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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.29 コンクールに思う 
  ーレベルは高いが、もっと自分らしさをー
2001年4月24日
 

 全国舞踊コンクール(東京新聞主催)のバレエ、現代舞踊の部の決選を見ました。審査は予選からしていますが、どの部門もレベルが高いのに驚きます。決選に進めなかったなかにも、これを一般 の公演でやっても結構受けるんじゃないかと思うほどの、決選でもう一度見てみたいものがたくさんありました。
 参加数も、少子化、不況、そしてコンクールそのものの増加(私の知る限りでも、今年新しく3つのコンクールが加わりました)にもかかわらず、全体として減っていません。舞踊に対する関心はますます強くなっていると心強く感じます。
 コンクールについては、賛否両論あります。たしかにコンクールのための踊りになったり、賞をとったらやめてしまったりというのではあまり意味はありません。しかし、目標をもって努力するのは大事なことですし、それに最近では基礎がしっかりしていないと上位 は望めなくなってきています。また、踊る機会の少ないダンサーにとっては、コンクールが重要な自分を見せる場、ハレの舞台であることを否定できないと思います。

 それはそれとして、コンクールの感想をいくつか記してみましょう。
1.まず、すでに述べたように、全体としてレベルが高いこと。これは技術だけでなく、スタイルについてもです。たとえば、ついこの間までは甲が豊かで爪先が柔らかいダンサーがいると目を見張ったものですが、最近ではそうでない人を探すのが難しいほどです。これはクラシックだけでなくモダンも同じです。
2.男性は、習う人は確実に増えているはずですが、参加者は少し頭打ちです。これは習い始めた人がまだコンクールレベルに達していないことと、とくにシニア(一部のジュニアも)は踊る機会がたくさんあるし、出て落ちたらかっこ悪いという意識が強いためではないでしょうか。したがって参加した男性はみな一定のレベルを超えています。ただもっと増えて男性部門が独立できるようになるといいですね。
3.たしかに、からだはきれいになり、技術も向上しているのですが、個性とかアピール性ということになると物足りないものがあります。バレエではとくに同じ作品で同じような姿態、踊りのダンサーが続くことがあります。
 ただ、レベルが上がれば上がるほど同じようになってしまう。個性が出にくいというのはやむをえない面 もあります。これは世界共通のようですね。テレビやパソコンのような商品でも、技術が向上し、品質が良くなれば、どうしても商品の個性が出しにくくなってきます。このようななかで、真に存在感が示せる人、自分らしさをアピールできる人が頂点に立つということかも知れません。
4.とくに現代舞踊分野に感じることですが、もう少し参加者がバラエティに富んで欲しいと思います。もちろん、作品のコンクールではありませんから、作品そのものを云々するのではありませんが、音楽にしろ、動きにしろ、もう少し「現代」を感じさせるものがあってもいいのではないでしょうか。これも全然ないとはいいませんが、むしろ最近は自由なものが減り、パターン化されてきているような気がします。
 最後に、これはよく言われることですが、コンクールでいい結果を取った人も、残念ながらそうでなかった人も、これをステップにして一段と努力されることを期待します。
 それからもう一つ、ダンサーもファンも、踊りだけでなく、環境や福祉など社会の動きにも敏感な人になって下さい。




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