D×D

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト

 

ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.36 だれでも芸術が楽しめる状況を
  「エイジフリー」「キャリアフリー」      
  「バリアフリー」に努力する人たち
2001年7月31日
 

 社団法人全国公立文化施設協会(公文協)という組織があります。これは全国の公立文化施設によって作られており、それぞれの活動の充実、効率化のための情報交換、研修などを行っています。そこに各施設の広義の芸術文化活動の支援、助言、あるいはそのための研究を行なう芸術情報プラザが、文化庁から委嘱により設置されています。私も舞踊関係のアドバイザーをやらせていただいており、なんとか全国のホールで舞踊を数多く取り上げてもらおうと日夜(大袈裟)努力しています。私の願いは、各地のアートマネジメント研修講座に音楽、演劇と並べて舞踊をテーマに加えていただくことです。
 それはさておき、今回は先般公文協主催で行われたセミナーについてご報告しておこうと思います。
 これは7月の19から29日まで、国立オリンピック記念青少年総合センター(長い名ですね、通 称オリ・セン)で開かれた「子どもと舞台芸術・出会いのフォーラム」の行事のひとつで、『子どもたちへのメッセージ~舞台芸術の魅力』というタイトルのものです(20日開催)。もともとは、このフォーラムの基本テーマから、子どもたちにいい芸術を見せるにはどうしたらいいか、というところからスタートしたのですが、子どもに限らず一般 に舞台芸術鑑賞の場に入りにくい人達に対象を広げたらどうだという話から、お前コーディネーターをやれ、ということになってしまったのです。  ここで私が考えたのはこういうことです。これも前にこのページにちょっと書いたことがあるのですが、芸術における3つのフリー、すなわち「エイジフリー」、「キャリアフリー」、そして「バリアフリー」です。説明の必要もないでしょうが、年齢、知識・経験、障害に関係なく、芸術を自由に鑑賞(場合によっては活動)できる状況をつくる、ということです。
 したがってここではジャンルは問いません。このような活動をしている団体、個人はたくさんいます。そのなかで今回は舞台芸術に絞って次の方々にスピーカーをお願いしました(発言順)。この点については多くの芸術情報プラザアドバイザーの方々のお力をお借りしました。


輪嶋東太郎氏:ヴォイスファクトリー(株)代表取締役 Tel 03-5388-0041
 未就学児も可というクラシックコンサートを企画、実施している。そのことを明記し、同一内容のコンサートに比べて入場料を安くしている。いいかえれば、とくに内容を児童向けにしているわけではなく、ただ、プログラムの解説は分かりやすいものにしている。またこの時は視覚障害をもつヴァイオリニストのリサイタルであったので、チラシやプログラムに点字を加えている。一般 観客はそれを理解してくれているが、問題は入場料を低く押さえるための方策である。

峰岸直子氏:東京グローブ座制作担当 Tel 03-3360-3540
 グローブ座カンパニーを編成、青少年に限らず、だれでもシェイクスピアを質を落とさないで楽しめるような演出、上演を行っている。その工夫はたとえば、死とか凄惨な場面 は、あまりリアルにせずにシンボリックに、あるいはコミカルな味を加え、また客席に話しかけ、交流したりして、楽しく鑑賞できるように考えている。このカンパニーは東京グローブ座だけでなく各地で公演している。

西川箕乃助氏:(財)日本舞踊振興財団理事 Tel 03-3354-5496
 財団活動として、小中学生に日本舞踊や伝統楽器に親しんでもらう活動を行っている。各地の教育委員会や学校と話し合って地域や学校単位 で作品や演技の決め事などの解説やワークショップを行い。その後正規の作品をきちんと上演する。場合によっては子供たちにも浴衣などの衣装で舞台で踊ってもらうこともある。

朝倉まみ氏:シャンソン歌手 Tel 03-5698-6589  
歌詞を手話で表現しながら歌うシャンソン歌手。たんに意味を伝えるだけでなく、手話的に意味をアレンジしたり、場合によっては手話と別 にジェスチャーを使ったりして、シャンソンのもつドラマ、感動を伝える工夫をしている。また、会場の観客に手話を指導し、一緒に歌うといったこともしている。

伊予田あさ子氏:伊予田バレエスタジオ主宰 Tel 0468-65-8070
 知的障害をもつお嬢さんにバレエを教え、コンクールのバリアフリー部門に優勝するまでになった。知的障害者のためのバレエクラス、エンジェルクラスを開き、舞台活動も行っている。さらに客席との一体感を醸成するためにいろいろと工夫をしている。2002年1月には、エイジ、キャリア、バリアの3つのフリーを実現するための公演を企画している。


 それぞれのスピーカーはデータやビデオを使って説明、最後に朝倉さんの手話シャンソンが披露されました。多くの参加者があり、セミナー時間内だけでなく終了後も各スピーカーへのコンタクトがあって盛会でした。   芸術、そして芸術家は崇高なものであり、それを鑑賞する者にはそれなりの資格条件があり、厳しいマナーが求められる、という考え方もあります。たしかにあるていどの知識はあったほうがいいし、マナーを守ることは必要でしょう。しかし、もっとも重要なのは芸術を愛することそして親しむことであり、そのためにもなかなか触れる機会のすくない人、簡単に触れられない人たちのために、その機会を用意することがまず必要ではないでしょうか。




掲載されている評論へのご意見やご感想を下記連絡先までお寄せ下さい。
お寄せ頂いたご意見・ご感想は両先生にお渡しして今後の掲載に反映させて頂きます。
また、このページに関する意見等もお待ちしております。
 
株式会社ビデオ
〒142-0054東京都品川区西中延1-7-19
Fax 03-5788-2311