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舞踊評論家・うわらまこと氏の連載コラム「幕あいラウンジ」
この夏も舞踊界は大賑わい ーみな自己責任で頑張っているのですがー
今年の夏はいろいろなことがありました。まず台風、ハリケーン、それに地震など自然の猛威、これももしかすると地球環境問題にかかわっているのかもしれません。たとえば、海水の温度が上がると大気の状況が変化するとか。そのせい?、実は“年の精”で、とても参ってます。「お変わりありませんか」と聞かれても、「あい変わらず疲れっぱなしです」。今年の運勢でも、なにか体には気をつけろ、みたいな感じでした。 それでも、老骨に鞭うって頑張っています。先はあまり長くないでしょうから。7月もですが、とくに夏休みの8月には通常の公演だけでなく、いろいろな体験があちこちでできました。ちょっと、記録(日誌)風にまとめてみます。 ○1日:東京(オン・ステージ新聞に公演評) NBAバレエ団主催の「ゴールデン・バレエ・コー・スター」。シムキン父子の魅力と中国ダンサーの身体能力の強さが目につきました。 ○3日:山梨県清里 (アート・エクスプレスに紹介) バレエ・シャンブルウエストによる「清里フィールド・バレエ」。第16回、最後に雨が降ったようですが、全国から1万人近い観客を集め、ここから生まれるレパートリーも。 ○5~7日:東京 5日所見(バレリーナへの道) 橘秋子記念財団主催の「日本バレエ・フェスティバル」。少しずつ国内外からの出演者を変えての3日間。貞松正一郎さんの怪我で、急に佐々木大さんが下村由理恵さんの相手役に。 ○6日:松戸 本間祥公ダンス・バレエアカデミー第27回発表会。本間さんは、この9月から約3ヶ月、文化庁の在外特別研修員としてフランス、オランダに。なにを身につけてきますか。 ○7日:大分(大分合同新聞) 笠木啓子バレエ研究所創立45周年記念公演『眠れる森の美女』。渡部美咲さんのオーロラがみもの。相手役はセルゲイ・サボチェンコさん、その他のゲストもなかなか。 ○9日:東京(バレリーナへの道) 日本ジュニアバレエ。これも橘秋子記念財団の主催。全国各地のバレエ教室に所属する若き(小4~高1)ダンサー達の集団。この年代に頑張ってもらわないと。 ○10日:東京 金森穣ノマディック・プロジェクト[ーfestival]。国内外から新鋭ダンサーが集結。金森さんのダンスとオハッド・ナハリンさんの作品にあらためて注目。 ○11~12日:富山 *『スキャンダル』は8/21東京、11/20名古屋上演 和田朝子さんのお嬢さん、伊通子さんの、分かりやすいダンスを創りたいという考えに賛同、『スキャンダル』(平山素子さん、坂本真司さん、花輪洋治さんなど)照明合わせ。 ○12日:東京 日本バレエ協会全国バレエの夕べ。14日と合わせ、全国の支部から集合。プログラムに厳しい注文を書いています。なかなか難しいところですが、ぜひご考慮を。 ○13日:名古屋(中日新聞) 愛知芸術文化センター主催。あいちダンスフェスティバル第3回「ダンスコスモス」。愛知の、愛知から出た、そして愛知とかかわりの深いダンスアーティストが集結。 ○14日:東京 斉藤友佳理さんの芸術選奨文部科学大臣賞受賞記念公演「ユカリーシャ」。マニュエル・ルグリさんなどが特出。高岸さん、首藤さんなどとの『カルメン』が面白かった。 ○15~16日:京都 *A. A. P. 公演(グラーム、折原作品など)は来年2月 A. A. P.(アルテイ・アーティスト・プロジェクト)の一環としての、マーサ・グラーム舞踊団の折原美樹さんのワークショップなどを見学、芸術監督望月則彦さん、折原さん、登録ダンサー達と懇談。 ○16日:東京 東京バレエ団『眠れる森の美女』。初日のオーロラは小出領子さん(上野水香さんとのダブル)、小柄だが、しっかりした表現と技術をもったバレリーナ。 ○18~21日北九州(オン・ステージ) 北九州&アジア全国洋舞コンクール。同時に東京と名古屋でコンクールが行われていますが、ここの特徴バリアフリー、ヴァリアスの両部門は健在。バレエ、モダンもレベルは高い。 ○24日:東京 スペイン国立バレエ団。日本初演2作。ここのプリンシパルは2人とも30歳前、それなのに凄い存在感の持ち主です。スペインのダンサーはみなうまい。その理由は? ○25日:東京(協会機関紙) 全日本児童舞踊協会創作舞踊公演。18団体の21作品と合同出演作品。台風予報のせいか、評論家が来ていません。みながしっかり見ることによって内容も変わるのでは。 ○26日:東京(オン・ステージ) 現代舞踊協会現代舞踊フェスティバル。全国から集まった14作品が上演されました。舞踊地図が分かる興味があります。東北が依然強く、中部も頑張っています。 ○27日:大阪(オン・ステージ) 佐々木美智子バレエ団『ジゼル』。天下の下村由理恵さんを迎え、復帰した佐々木大さんが踊りました。人気者の出演で客席は若いダンサーたちで大盛り上がり。 ○28日:大阪(オン・ステージ) 野間バレエ団『ジゼル』。ジゼルに適役の野間景さんと、このところ連続出演(去年は振付も)の高岸直樹さん。人気ももちろんですが、こまやかな演出、演技で見せました。 ○29日:東京 Kバレエカンパニー「トリプル・ビル」。『放蕩息子』に『シンフォニック・ヴァリエーション』、『パッシング・ヴォイス』。なにしろよく入ります。吉田都さんも客席に。 ○30日:東京 民俗芸能協会公演。これも沖縄舞踊、壬生狂言、そして創作舞踊のトリプル・ビル。伝統芸能をしっかり守り、伝えていく仕事は大事。とくに壬生狂言『紅葉狩』が興味深い。 これでも見たいもので見逃しているのが結構あったり、ゲネプロを拝見させていただいたり、出席のご返事をしておきながら、疲れて失礼したケースもありました。 レベルの高い公演、すばらしいダンサーが出演している舞台も少なくなく、わが国舞踊界は大変お盛んで結構なのですが、結論はいつものとうり。 どうして、劇場専属のプロのカンパニーが(わずかな例外を除き)どこにもないのでしょう。劇場主催の公演もほとんどなく、公的助成も一部だけでみな自分たちだけで頑張っているのです。