フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
春一番は吹き荒れるわ、地震は起こるわ、セーヌ川が氾濫するとの噂が飛ぶわ、突然1時間短くなるわの3月。でも明るい夏に向かっている実感があるから許しちゃう。渡邊峻郁(わたなべたかふみ)さんを見にトゥールーズまで行き、パリのポンピドゥーでローザスの9時間公演を見、ストが盛り上がる中、弁当がじわじわと浸透する今日この頃。愛の南京錠を付けても、別れるときは別れるのさっ。
バレエ・デュ・キャピトルのコッペリア
去年の夏のマルセイユ・フェスティバルで見た渡邊峻郁さんが素敵だったので、トゥールーズまで見に行っちゃいました。演目はコッペリア。ボルドー国立オペラ座バレエ団芸術監督のシャルル・ジュード版なので、50年代のアメリカが舞台。渡邊峻郁さんはソリストだけれど、ガンガン主役を踊っていて、今回も6公演中3回をフランツ役。入団2年目の中里佳代さんと金子稔さんも頑張ってました~!
トゥールーズは、川が流れる古い町。旧市街は細い通りがくねくねと続き、のんびり散歩するにはいいけれど、進入禁止、一方通行だらけなので、よそ者の旧市街への車での進入は勧めない。ぐるぐると回っているうちに目的地からどんどん離れ、ようやく抜け出したと思ったら渋滞の環状線。歩けば5分が車で30分。
もちろん兵士が巡回している。この町、結構熱いからね。
町の中心地にどーんと構える市役所の建物の中に、劇場がある。キャピトル広場にあるからバレエ・デュ・キャピトル。シンプルでよろしい。
これが入り口で
階段の踊り場には、ピカソの「パラード」が!
ホール飾られた舞台写真のほとんどが 渡邊峻郁さん。トゥールーズのスターじゃん!
「美女と野獣」のワンシーン。かっこ良くてホレボレ~。写真では見えにくいのが残念。
ローザス、ポンピドゥー・センターで9時間公演「 Work/Travail/Arbeid 」
アンヌ・テレサ・ド・ケールスマイケルのローザスが、ポンピドゥー・センターで9時間公演をした。 パリ・オペラ座とポンピドゥー・センターの提携によるもので、オペラ座でチケットを買っても、ポンピドゥー・センターで見ることになるわけ。
9時間公演と言っても、ダンサーが踊りっぱなしなのではなくて、1パートが約1時間のものが9つあるという感じ。2013年に初演された「Vortex Temporum」をベースに、美術作品としてのダンスという趣旨。
床にチョークで円を描いてから、ミュージシャンが10分ほど演奏して、一人か二人のダンサーが無音で踊ってから、ミュージシャンとダンサーが一緒に30分ほどパフォーマンスする。ダンサーが壁に寄り添ったら終わりで、次のダンサーがまたチョークで円を描いて、別のミュージシャンとダンサーが演じて、ということの繰り返し。私が見たのは、バイオリン、チェロ、フルートで、ダンスはソロかデュエットだった。ピアノもあったらしいけれど、午前中だったのかな。
観客席はないから、好きなところに座ったり立ったり。寝っ転がってもよし。
子供はチョロチョロするし、その親は携帯覗き込んでいるし、ダンスを見に来たんじゃあないの?と聞きたかったけれど、ポンピドゥー・センターの展示のチケットを持っていれば誰でも入場できるのだから、ダンスより休憩場所として利用する人がいたわけだ。
客層がいつもと違うわけで、この人たち、会場のど真ん中にデーンと座っているから、関係者かと思っていたら、ただの観客。ダンサーに場所を空けるというデリカシーは、ないのか~!とムッとしていたら、私の前に平気で座り込んだ奴がいて、ムカッ。周りにたくさん場所が空いているのになんで私の真ん前に?人の迷惑顧みず。さすがフランス人。
人が絶えず出入りするわ、さっきまで空いていた場所に誰かが寝っ転がっているわの落ち着かない環境なのに、客にぶつかることもなくすごい勢いで走って踊るダンサーたちの集中力と即興性には感心した。
興奮してどんどんダンサーに近づく子供達。見るに見かねて係員(グレーのシャツの男性)が注意したけれど、親は子供をほったらかし。これがフランス式教育法か。ダンスはスペースが必要だし、チョロチョロしたら危険だということを教えないのかしらね。
外が明るいときは、中が見えにくいガラス張り。ただで見るには顔をガラスにくっつけて。時々ダンスより面白い人がいたりして。
日が暮れて照明がつけば、外から丸見え状態。
ポンピドゥー・センターはいつも混んでいるので、時間に余裕を持って行こう。図書館用、展示見学用、すでに入場券を持っている人用の3つの入り口があるので、確かめてから並ぶべし。
今日も見事な長蛇の列。
ローザスのこの作品は美術を鑑賞するように、出たり入ったりして、気に入ったところでじっと見るように鑑賞するのが良いと言われたけれど、外に出てまたこの列に並んで、荷物検査を受けるのは面倒臭いので、結局ずーとダンスを見ていた。
別の場所では砂の城を黙々と作っているアーティスト発見。集中するためなのか、ヘッドホーンをして外の世界を遮断している。
シャイヨー少年少女合唱隊
シャイヨー劇場での少年少女合唱団の練習風景。歌はいいけれど、動きはまだまだ。でも、ちゃんとダンサーが指導しているのは良いことだ。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。