D×D

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト

 

ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.38 地元に支持されるバレエ団、ダンスグループを
  1年に1回おどりを見に行きませんか 
2001年9月26日
 

 今回は最近見た舞台から、感じたこと、考えたことを記してみたいと思います。それは大きく分けて2つあります。
 まず地域との結びつきです。9月16日に栃木県総合文化センターで開催された「ドン・キホーテ」は、佐野と小山にスタジオをもつ藤田恭子と宇都宮にバレエスクールを開いている石原千代が力を合わせて作り上げたものです(敬称を略します)。主役は下村由理恵と佐々木大、現在もっとも輝いているコンビ。さらに、李波、小原孝司、長瀬伸也など力のある男性ダンサーを多数招いています。しかし女性は一部キャラクテールなどにはゲストが加わっていますが、大道の踊り子、キトリの友人、森の女王、キューピッド、さらにグラン・パ・ド・ドゥでの2人のバリエーションなどのパートは、藤田真砂子、鈴木直美などの東京で活動しているここの出身者を含めて、地元のメンバーが担当しています。演出・振付は篠原聖一、現地の状況に合わせたところも見えますが、古典としての格調をきちんと保っています。主役クラスはもちろん、地元のメンバーも(稽古は大変だったようですが)よく頑張って、厚みのある見応えのある舞台を作っていました。出演者だけでなく、主催者、関係者にもいい経験、そして自信になったと思います。
 1,500を超えるチケットは完売、満員の客席も熱気につつまれ、いい雰囲気でした。
 ここで考えたのは、各地域で地元に支持され、愛されるバレエ団(ダンスグループ)が生まれたらいいな、ということです。
 たしかに、地元のスタジオなどの団体の合同公演はありますし、それぞれの発表会も頻繁に行われています。しかし、それは一時的なものか、私的なものであって、地域を代表するものではありません。欧米がそうであるように(別 に真似をするという意味でなく)、多くの人にバレエやダンスを楽しんでもらうために、少なくとも県庁所在地くらいには、定期的に公演ができるような舞踊団があってほしいのです。いきなり県庁所在地が難しければ、まず人口百万以上の、いわゆる政令都市から。このページで前にハンブルグやシュツットガルトの話を取り上げたことがあります。
 まちの住民の5人に1人が年に1回舞踊公演を見れば20万人、観客2,000人の公演であれば100回分に相当します。50回でも、20回でもオンの字ではないですか。しかも周辺地区からの観客も考えれば、15人~20人のうち1人、いいかえればそれぞれに15年から20年に1回舞踊公演を見てもらえばいいわけです。私のように年に300回以上見ているものにとっては、10人のうち1人が年1回舞踊公演を見ることは決して不可能には思えないのです。もちろん、舞踊のことだけを考えるのでなく、音楽、演劇、あるいは映画、スポーツのことも考慮に入れなければいけませんが。ちなみに海外旅行は全国で7人に1人です。
 これには、質の問題はあります。なかなか主役クラスまでを専属的にかかえるのは難しいかも知れません。とりあえずはゲストでもいいと思います。こういう公演を続けていれば、地元のダンサーも育ち、なお親しみのもてる存在となるでしょう。現実に東京や海外で活躍しているダンサーの大半は全国各地の出身者なのですから、そういう才能流失を抑えればいいのです。
 各地の自治体や公立施設、そしてテレビや新聞などのマスコミの方々に、ぜひ積極的な支援をお願いしたいものです。私個人は公立文化施設のかたに、地元出身のダンサーを集めた舞踊の会を主催して下さい、絶対に満員になりますから、とお願いしています。
 これに近いケースが「バレエシャンプル・ウエスト」です。今村博明、川口ゆり子の2人が主宰するこのバレエ団は、名称(西の劇場)の示す通 り八王子に本拠をおき、定期的に地元で公演を開いています。この9月13、14日も八王子のいちょうホールで「白鳥の湖」を上演しました。初日は抜擢の松村里沙と吉本泰久の若手、2日目は川口・今村が主役で、ダンサーも男性を含めて大分充実、一部を除いて自前のメンバーで古典全幕もできるところまできています。
 ここで、ご夫妻できていた三浦雅士氏とちょっと話をしたのですが、こういうところこそ、市でバックアップして「八王子シテイバレエ」的な存在になったらいいと思うのです。丸抱えでなくていいのですから、そんなに費用はかかりません。たとえば、共催として、高齢者、障害者、施設入居児などを招待する。これは市のイメージを高めますし、市民へのサービスにもなるのではないでしょうか。
 また、武蔵野市には「武蔵野シテイバレエ」があります。まだ年1回で寄せ集め的なところもありますが、市の支援を受けて、なかなかレベルの高い、しかも地域にねざした活動をしています。こういうところも、たとえば江東区(ティアラ江東)における「東京シテイバレエ」のように恒久的な団体として地元とより密着した多彩 な活動ができるといいと思います。

 このテーマだけで大分スペースをとってしまいました。もう一つは、9月22日の森嘉子、公演「これからの明日」、そして23日の全国舞踊コンクール「アンコール公演」で感じたことです。それは舞踊におけるエンターテイメント性、あるいはポピュラリズムの問題です。端的にいえば[お客を楽しませることとは]です。これは次の機会にとりあげたいと思います。




掲載されている評論へのご意見やご感想を下記連絡先までお寄せ下さい。
お寄せ頂いたご意見・ご感想は両先生にお渡しして今後の掲載に反映させて頂きます。
また、このページに関する意見等もお待ちしております。
 
株式会社ビデオ
〒142-0054東京都品川区西中延1-7-19
Fax 03-5788-2311