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うらわまこと
 
Vol.13 「支部にこだわるか、作品第一か
  ー2つの合同公演に思うー」
2000年9月6日
 

8月の下旬に日本の洋舞界を代表する2つの全国組織の合同公演がありました。日本バレエ協会の「第24回全国合同バレエの夕べ」(25日、27日)と、現代舞踊協会の「第21回現代舞踊フェスティバル」(29日)です。どちらも社団法人。実はもう一つの全国組織、これも社団法人である全日本児童舞踊協会も24日に合同公演「第30回創作舞踊公演」を行っているのですが、これはちょっと趣旨が違うので、ここでは取り上げません。
日本バレエ協会と現代舞踊協会の公演は、同じような性格、目的を持っています。ただ現実にはこの二つは大分異なる様相を示し、それがそれぞれの、そして日本の舞踊界のかかえる問題を示しているように思えます。 似ている点は、全国組織で各地に支部を持つ両協会の各支部が一堂に会する機会であるということです。これは観客は全国の状況が一目で見られるとともに、協会メンバーにとっては親睦、コミュニケーション、研修の機会にもなり、さらに首都圏以外の支部メンバーには、東京で踊り、作品を発表できるという利点もあるのです。
しかし、違いもあります。そのもっとも大きなものは、バレエが地区ごとの選抜メンバーによる作品で実質的には東京、関東が主体になっているのに対して、現代舞踊は指導者(スタジオ主宰者)単位 で、東京、関東以外の地域が集まっているというところです。したがって、バレエは2日間で関東、東京各2のほかは九州北、中国、関西、北陸、北海道の出演に対して、現代舞踊は九州2,四国1、中国1、関西3、中部2、北陸1、東北3、北海道1と、全国14作品の上演となっています。 バレエの、地区ごとにオーディションなどで選抜されたメンバーによる作品上演は、その地区の状況が全体的に分かりますし、ダンサーたちの所属をはなれた交流にもプラスがあります。現代舞踊については、現実にこのような指導者がこのようなダンサーを育て、作品を作っているということが具体的に分かりますし、グループとしての連帯も強まるでしょう。これだけでは、それぞれ特徴があって簡単に比較はできません。したがって、逆に問題点を考えてみます。
まず、日本バレエ協会の公演では、参加支部の少ないのが気になります。関東支部、東京地区以外に支部は12あるのですが、そのうち今年は5支部の参加にとどまっているのです。一時は全支部や10支部以上の参加が続いていたのですが、方針が変わったのでしょうか。もう一つは、支部(地区)ごとの出演者の純粋性が弱まってきていることです。一歩譲って、振付者や男性ダンサー全員は無理としても、できる限りその地域の出身者から選ぶことが必要ではないでしょうか。どうも現在はコール・ド・バレエだけがその支部の会員であればいいという感じで、支部や地区の代表という意味が薄れているような気がします。確かに作品のレベルが高く、いいダンサーが見られればそれでいいではないか、という考え方もあるでしょうし、現実にそれで観客動員にも成功しているという面 もあります。ただ、趣旨からして、多くの支部が参加し、それぞれの地元のメンバーによるベストの舞台を見せてほしいというのは考えが固すぎるでしょうか。
現代舞踊協会はちょうど逆の状況です。出演者のほとんどが支部会員で、全国の多くの作品やダンサーが見られます。ただ、それだけにレベルに差があり、何よりも観客動員に大きな問題があります。多くの観客に見てもらうことは、採算だけでなく、出演者の意欲からも重要です。広報の強化とともに、フェスティバルを盛り上げる企画、観客にアピールする企画も必要ではないかというのは、今度は大衆に迎合しすぎるでしょうか。




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