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1.多い現代舞踊系合同公演 これまでは、毎年9月は舞踊公演の少ない月でした。というのは、7,8月の夏休みには、多くの舞踊学校やスタジオで発表会を開いたり、生徒がコンクールに出場したりして、9月はちょっと一休み、という感じだったのです。 ところが最近は9月にもいろいろな公演が行われるようになりました。とくに中旬、下旬の2日の祭日のころは公演が集中します。 今年も多くの公演が行われました。バレエ公演ももちろんいろいろありましたが、私が見たもので考えると、偶然かも知れませんが、現代舞踊系の公演がとくに多かったような気がします。 それをまず、公演会場の点から列記してみます。(敢えて公演名は省きました、必要なものは後で)。 (1)ー8日 新国立劇場(2プログラム6回) (2)ー9日 シアターX (3)ー13日 厚木文化会館 (4)ー14日 セッションハウス (5)ー15日 静岡芸術劇場(2回) (6)ー16日 東京芸術劇場 (7)ー17日 東京芸術劇場 (8)ー19日 青山円形劇場 (9)ー20日 愛知県芸術劇場(2プログラム) (10)ー21日 愛知県芸術劇場 (11)ー22日 シアターX (12)ー24日 俳優座劇場(2回) (13)ー25日 俳優座劇場 (14)ー27日 さいたま芸術劇場(2回) 正確にいうとバレエ系のアーティストが加わっている公演もありますが、ほとんどが現代舞踊系のものをあげました。 なぜ、このようなことをとりあげたのか。その前に、上記を分類してみると、14公演のうち、10が広義の合同公演、つまり複数の舞踊家、ダンスグループが集まって行った公演なのです。主催は劇場(1,2,11)、プロデューサー(12)もありましたが、舞踊協会主催の公演が6つ。現代舞踊協会(本部6,7、中部支部9,10)、埼玉県舞踊協会(14)、静岡県現代舞踊協会(5)、後記する合同公演ヴァリエーションに近いものもあります(4)。さらに現代舞踊協会は10月の初めに2公演。8月末には全日本児童舞踊協会も。たぶんこれ以外にもこの時期合同公演はあったでしょう。バレエ分野でも合同公演がいくつかありますが、9月に集中したのは偶然としても、年間をとおして現代舞踊系の合同公演の多さはとくに目につきます。念のために(3)は亜甲絵里香、(8)はアキコカンダ、(13)は馬場ひかり。 2.合同公演の機能と問題 ●合同公演とは・・・そのタイプ 今日のテーマは珍しくすんなりと、なぜ現代舞踊系に合同公演が多いのか、その意味と機能についてです。 まず、合同公演とはどういうものか、を考えてみます。 これは大きく2つに分類できます。まず、いろいろな舞踊団体が集まってひとつの作品を作るタイプ。これは合同作品と呼ばれることがあります。もうひとつは複数の団体がそれぞれ自分の作品を上演するタイプです、共同公演といえるかもしれません。 合同公演のヴァリエーションも2つ挙げられます。ひとつは一般にガラ・コンサートとかフェスティバルと呼ばれる、多くの優れたダンサーやグループが集まってそれぞれが小品(たとえばグラン・パ・ド・ドゥ、少人数による創作)を踊るタイプ。そして、統括団体などが振付者を選定して、団体のメンバーのために作品を作ってもらう方式。これは大作ですと第1のタイプの合同作品に近く、複数の作品ですと前記の共同公演との違いが微妙になります。ただ、こちらは出演者には資格(原則、組織のメンバーからオーディションで)がありますので、前記の共同公演のようにまったく別々の団体が集まって、というのとは違います。これがさらに発展したものが、プロデューサーがスタッフとキャストを選ぶプロデューサー方式です。 上記の4つのタイプのうち、ガラ・コンサート以外は日本独特の方式といってよいと思います。ガラ・コン方式についても日本ほど頻繁に行われるところはないでしょう。 このうち、合同公演のヴァリエーションとした2つの方式はバレエ界に多いのです。ガラ・コンもそうですし、オーディション方式も日本バレエ協会公演で実施されています。 つまり、はじめの2タイプは現代舞踊系に多いという問題に戻ります。しかも割合だけでなく、絶対数もバレエに比べてずっと多いのは、すでに述べたとおりです。 ●合同公演と現代舞踊 では、なぜ現代舞踊系に共同公演的な合同公演が多いのでしょうか。 ここには主として2つの理由があります。 一つはダンススタイルの問題。クラシックバレエについては、指導者によって多少の違いはあるにしても、基本やステップは世界的に共通の標準があります。また作品も共通のスタンダードがあり、ダンサーたちが初対面でも同一作品に共演することが、一つのカンパニーほどではないにしても比較的容易です。それに対し、現代舞踊系では、指導法もダンススタイルも異なり、また作品も共通のスタンダードがなく創作主体となり、いきなりの共演がしにくいため、どうしても日頃から組んでいる仲間中心の作品づくりになってしまうのです(もちろん例外はあります)。 もうひとつは率直にいって台所事情。つまり、自分たちだけで自主公演、リサイタルをやるのは金銭的、芸術的(作品的)にいって難しいということです。現代舞踊分野では、現代舞踊協会に限らず多くの合同公演(共同公演)が企画されるのは、それだけニーズがあるということになります。はっきりいうと、自前の単独公演のできないところにとっては、このような合同公演はきわめてありがたい機会になるわけです。 現代舞踊家のために付記しておきますと、自主公演をやりながら合同公演にも参加する、きわめて創作意欲と能力の高い人たちも多数おります。 ただ、口の悪い批評家にいわせますと、「見たい人よりも踊りたい人が多い」という現状を作り出したのは、いろいろと事情があったにせよ、現代舞踊界自体であったというのもまた事実なのです。 3.合同公演を超えて・・・プロフェッショナルなカンパニーに たしかに、合同公演にもメリットはあります。観客にとっては。いろいろな創作者やダンサーをまとめてみることができますし、踊る方もとくに新人人とっては登竜門としての価値はあるでしょう。それ以外にも上記の各公演のなかには、協会主催のもので会員の研修を意識してプログラムを組んでいる、共通のテーマで競演させる、終演後作品についての話し合いをする、などの工夫がみられます。 ただ、大切なのは、プロのカンパニーは、自前の公演を行える力を備えなければいけないということです。合同公演カンパニーに終わらず、自前で客を集め、また後援や助成を受ける力を持つべく努力して欲しいと思います。たしかに環境は厳しいです。でもコンテンポラリーダンスのカンパニーでは、それを実行しているところがいくつもあります。 率直にいって、コンテンポラリー分野にだって、ただ目新しいだけ、エキセントリックなだけ、ダンスとしてほんとうにすばらしいかというと疑問のあるカンパニーやダンサーも数多くあります。一瞬の輝きに終わるところも少なくないのです。それに比べ、現代舞踊系では地道に長い間活動を続け、地域に密着しているところも各地にありますし、面白い作品もあり、魅力的なダンサーもたくさんいます。 それらが脚光を浴びないのは、マーケット(集客)や広報活動のことをあまり考えないから。それは知り合いにチケットを頼んだり、チラシをばらまくことではありません。もっと広く一般に注目されるような活動をすることです。それには、事務能力と別のマーケティングのセンスが必要です。その点は、生徒や父兄に頼らず、ダンス、作品に賭けているコンテンポラリー分野に大いに学ばないといけません。コンテンポラリーと称しながら合同公演しか出られない人たちも、ぜひ一本立をめざしてがんばって。 現代舞踊協会でも、このような点に力をいれて、会員たちが一本立ちできるような指導をし、方向付けすることが強く求められると思います。真のアートマネジメントの専門家、プロフェッショナルが求められるゆえんです。 舞踊家側も、自分が舞踊家でいられるかどうかは、お客さま次第という意識を強く持ち、自分の能力をいかに伝えられるかに努力してほしいものです。そして、自分のためでなく、お客のために踊るのが、そしてお客に感動を与えるのが芸術家だということを忘れないで下さい。 |
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