フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
また来てしまったアビニヨン
今年も当たり前のように来てしまい、朝10時から最終の22時公演まで、いかにたくさんの公演を観て、いかにたくさんの路上パフォーマンスを見られるかとギネスブック挑戦感覚で意気込んだものの、1週間もこんなことを続けたら疲れがどーっと出て立ち直れず、こうして皆様へのご報告が遅れているわけであります。とほほ…
でも、滞在中はパフォーマーの熱気に煽られて元気をもらって走り回っていた。劇場に路上とあちこちでいろんなことが起こっているし、特に路上はいつ何が起きるかわからないから、耳をそばだて、鼻を嗅ぎ分け。これがクセになるとやめられない。というわけで、今年もアビニヨン。
今年はいつもより1週間遅く、フェスティバルの後半に来てみたら、結構空いている。7月14日の建国記念日の祝日を利用する人が多いから、週末を過ぎるとぐっと人が減るのに加えて、14日のニースのテロの翌日はホテルのキャンセルが相次いで、それまでは街を歩くのも困難なほどの人出だったのに、いきなりガラガラになったとアビニヨン在住の人が言っていた。完売だった公演に空きが出たから、見るには良いけれど、劇場を借りる側は大変だっただろうなあ。それにしてもうんざりするほどの荷物検査。おかげで安心して客席に座っていられるのだけれど、旅行かばんダメ(コインロッカーのないこの街では、駅→劇場、劇場→駅ができないってことか?)、ヘルメットダメ、保温魔法瓶ダメ、スプレー式のものは一切持ち込み禁止で、UVクリームが山ほど入り口に置き去りにされていた。水は50CCの透明のペットボトルのみで、炭酸飲料もダメで、コーラなんてもちろんダメ。インの会場では、ライトでカバンの中身を照らすところもあって、プライベートもないのかとムッとしたけれど、安全のためなら仕方がない。オフは劇場によってかなり甘いところもあったけれど、建物に入るたびの荷物検査にげっそり。
これが今年のインのプログラム
シディ・ラルビ・シェルカウイの「バベル7.16」は、法王庁の中庭で。アビニヨンバージョンはアビニヨンの歴史解説から始まる。シンプルな装置が場面をテンポよく変えて、ロボットみたいなダンサーに案内されて、アメリカへもヨーロッパへも中近東へも日本へも旅ができる。音楽とダンスと美術が一つにまとまったそれはそれは素晴らしい一夜だった。上月一臣さん、阿部一成さん、吉井盛悟さんトリオは、日本語で御構い無しに喋りまくり大爆笑。身体表現は言葉を超えるのね。
オフは当日買いでどうにかなるけれど、インは早くから売り切れることもあるけれど、諦めることなかれ。インのオフィスの切符売買の掲示板に行ってみよう。ここも一つの情報源。売りの多い作品は、面白くないという目安になる。
それにしてもこの小さな街にオフだけで1400以上もの公演が3週間の間に行われて、路上を入れたら数えきれない。まさに生きる芸術の祭典だし、市場でもあるから、世界中から劇場のディレクターやプログラマーが来ている。ここでヒットすれば、その先がつながるのだから、みんな必死。
今年も花柳衛菊さんと再会。平家物語をテーマに、創作日本舞踊と篠笛と薩摩琵琶の共演。左から坂麗水さん、花柳衛菊さん、福原道子さん。ピンボケ写真ですみません。
公演の空き時間には、宣伝も怠りなく。音が大きい方が人の気を引きやすい。
去年も見かけたような…
道路は仮装大会と化しております。
天使を見かけるとは思わなかった。しかも結構ごっつい…
リドのレビューか?
出勤中
仕事中
クマがタバコ吸いますかね。
この車、ずーっとここに駐車している。それだけで宣伝になっている。確信犯だな。
オフ村は環境を考えて、紙のポスターではなく、シートに印刷。この後はリサイクルされるのだって。壁はスッキリしたけれど、小さくてよく見えない。
やっぱり壁がポスターで埋まっているのがオフのイメージなんだけどなあ。
ポスターにお構いなく店を出している人もいるし
ポスターの残骸を見るのは寂しい。
フェスティバル期間中は人も店も盛り上がっているけれど、終わればがら~ん。この期間だけ開店する店が多いらしい。商売目的でやってくる人も多いわけで、
商売ナウ~!
ミッキーとドナルドに喜んで手を出したら、風船とともにハイ1ユーロ。
アビニヨンでは稼がなくちゃ!
新聞も定期購読の宣伝販売。アーティストだけじゃないんだ。
純粋な大道芸もある。お金よりも自作のマリオネットで通行人と会話することに情熱を燃やす若いアーティスト。頑張れ~
これは大道芸だな
これは目立った、白い着物だし、炎天下にパフォーマンスしているのはこの三人娘だけ。日本から参加の世田谷シルクの堀川炎さんのグループで、路上パフォーマンスをしに来たと。午後の日差しがジリジリと照りつける中、すましてパフォーマンスしているのは日本人根性か。思わず暑くないんですか?と聞いてしまった。
パフォーマンス以外の時間はこうしてじっとしていて、お金を入れてくれるとお辞儀をする。「笠の下に何があるか興味があるみたいで、覗きにくる人が多いんです(笑)」
今年は去年ほど暑くないので助かる。でも雨は勘弁してね。
韓国は音も踊りも派手だから目立つ目立つ。
今年は自転車が増えたような気がする。確かにアビニヨンの街は自転車移動が一番便利。駐輪場は少ないから、ガードレールにチェーンで固定。
おっさんが熱射病でぐったりしているのかと思ったら、だまし絵だった。
長靴を7つくっつけたら犬になったって?ふ~む、確かに口は靴底だ。
アビニヨンで陽の当たらない静かな無料休憩場を探すのは至難の技。それを見つけました!しかも町の中心部。Atelier D’Amphouxの向かいの路地にはリラックスチェアが置いてあって、誰でも座れるし、その奥の屋外カフェにはトイレもある。のんびりやっているから何も注文しなくても、ゆっくり休んでトイレも使えるのがありがたい。ここの住人がフェスティバル期間だけ開くカフェという感じで、トイレも急遽作ったほったて小屋風。手作り感満々がいいね。
オフはアビニヨンの城壁の中だけじゃない。二つの川の間の島ではヌーボーシルクがわんさかあるし、二つ目の川向こうのヴェルヌーヴ・レ・ザヴィニヨンという街では独自のフェスティバルをやっている。そこで、ヨアン・ブルジョアの公演があるというじゃあないですか。ブルジョアはジャンクロード・ガロッタの跡を継いでグルノーブルのダンスセンターに本拠地を移した、今注目のアーティスト。
公演会場は、なんと14世紀に建てられたサン・アンドレ要塞 。以前から気になっていた場所なので、こんなチャンスは滅多にないと、アビニヨンから自転車を飛ばした。
自転車は便利だけれど、坂はきつい。ここは丘の上なのだ。遠くに見えるのが法王庁!
これが要塞の入り口。写真に収まりきらない大きさだ。
中に入ったらいきなりトランポリン
こんな狭い通路を通って屋上に出たら、
水槽の中を漂う人、
ひとりでに動く椅子
袂が見えませんが、なんの支えもないのに立っているはしご
先ほどのトランポリンの人は、壁を登っている
簡単な無重力体験のワークショップもあって、
最後はこれ、「Cavale」という作品の一部で締めた。夕日をバックに刻々と変わる太陽光線の中でのパフォーマンスは劇場では味わえない。落ちる夕日に吸い込まれたのか、飛び込んで行ったのか。そこにいた二人が一瞬にしていなくなったラストが衝撃的だった。
ここは丘の上だから、遥か下にサーカス小屋のテントが見える。フェスティバル・ヴィルヌーヴ・オン・セーヌの会場の一つ。
朝一番は、ツレの悲鳴。なんと、靴の中から巨大芋虫が! 直径1.5センチ、長さ10センチはある。何を好んで靴の中に繭を作ったのか、蒸れた足の臭さが孵化するのに快適だったのか、聞いたけれど答えてくれない。それにしてもトルコブルーの斑点が美しくて見とれてしまった。蝶になるのか蛾になるのか、誰か教えて~!
さすが南のキャンプ場、パリでは絶対に見かけないものに出くわす。これぞ自然を謳歌する夏のキャンプ場ならではのこと、アビニヨンの街中のホテルでは見られないぞ!と言い聞かせ、自分の靴の中を覗き込んだのでありました。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。