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うらわまこと
 
Vol.11 「産業としてのダンス、 
  もっと営業、広報活動を」
2000年8月9日
 

7月末から8月上旬にかけて東京で行われた「ワールド・ダンス・2000・東京ー振付の現在」における、[ワールド・ソロダンス・ガラ]。これは全体としてなかなか見応えのある内容でしたが、その初日、カンパニー・マリー・シュイナール公演のロビーで同じ批評家仲間のY氏とこんな話をしました。
彼女の1978年から98年までの11作が年代順に上演されたわけですが、「その変化が分かってとても興味深い、それに比べてわが国ではなかなかこのような企画がたてられないのは残念だ」、「それはわが国の舞踊界、とくにモダンダンスの状況、インフラストラクチャー(基盤)が欧米のそれと本質的に違うからではないか」。 この違いの原因の要点は次のようなものだということになりました。
まず基本は作品を商品として在庫しておくという意識がないこと。いいかえればプロ意識、もっといえば商売人意識が弱いこと。これは、芸術は創作活動であり、つねに新作を求め、求められる。再演はいさぎよしとしないだけでなく、創作能力が衰えたと見られかねない、という意識、状況があるから。
一見かっこいいのですが、これは次のような理由によるのです。 発表の場が少ない。年に一回ではどうしても新しいものがやりたくなる。
観客が限られている。同じ作品では見るほうもまたか、ということになるのではないか(何回でも見せたいという作品が少ない?)。
これはさらに下記のような背景、基盤のためです。
作品を発表する場が、スタジオの生徒や、友人、知人にチケットを買ってもらうことによって成り立っている(その人にまた同じものを?)。
ダンサーを専属にしている劇場どころか、ダンス専用の劇場さえもほとんどない。したがって、伝統や経験の蓄積も個人にまかされる。
ただ、最近舞踊界の中にこれではいけない、もっと近代化しなければ、という意識と動きが生まれてきました。その1つの表れがコンテンポラリー系を中心に、広報・営業活動に力を入れ、小グループでも担当者を置くところが増えてきたことです。
時を同じくして開かれた「芸術見本市」で、まだ発展途上のグループやダンサーが出品していました。そのほとんどに若い広報担当者がついているのを見て、ここまできたか、ダンスやダンサーを商売にする人が出てきたかと感じ入りました。「商売」という言葉に不快感をもつ人がいるかも知れませんが、私はあえて使います。ダンスが商売になる、あるいはしようというのはとても大事なことですから(食いものにしてはいけませんが)。
しかし、個人や小グループではなかなか広報や営業は難しい。そこにそれを組織化しようとする動きが出てきました。その1つにJCDN (Japan Contemporaly Dance Network、代表佐東範一氏)があります。ここは、アーチスト、スタッフ、サポーターを組織化し、NPO化を目指しています。注目すべきは、ここが通 商産業省の「コーディネート活動支援事業」に認定され、助成を受けているという点です。これはもともと、産業界において、中小企業と大企業を結びつける活動を促進するために設けられた施策です。ダンサー、ダンスグループが中小企業、そして劇場、ホール、その他の興行主などが大企業で、これを結びつける役割を果 たすのがJCDNという位置づけです。通産省が舞踊界を1つの産業として、その振興に助成するというのは大変な前進です。ぜひそれに相応しい商品や技術をそろえて成功して欲しいと思います。




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