フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
タイフーンって暑いの?寒いの?
こう質問されて固まった。台風が寒いか暑いかと聞かれてもなあ。冬に比べれば暑い時期に起こるから暑いわけだし、雨が降れば夏でも気温は少し下がるわけだし…。
あぢ~、日本の夏はきつい。30度+80パーセントの湿気。4年後の東京オリンピックは、絶対に日本に有利だと思う。フランス人はこの暑さと体にまとわりつく湿気には耐えなれないからなあ、などと思いながらパリに戻って驚いた。日本と大して変わらないじゃん。暑い。もわ~っと体温と同じくらいの風に包まれ、湿気が少ないのがマシだけれど、それでもやっぱりきつい。外を見れば木がなんとなく茶色になっている。
立ち枯れしてる。ずっと雨が降っていないからね。とうとう庭の水撒き禁止令が出たけれど、自分の思い通りにやりたいフランス人にはどこ吹く風、ガンガン水を撒いている。水を撒いたからといって警察が来るわけではないしね、とあっさり。そうしたら翌日、農家も畑に水を撒いちゃダメという指令が出た。農家は大変だ。雨乞いダンスをしなくちゃいけないのかしらねえ。
そして、30度の翌日がいきなり15度。体がついていかない~
リヨンのダンスビエンナーレ
ダンスビエンナーレに行くたびに街がどんどん開発されていて驚く。2年前にできたコンフリュアンス博物館のテラスでブッシャラ・ウイギュエンの「コルボー/からす」の無料公演があると聞いて行ってみた。ペーラッシュ駅からトラムでスッといけるのがいい。
プロではない女性たちの集団で、ただひたすら声を出しながら首を激しく振るだけの30分。頭にかぶっていた白い布が落ちて、トランスに入ったかのような人たち。ただのおばさんたちに見えるけれど、そのパワーはすごい。
このコンフリュアンス博物館は2年前にできたばかりなのに、早くも地域圏からの助成金カットだそうで、今後の成り行きが心配。でも中身はなかなか充実している。
贅沢な空間を使った吹き抜けのホールはメタリックで近未来的。設計は、設計事務所コープ・ヒンメルブラウ。
そこで来年三月まで開催されているダンスの展示「反抗する体/Corps rebelles」が素晴らしかった。ちょっと覗くつもりで行ったら、見応え十分で時間が足りず、2回も足を運んでしまった。その2回目も3時間半いても足りず、これまた時間切れ。最低4時間は必要らしい。
ルイーズ・ルカヴァリエのインタビューは面白かった。80年代に一躍有名になって日本にも来たのに、体を壊して踊れなくなって。でも独自のメソードで復活した。やっぱりダンスが好きなんだなあ。
他にも6人の振付家のインタビューがダンスとともに紹介されているし、テーマ毎に作品の抜粋がモニターから流れている。
圧巻だったのがパノラマ画面に映し出された「春の祭典」。世界中で作り続けられている作品の中から8本を選んで映し出される。これはなかなかの迫力で、感動しながらカメラを回したのだけれど、あとで見たら音がない!あ、しまった、音はイヤホーンで聞くシステムだったので、私の耳には聞こえていたけれど、カメラまでは届かなかったのだった。というわけで、残念ながら音無しですみません。興味のある方は、来年3月5日までなので、行ってください。
http://www.corpsrebelles.fr
せっかくなので他の展示場も回って見た。
ここは人類博物館というか、動物もいて、地球や人類の歴史や文化を紹介しているみたい。
日本もあるよ~
マンモスから
家庭電器まで、
ロビン・オーリンが寄付したのかと思った、カラフルなやかんやおけ。こんなのが台所のあったら楽しいかも。
世界の靴の展示には花魁の下駄が展示されていたけれど、こういう高下駄は他の国にもあることを初めて知った。ペンギンとアザラシはどちらが深くまで潜れるでしょうか?そんな展示が映像を交えて展示してあってわかりやすく面白かった。
見学の後は屋上まで登るべし。
ここは二つの川が合流する地点に立てられているのだ。先端はどうなているのかしら、行ってみよおっと。
こんな通路を降りてホールに出て、
なんとなく整備された公園を歩くこと5分。
先端はこんな感じ。あら、線路が水の中に続いている。昔は鉄道が通っていたということなのかしら。誰か教えて~
振り向けば「オンリー・リヨン」の文字。
さてさて、ダンスを見に来ているのだった。リヨンに来たら絶対に行かなくちゃならないのが、メゾン・ド・ラ・ダンス。
ここはコンテンポラリーダンスがメインだから、バレエファンはオペラ座かな。でもあそこもコンテンポラリー作品ばかりだからね。
ホールでは3台のモニターから今シーズンに上演する作品の抜粋を流していた。
ベルクール広場近くのセレスタン劇場。パリのコメディ・フランセーズとオデオン座に匹敵する、由緒ある劇場。内部は品のあるイタリア式の劇場。素敵だけれど、端っこの席だと舞台全体が見えないのよね。
有名なアーティストが作ったらしいオブジェ。誰だったかなあ…
公開ダンスレッスンを楽しみにしていたのに、あいにく時間が合わなくて行けなかった。それ以外にもイベントはあったのだけれど、リヨンに来たらやっぱりグルメに走るしかないでしょ。
通りで見かけたイタリア食品祭。大きなソーセージに惹かれて覗き込んだら、
うわ~、美味しそうというか可哀想というか
これが断面図。ちょっとホッとしたかも。丸焼きの断面だったらどうしようかと思ったのだけれど。
夜は奮発してレストラン。リヨンはソーセージが有名なので注文したら、でーんとこれだけ。量に驚き、付け合わせが何もないことに目が点になっていたら、後から忘れました~って茹でたジャガイモが出てきたけれど、草食人種の日本人としては緑の野菜が欲しい…
リヨンのイメージはやっぱりフルヴィエールのノートルダム大聖堂で、これを見ないと落ち着かない。
夜見てまたほっこりする。
リヨンに来てまず降り立つのが、パー・デュー駅。でかい。
セキュリティも厳しくなって切符を持っていないとホームに上がれない。
兵士が銃を持って見回る駅構内。これはペーラッシュ駅。そうそう、リヨンには二つの駅があって、まずパー・デュー駅に到着して、それからほとんどの電車は引き込み線駅のペーラッシュで終点となる。ドーッと人がパー・デュー駅で降りるので慌てるけれど、じっと我慢。ホテルの場所によってはペーラッシュ駅の方が便利な事もあるからね。切符にパー・デュー駅までと書いてあっても検察は来ないから、ペーラッシュ駅までのんびり座っていればいい。検札が来ないのを良いことにただ乗りする人もいるくらい。
パリに戻るときには、ペーラッシュ駅から乗るようにしている。その方が人も少なくて慌てずにすむから。ただ、全ての電車がペーラッシュ駅発ではないので事前チェックは必要。
ペーラッシュ駅からほど遠くないところにあるベルクール広場。だだっ広いのでイベント会場になることが多くて、今回は国際身体障害者主催のイベント。
バスケットボールのコートもある。
ところで、このベルクール広場にある大きなルイ14世の銅像。実はこれを作った彫刻家フランソワ=フレデリック・ルモは、出来上がった銅像を見て唖然。大きな間違いを見つけてショックのあまりに自殺したとの説もあるけれど、実はそうではないらしい。では、その間違いとはなんでしょう。答えは、鞍も鎧もないことで、すっかり忘れてしまったらしい。
リヨンはフランス第二の都市なのに、パリよりずっと綺麗だし、落ち着いている。貸し自転車もさほど壊れていないし、みんなのマナーも良いからムカつくことがほとんどない。お店が連なる通りは、午前中は店舗への配達もあるから車が入れるけれど、午後は歩行者天国になる。そんなのかんけえねえよぉと言って車を乗り入れる人もほとんどなく、規則を守って午前中に搬入を済ませている。パリとは大違い。
19世紀に迷い込んだような道を発見。中心街のすぐ近くなのにこんな風情が残っている。
余った塗装液やペンキなどは、普通ゴミに出さずに直接ゴミ処理場に捨てましょうというキャンペーン。環境にも敏感なのね。
リヨンの地下鉄は日本の車両と同じく座席が横に並んでいるし、つり革もあるし、なんと言っても綺麗。パリジャンには見習ってほしいと強く思う。
ところ変われば規則も変わる。リヨンのメトロとバスは良心的。1枚のチケットは1時間有効で、時間内ならメトロ、バス、トラムに乗り換えて郊外にも行けるし、往復もできるというから驚いた。短時間のお出かけなら、1枚の切符でOKということだ。わ~太っ腹とここで驚いてはいけない。乗り換えごとに検札機に切符を通さなくてはならないのだけれど、1時間以内に検札すればさらに30分の延長ができるのだと。つまり1時間半乗り放題。びっくりぽんですわ。切符を検札機に通さないと5ユーロの罰金なので気をつけよう。そういえば、地上からメトロのエレベーターのボタンを押してもうんともすんとも言わないので壊れているのかと思ったら、切符を入れてくださいの表示。なんとそのエレベーターはホーム直行便だったのだ。車椅子の人に配慮した設計。パリより進んでる~!
ジャコバン広場のイルミネーションは、噴水のある塔が星空に浮かぶような感じで、めっちゃ綺麗!
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。