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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
Vol.85 「公立文化施設と舞踊
 

ー舞踊がアートマネセミナーで取り上げられるようになってきたー」

2003年9月2日

 ときどきこのページでもお話ししていますが、私は社団法人全国公立文化施設協会(全国公文協)芸術情報プラザのアドバイザー(舞踊)をしています。この協会、そして私の仕事をきちんと説明するのはなかなか難しいのですが、端的には全国の公立(国公立および各省庁が所管する)会館やホールの組織で、私はその効果的運営を主として芸術面からサポート、アドバイスする役目をもっています。その具体的な一つが、毎年2月に行われるアート・マネジメントセミナー(研修講座)の企画と実施のお手伝いです。
 このアート・マネジメントセミナーは全国を7つに分けたブロック(地区協議会)ごとにも行われています。全国公文協のセミナーでは舞踊に関するシンポジウム、ワークショップなどを必ず含めていますが、ブロック研修では、音楽や演劇をテーマにしたものはあっても、舞踊については残念ながらこれまでとりあげられることはほとんどありませんでした。
 しかし、このところ、舞踊を取り上げてくれるところが少しづつ現れてきました。そのなかでも、8月7、8日に札幌で行われた北海道地区の研修講座は、基本テーマを舞踊におき、舞踊についていろいろな視点から研修しようというものでした。この点についてもすでにこのページでとりあげたことがありますが、それを見てわざわざ東京から参加された方もおられました。この研修への参加資格は、市町村、教育委員会の文化行政担当者、公立文化施設等の企画運営担当者とともに、文化事業の企画運営に携わっている文化団体関係者等と、民間にも開かれたものだからです。
 実際の参加者は市町村、公立文化施設関係以外に、民間の、たとえば施設、舞踊団、舞踊家、劇団、スタッフの方々も多数参加されました。率直にいいますと、むしろ民間の舞踊や演劇の関係者のウエイトが高く、大変結構なのですが、逆に話し手としてはポイントをどこにおくかがなかなか難しいところでもありました。私は舞踊についてはほとんど知識も経験もない方々を主対象としてお話しますとお断りしましたが、専門の方には少し物足りない部分もあったかもしれません。
 私の担当は、まず舞踊の歴史というかスタイルの変遷、流れ、そして各スタイルの違いと特徴についてで、バレエ(ロマンチック、クラシック)、モダン、コンテンポラリー、ブトー、そしてフラメンコを、たとえば古典の『ジゼル』とマッツ・エックの『ジゼル』の比較などビデオを使って説明しました。
 つぎは舞踊公演のプロセスについて、ということで、私が多少具体的にテーマ、スタイル、音楽、照明、などのスタッフとの関係やホールの使い方、受け入れ方など一部ビデオを参考に、そしてNPO法人JCDN(ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク)の佐東範一代表からアーチスト側からのホールへのアプローチについて、JCDNの活動を含めて説明がなされました。
 ここで、コンテンポラリーダンスとはどういうものか、さらに具体名、たとえばH・アール・カオスや大野一雄さんはどうか、という質問が一部からあり、さまざまな意見交換がなされました。大変興味ある話合いでしたが、市町村や公立施設関係の方はどう感じられたのでしょうか。
 そして次が、場所を変えてステージで、いま注目のデュオユニット、砂連尾理さんと寺田みさこさんのパフォーマンス「あしたはきっと晴れるでしょ」とワークショップのデモンストレーション。さらに2人のマネージャー、橋本さんが加わり、佐東さんが司会してのトーク。
 ここでもダンスの発想や作法、マネージャーの役割など、具体的な説明のほか、客席も加わって活発で意義のある話合いが行われました。このデュオ・パフォーマンス鑑賞には、地元のダンス関係者も多数来場、関心の高さが感じられました。
 その夜のプライベート懇談会にも講師側に地元のユニークなメンバーが加わり、突っ込んだ議論が交されましたが、これはオフ・レコ。
 翌日は地元のアーチスト、スタッフなど舞台芸術関係者による、北海道における舞踊の将来像についてのディスカッションが行われました。
 出席者の顔ぶれのせいか、劇場の設備、照明や舞台美術などのハードやソフトの議論が主体となり、ダンスそのものよりもインフラ(基礎条件)や人材のほうに重点がおかれました。これはこれで重要なことではありますが、もう少し舞踊界そのものについての鋭い切り込みや提案があってもよかったような気がします。私もしゃべりたいことが、いろいろとありました。その一端が「アート・エクスプレス」(公文協発行)の第17号に載せてあります。
 ちょうど台風が西日本に猛威をふるっている時期で、帰りの心配もありましたが、無事帰京、なかなか充実した時を過ごすことができました。とくに主管した、受け入れ側の(財)北海道文化財団など事務局の方々には深い敬意と謝意を表します。
 次は、10月に香川県丸亀市で行われる中・四国ブロックの研修。ここでの舞踊(クラシックからコンテンポラリーへ)の舞台鑑賞と解説の内容を検討中です。これは子どもたちにどうやって本物を見せるかという意味ももっており、なんとか充実したものにしたいと思っています。出演者には貞松・浜田バレエ団のプリンシパル貞松正一郎さん、正木志保さん、アマンダ・ミラーのワークショップから生まれたグループなどが決まっています。さらに東北や九州地区でも研修の材料に舞踊を取り上げるという計画があるようです。他のブロックでも、あるいは民間のアートマネージメント研修でもぜひ舞踊(いわゆるダンスだけでなくバレエ、フラメンコなど)にもご配慮をいただきたいと思っています。
 また個人的なことですが、この11月に横須賀で、クラシック中心で、作品の構成、創作・上演のプロセス、そこでのスタッフの役割について、実際にダンサーやスタッフの方のご協力をえて舞台で具体的に解説することになっています。ここでは同時にパックステージツアーやゲネプロ公開も行います。
 また神奈川県下のある公立文化施設でも、来月2月上旬に公文協スタイルの舞踊解説、デモ付きワークショップが計画されています。出演者、講師は、砂連尾/寺田さんと私です。
 これらについてもさらに具体化したら、このページでご紹介したいと思います。
 多くの公立文化施設で本格的に舞踊に関心をもち、公演を企画するようになるのは大変に歓迎すべきことです。しかし、そうなるとなお、各地の舞踊関係者もプロとアマの区別をきちんとし、要求に対応できるようにする必要性が強くなりますし、一方施設側でもアーチストの専属までは急には無理としても、施設つきスタッフの充実が急務になるでしょう。

 

 




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