニーとは、このように本来芸術団体には本拠となる劇場があるという状況の中で、特定の劇場をもたずに各地を巡回するための団体のことなのです。つまり、この意味では日本のバレエ団はすべてがツアーカンパニーといってもよいのです。しかし、従来のバレエ団はツアーカンパニーとも違います。それはなぜかというと、本拠地(劇場)はもっていなくても、自主公演を主体としているからです。ツアーカンパニーは、持ち出し(赤字覚悟)の自主公演でなく、あくまで「売り」公演、いいかえれば、各地の劇場、プロモーター、あるいは組織(鑑賞団体など)に買ってもらって公演する、つまり本当のプロを目指すものなのです。この意味ではKカンパニーもそうでしょう。しかしこの「フラッシュ」は自分たちだけの手で、きちんと価格や条件を明らかにして営業活動をしている団体です。しかし、日本ではこのやり方は大事なことですがなかなか難しく、その意味では注目されます。
まだ商品の話をしていませんでしたね。タイトルは「深川秀夫バレエの世界」、深川はヴァルナ、モスクワなどのコンクールで上位 入賞後欧米で長く活躍したあと、現在は中部・関西を中心に演出・振付・指導などを行い、根強い人気をたもっています。その彼を芸術監督に古典と彼の作品をレパートリーとしています。ダンサーは各地からピックアップされたメンバーで、渡部美咲、大寺資二ら18人。ベテラン原美香も参加しています。
今回の津山公演は主催が津山こども劇場、地元の教育委員会や文化協会などが後援しています。昼夜公演で、夜は一般 向けですが、昼が高校生(当然ですが男子もいます、念の為)というのがうれしい。しかも水曜日ですから、高校は授業を振り替えたとのこと。ただし会員だけでは満杯にならず、一般 も対象として前日に公開リハーサルをしたんだそうです。そうしたら当日二百枚ほど出たとのこと、夜の部を見たのですが、千人強の客席がほぼ満員でした。
プログラムは「海賊」から深川の代表作の一つ「ガーシュイン・モナムール」まで、渡部と大寺が見事に見せた「ドン・キホーテ」、深川のドラマチックな「顔のない女」などを含む7作品。古典、創作、そしてガーシュインの楽しいものなど、若手も得意のテクニックを見せ、意外性をもったフィナーレもあって客席をおおいに沸かせました。高校生を含め、この中の何人でもいいですから、バレエ、さらにダンスファンになってくれるといいと思います。
この後和歌山が決まり、それ以外にも引き合いがきているとのこと。観客を広めるためにも、ダンサーの生活のためにも、ぜひ成功してもらいたい活動です。




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