フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
みなさま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
1月1日は新しい年を迎えて心新たにいざ出発!というより、大晦日の暴飲暴食で機能不全となった胃をいたわって、2日からの仕事に備える日なのだと身にしみて思いました。そう、フランスに正月休みはないんです。クリスマス休暇はあるけれど、1月2日から通常勤務。信じられませんが本当です。しかも今年は元旦が日曜日だったから、年明け早々長~い一週間となりました。
日本にいた頃の神聖な年明け、年越しそばを食べて除夜の鐘を聞きながら初詣に行って、一年を祈願するなど遥か彼方の出来事。クリスマス以降私の内臓はフォアグラ化している気がします。なんでこんなに食べなくちゃあならないんだ!と叫んだら、これはフランスの伝統だし、新年を祝うための食事だという答え。そうか、大晦日/新年はパーティイベントということなのね。5日後に控えるガレット・デ・ロワまでに胃を回復させないと、伝統を乗り切れないのです。フランス万歳!
今日はお茶漬けにしておこう…
年明けのカウントダウンとともにシャンペンを勢いよく開けて、誰かれ構わずにキスして、路上駐車の車を燃やす。これがフレンチスタイル。シャンペンはわかる。みんなで楽しく新年を祝うのから。でも、車を燃やすのも大晦日の行事で、今年は去年の17%増し945台の車が燃やされたとか。恐ろしい行事だ。もちろん燃やしたのがバレれば刑務所行き。今年は年が明けた途端にガスに郵便、税金に保険料の値上げが待ち受けていて、上がらないのは給料だけという先の暗い年始め。昨夜の楽しかったパーティがあっという間に遠ざかっていく感じがする。さむ~
シャンゼリゼでは、恒例の凱旋門へのCG投影イベントで大いに盛り上がったけれど、小心者の日本人の私はテロが怖くて行けなかった。テロに対抗するには自由を謳歌し、大いに楽しむこと!というフランス精神にはまだ到達していない自分が情けない。
年明けのイベントあれこれ
暖冬かと思ったら結構寒いまま年を明け、マイナス気温の日が続いている。雪が少ない地方やパリに雪が降って、肝心のスキー場に雪が降ったのは中旬になってから。寒けりゃ雪が降る訳ではなくて、雪雲が来てくれなければただ寒いだけ。でも、乾燥した寒さは湿気を含んだ寒さより過ごしやすいということに気がついた。昔カナダから来た人が「カナダではマイナス20度は当たり前だけれど、パリの寒さの方が身にしみる」と言っていたのを思い出した。
空気が乾燥している=パウダースノー!下手くそでも上達したように錯覚できるのがいい。青空だし、これは気持ちがいい。
暖冬のせいで鳥も人もインフルエンザにやられている。フォアグラの産地では、昨年の夏に引き続き、鳥インフルが発生したために大量のカモが処分された。夏に雛を買ってやっと育ったところにまたの被害で大打撃の農家。フランスからフォアグラが消えるのではないかという心配をよそに、店にはずらりと並んでいる。検査を逃れた闇ルートなのか、他国の検査のゆるいところのカモなのか、ちょっと不安。でもフォアグラ食べて病院に運び込まれた人はいないから、大丈夫なのだろうと買う私。
ソルドが1月11日から始まった。隣国ベルギーでは1月4日からだったからフランスは1週間の遅れ。今年は初日から50%引きの表示。お店によっては70%引きというところも。しかし、これを鵜呑みにしてはいけません。そこでソルドの心得。
1.どうしてもゲットしたいものは、少なくとも2日前に行って試着してサイズを確認すること。バーゲン品は返品できない店もあるので要注意。それに試着不可のところもある。前日はバーゲンの準備のために夕方5時くらいで閉店するところが多いので、早めの時間に行くこと。
2.どうしても欲しいものがあれば初日に行くことを勧めるけれど、そうでなければバーゲンが始まって最初の土曜日の午前中がいい。午後は家族連れで大変な混雑なので避けること。ショッピングセンターに夕方車で行ったら、3キロ手前から渋滞していたし、駐車場の空きを見つけるのは至難の技だった。
3.店頭表示は誇大広告で、全商品が安くなるわけではないから必ず値札を確認すること。色によって値引率が違うこともあるし、バーゲン品の中に正価のものが混ざっていることもある。
4.これはバーゲンに限ったことではないけれど、縫製を確認すること。破れているものを平気で売っていることもあるし、サイズの付け間違いもあるから要確認。
5.初日に行けなかったからといって落ち込むことなかれ。バーゲン初日は店員もストック室も大混乱。ある程度品物が捌けて落ち着いた時点で、新たに商品を補充することがあるからね。
あっという間に70%引きの看板が出た。しかし要注意。「Jusqu’à」という文字が見えますでしょうか。これが厄介で「~まで」という意味、つまり「70%まで値引きしますよ」なわけで、全てが「70%引き」なわけではないのだ。
「70%引き」と思い込んでレジに行ったら、「2品以上買わないとダメです」
見れば壁に貼り紙が。ふ~、やられた
しっかり値段を確かめて、損をしないようにソルドを楽しんでくださいね。ちなみに夏のバーゲンは6月28日朝8時から8月8日まで。地方や海外県は時期がずれることもあるし、早めに切り上げる店もあるので、こまめに情報をキャッチしよう。2018年の予定ももう決まっているらしい。ソルドは国を挙げてのイベントなのだ。
オペラ座に二人のエトワール誕生
年末のオペラ座は慌ただしかった。28日にジェルマン・ルーヴェが白鳥の湖の王子を踊ってエトワールに任命され、31日にはレオノール・ボーラックもやはり白鳥の湖のオデット/オディールを踊ってエトワールに任命されて、カップルがほぼ同時にエトワールに昇進。
ジェルマン・ルーヴェは11月の昇進試験でプルミエ・ダンスーに任命されていて、1月1日から昇進予定だったけれど、それを待たずにエトワール。飛び級したわけだ。まだ弱いけれど、確かに貴公子の雰囲気を持っているし、ボーラックはコンテンポラリーも古典も踊れるダンサーで、大晦日のインターネットではキャストさえわからない公演に、たった一度だけ踊って任命された。オーレリー・デュポンがオペラ座の監督になって初めてのエトワールが誕生したわけで、いつか二人が踊る白鳥湖を見てみたいものだ。
フランス三面記事
難民救済で揺れる国境の村
移民問題で多くの国が揺れている。年明けに波紋を呼んだのが、山越えして国境を越えて来た難民を助けたという理由で告訴された37歳の農業従事者。5年の禁固刑と3万ユーロの罰金刑になる可能性があるという。話はこうだ。イタリアとの国境を封鎖したために、何千人ものアフリカ難民たちが最も標高が高くて危険な山越えをして標高1871メートルのロヤという村にたどり着いた。
人目を避けて夜になると家の前を多くの難民が通り過ぎて行くのを見るに見かねて、村人が自主的に食べ物をそっと渡すようになった。難民の多くは何ヶ月にも及ぶ旅で疲れ果て、健康を崩していたからこの青年は看病を兼ねて家に泊めたという。他にも自分の車に難民を乗せて運んだ罪で訴えられたり、罰金を払わされたりした人がいるそうだ。
自由・平等・博愛を歌うフランスに、博愛の精神はなくなったのかと論争が起こっている。島国日本では2016年に難民に認定されたのは27人。これはヨーロッパから見れば唖然とする数字なのだ。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。