フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
非常事態宣言のパリ
まさか!だった。11月13日の夜10時過ぎにこんなニュースが飛び込んでくるとは!
アメリカのロックグループのコンサート会場のバタクラン劇場と、その近辺の普通のレストラン数カ所とフランススタジアムで起こったテロ事件。知人や家族で楽しいひとときが一瞬にして地獄となるなんて。
翌日は多くの美術館が閉館して、コンサートや公演も中止。レストランも閉めるところがあって、街は閑散。これがパリ?という感じ。特に観光地が閑散としていて、 パリ市長が、パリを世界一の観光地にすると宣言した矢先の事件。日本からのツアーもキャンセルになったらしい。
11月17日はボジョレーヌーヴォーの解禁日だったのに、事件のせいか店はさっさと店じまい。
この先どうなるのかと思っていたら、5日後の18日にパリ北部のサンドニで銃撃戦。またテロ?いやいや、これは警察が容疑者の居場所を突き止めたのだから、よくやったというしかない。近隣の人は命が縮んだと思うけれど。
来年2月まで非常時地宣言は続くそうだ。
エッフェル塔もフランス国旗を映し出している。では、その下にある玉は何なのだろう?
事件から10日経って、現場へ行ってみた。
バタクラン劇場
二つの広い通りが交差するところで、劇場前はもちろんのこと、向かいの道路の歩道まで、100メートルにも渡って献花されていた。
シャロンヌ通りのレストラン
銃弾の跡が生々しい。
花に埋もれてよく見えないけれど、ガードレールの手前に黒い自転車があって、その向こうに一回り小さな自転車が停めてある。たぶん親子でここに食事に来て事件に巻き込まれたのではないかしら。自転車はあるのに、その持ち主はもういなくて・・・。犠牲になった人たちの写真や添えられた言葉を読んでいたら涙が止まらなくなった。誰にでも自由はあるし、その自由とその命を阻むことは決して許されないことだ。
フランスは負けない!
事件後は喪に服す形で多くの公演やコンサートが中止された中、クレテイユのMACメゾン・デ・ザールでは、ダンスフェスティバル・カリプソが元気に行われて、超盛り上がった。
監修したカンパニー・カーフィグの振付家ムラド・メルズキが最後に出てきて、一言、「これがフランスさっ!」まさにその通り。 自由の国、文化の国、それがフランスなのだ!
バーやレストランのテラスにいた人が犠牲になったから、これからは店の奥の席に座ろうと決めたけれど、街に出てびっくり。何事もなかったかのようにテラスでワイワイやっている。
そっか、テロを恐れて引きこもってしまったら、テロリストの思う壺。何が起ころうと彼らが嫌う自由と文化を楽しむ姿勢を見せることが、彼らへの抵抗なのだ。だから、こうしていつのも日常に戻る。フランス人は排気ガスもなんのそので、こうして店の外でワイワイやるのだ。人生楽しまなくっちゃ、意味がない~!
フランスでは自由に武器を買うことも持つこともできないから、それなら防弾チョッキでも買おうかと思っていた矢先に銃器販売店主の記事。「メトロに乗るのに怖いから防弾チョッキを買いに来た人がいたけれど、それをつけるとかえってテロリストに見えますよと忠告した」。そうか、それならやめとく。
劇場も警備が厳し~
バタクラン劇場はイスラエル国境警備隊へのオマージュ・ガラを開催しているために、以前から脅迫されていたとの情報。ということは、とりあえず他の劇場は大丈夫なのだろうと心を落ち着けて劇場へ。
今までフリーパス状態だったテアトル・ド・ラ・ヴィルも荷物検査に金属探知機でチェック。
オペラ座バスティーユ劇場は、かの有名な外階段を完全封鎖。ここから劇場に入るのが好きだったのに、残念~
白いテントがおしゃれ~なんて言ってられない。兵士が銃を構える横に並んで荷物検査。トロトロしている客にイライラする警備員。「コートの前を開けろ~」「鞄を開けろ~」
オペラ座ガルニエ宮も長蛇の列。劇場には早めに行くべし。
荷物検査があるから、公演前にお買い物したりして荷物を増やすのは避けたほうがいいなあ、あ~全く面倒臭いなどと思いながらシャイヨー宮劇場の階段を降りたら、これ!アフリカ~
暗い気持ちが明るくなる。劇場って環境も大切なのだなあ。公演を観る前にも後にも和めるのがいい。
美術館でダンス
今年になってダンス公演が美術館で行われる機会が多くなった。リユーアルしたピカソ美術館でダンス公演があると聞いて行ってみた。ダンスと美術、一度で二度楽しめる、しめしめ。
アンブラ・セナトール。ヨーロッパ各地の振り付けコンクールで賞をとりまくっていて、日常をさらりとシュールに描く作風が独特で人気がある。
建物の構造を生かして、ガラスの向こうに見える三つ子がそろいの髪型で同じ動きをするのがシュール。このうちの一人は男!
ホールから始まって、3階までダンサーに誘導されて美術館巡り。アンブラ・セナトールの普段着みたいな作風は、ぱっと見ではパフォーマンスに見えないこともあって、一般の入場者が怪訝な顔をして横切るのも面白い。
白を基調にした内装は、確かに作品を引き立てるけれど、昔のお屋敷風の建物の方が温かみがあったなあ。
秋たけなわ、食欲とスポーツの秋
11月1日はトゥッサン(万聖節)。アメリカのハロウイーン、日本でいうお盆なので、田舎に帰ってお墓参り。10月は肌寒いけれど、なぜか毎年この時期は暖かい。
田舎の家でウサギを捕まえようと罠を仕掛けたら、ハリネズミがかかってた。
うさぎなら食べられるけど、ハリネズミじゃあダメだから逃がしてあげた。
翌日近所の人から「鹿の前足いる?」
田舎ってダイナミック!もらった前足の長さはゆうに50センチある。赤ワインに一晩漬けてから、コトコト煮ること1時間半。かかなり縮んだけれど、美味しかった~。こんなのパリじゃあ食べられないし、まさか自分で料理するなんて思ってもみなかった。田舎の醍醐味だ~
天気も良いので、ボルドー近くの貴腐ワインの産地に行ってきた。友人が参加する自転車競技には全く興味がなかったけれど、貴腐ワインの産地だと聞いてほいほいとついていった。
あいにくブドウの収穫は終わってしまったようで、ちょいとつまみ食いはできなかたけれど、このブドウの木から貴腐ワインができるのかと思うと、愛しい気持ちになる。
昔、この辺りに広大なぶどう畑を持っていた公爵が、長旅から帰ってみると、ぶどうが全部腐っている。がーん!どうすべ?捨てるにはもったいない。どうなるかわからないけれど、例年通りやってみよう。と、できたのが甘~く香りの高いワイン。これが貴腐ワインの発祥伝説だよとワイン農家のおじさんが教えてくれた。
耕作面積は狭いし、小さな農家80軒が作っているだけだから高いんだよ。フォアグラもいいけれど、ブルーチーズと一緒に食べたら、もう最高~♪と目をほそめるおじさんにつられて買いました。確かに高いけれど、おいし~
その横では、3500人が参加した自転車と徒歩競技。仮装審査もあっていろんな人がいて面白い。
早々とサンタが現れ、
カラフルなかつら軍団
アステリックスもいる。そんな中で気に入ったのがコウモリ女
ハロウイーンの影響かな
この自転車競技には、50km、25kmなどの距離別のカテゴリーに分かれていて、その中に15kmの仮装専門カテゴリーがある。それなのに、仮装の「か」の字もない服装の人がたくさんいて、オーガナイザーが泣いていた。50キロも25キロも自転車で走る気はないけれど 15キロならと参加したのだと。規則にはお構いなく、自分のやりたいことだけをやるフランス人、さすが。日本人とはメンタリティが違うのだ。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。