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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.30 「だれでも良い舞台芸術が楽しめるように   
    ーバリア、エイジ、そしてキャリア・フリーへの努力をー  
  2001年5月7日
 

 今年に入って、高校生以下の生徒、児童や、あまりバレエのことを知らない人に向けて企画された舞台を見る機会がいくつかありました。
 1月には牧阿佐美バレヱ団の東京都教育委員会が主催した『中・高校生のためのバレエ観賞教室』。3月には名古屋の市川せつ子バレエ団が名古屋市、名古屋市文化振興事業団と共催で『青少年のための芸術劇場』、そして5月に恒例のBunkamuraとの共催で松山バレエ団が『こどもの日特別 公演』を行っています。
 それぞれに工夫がこらされており、この3つに共通に出てくるレッスン風景も三者三様です。牧阿佐美バレヱ団では、指導者(狭間祥子さん)の指示によりレッスンが進められ、芸術監督の三谷恭三さんとうらわまこと(私)が、状況に応じて即興掛合いで、時にダンサーにインタビューしたり、後で上演される「白鳥の湖」に出てくるステップを動いてもらったりしながら、いろいろと解説しました。市川せつ子バレエ団では、代表の近江貞実さんが作品のなかで簡単な心構えを伝え、トウシューズにあこがれる少女を登場させながら、基本的には男女のステップとアダジオで、リハーサル風景を含めた作品「ザ・クラス」としてまとめてありました。松山バレエ団では、団員(この日は塩沢美香さん)が、会場の子供たちに呼び掛けながら簡単なバレエの歴史からその魅力、そして団員のバレエに取り組む姿勢などをきちんと説明。そしてバーレッスンをアレンジして作品化した「SJB」を上演しました。
 その後の作品上演方法もそれぞれ特徴がありました。牧では若手による「白鳥の湖」の第2幕とプリンシパル中心の同じ第3幕の抜粋が踊られました。市川ではクラシックの例として「白鳥の湖」の第3幕、現代作品として島崎徹さんの「For tomorrow and after」という組み合わせです。また、松山では、多少アレンジしてありますが、森下洋子さん、清水哲太郎さんはじめベストメンバーによる「ロミオとジュリエット」が演じられました。本題とはそれますが、この「ロミオ~」も素敵でしたが、全幕版は本当に見事な舞台でした。
 それぞれ多くのジュニア、児童が客席を占めましたが、みな静かに見ていたのも素晴らしいことでした。このような、年齢を問わず、またバレエ知識や経験を問わずに楽しめる公演は「エイジ・フリー、キャリア・フリー」公演といえると思います。
 もう一つ大事なものに「バリア・フリー」があります。障害者の方たちにも楽しんでもらえるように工夫された公演です。これも2月に岡本るみ子さんのバレエスタジオが「アン・リミテッド チャリティー・コンサート」として、難聴の方にも用具を用意するなどの配慮がなされ、また知的障害者も出演して収入はその施設のために寄付するという形で行われました。車椅子の方に対しての、劇場として、また主催者としての対処は、一般 公演でも少しずつ増えてきています。
 もう一つ、子供たちに対するものとしては、作品に配慮するという方法があります。バレエ関係でいうと、「くるみ割り人形」はファミリー向けの楽しいもので、暮から正月にかけて数多く上演されるのはご存じのとおりです。また、児童文学のバレエ化もよく行われます。今年には、たまたま3月の末と4月の初めに続けて、箱根秀美さんのカンナバレエスタジオと、名古屋の松岡伶子さんのバレエ団の付属研究所が、それぞれ独特の演出による「ピノキオ」を上演しました。
 なぜこのようなことを述べたかというと、私がこの3種類の「フリー」に関する企画に関わることになっているからです。まず7月には、芸団協主催の『子どもと舞台芸術 出会いのフォーラム2001』に、公文協としてセミナーを行うのですが、そのテーマを、「だれでも等しく良い舞台を楽しむために」とし、その舞踊分野を担当します。また8月には黒田呆子さんが実質的に主催する『北九州&アジア全国舞踊コンクール』が行われ、私も審査員をつとめますが、ここに「バリア・フリー」部門があります。さらに来年1月に、横須賀の伊予田あさ子さんのバレエスタジオ、ここではエンゼルクラスとして知的障害者のクラスを開いているのですが、ここでわかり易く楽しいバレエ解説つきの公演をしようと企画しており、そのお手伝いをすることになっているのです。
 障害、年齢、そして知識・経験を問わず良い舞台を楽しめる、これはとても大事なことです。日本ではこの面 はまだ十分とはいえません。いくらかでも、こうなることにお役に立てればと思っています。ぜひよろしくご協力下さい。




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