フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
ダンスざんす
9月は30日までリヨンのビエンナーレにいたので、パリで大々的に始まっていたジャポニズム2018のコンテンポラリープログラムは、 最終日に滑り込みセーフ。
まずは、野田秀樹演出の「贋作 桜の森の満開の下」。フランス語タイトルになると「贋作」の文字が出てこないので、どうかな~と思ったのだけれど、桜にまつわる言い伝えなどを知らないフランス人には、関係なかったみたい。
セリフは多いし、テンポの速い展開に、フランス人がどこまでストーリーを理解できたかはわからないけれど、動きが多いし、客席最前列のすぐ前が出入り口という斬新な美術、そして何より装置の桜の美しさに圧倒されて、カーテンコールが終わって誰もいなくなった舞台をいつまでも見つめる観客多数。
「C'est beau !/セ・ボー(美しい)」という言葉があちこちで。そら、見たことか、これが日本の桜じゃい!
松竹歌舞伎に東京ゲゲゲイ、そして野田秀樹に続いて勅使川原三郎。シーズン始まりのシャイヨ国立劇場には、日本の波が押し寄せている。勅使川原三郎の「白痴」は中ホールにて。2週間前にはリヨンでオーケストラバックに踊り、今度は「白痴」でパリ公演をするバイタリティに敬服。アパラタスでのアップデイトと同じく8日間公演ができるのは嬉しいと、勅使川原さん。
野田秀樹さんも勅使川原三郎さんも、カーテンコールではじっとしていてくれないから、シャッターチャンスがつかめない。
改装工事中の市立劇場テアトル・ド・ラ・ヴィルは、コンコルド広場とシャンゼリゼ大通りの間にあるエスパス・ピエール・カルダンに引っ越している。
川口隆夫の「大野一雄について」。外の垂れ幕は、大野一雄。公演は外から始まりますの案内に、出てみたら、怪しい人が…
まさかこの人が川口隆夫だとは誰も思っていないみたいだった。時々出没する、変なおじさんだと思われていたみたいで、誰も注目していない。
小道具が散乱する庭で構えていた人は、あら、もう始まっていたの?という感じだった。でも、パフォーマンスが始まれば、ご覧の人だかり。
このあと劇場に入って踊った川口さん。実際に大野一雄さんの踊りを見たことはないのだと。だからこの作品ができたのかもしれない。コピーのようでコピーじゃない。川口隆夫の中の大野一雄は、ある意味で新鮮だった。
ホールは、大野一雄写真展。
日本のヒップホップがフランスを駆け巡った。ヨコハマトリエンナーレのディレクターを務めたドミニク・エルヴュの提案で実現した、日仏ダンスコラボレーション。二人の振付家が日本人ダンサーに降りつけることと、フランスにはない日本独自のヒップホップをフランスにもたらすことが目的。
横浜公演の後、パリで公演してからフランスとスイスを回る2ヶ月のツアー。日本のアーティストがこれだけ長期間ヨーロッパツアーを行えるなんて滅多にないことだ。
横浜で見ていたから、リヨンのビエンナーレはパスしたら、ディレクターのドミニク・エルヴュが、東京ゲゲゲイの作品は、「横浜とは全然違ったわよ」と言ったので、慌ててパリ郊外のナンテールのメゾン・ド・ラ・ミュージックヘ。この日がパリ近郊では最後の公演だった。
頭で床を這う動きが面白かったジャンヌ・ガロワの「リバース」と、テクニックと動きの面白さで見せたカデル・アトゥの「要素」を踊った男子5人組。初演から1ヶ月が経って、3日に1回舞台を踏んでいるだけのことはある。随分踊り込んでいる。やっぱり舞台で踊るということは大切なことなのだ。初めて見る日本のヒップホップに、観客は大喜び。5人のダンサーたちは、歓声に応えて、幕が閉まるまで手を振り続けていた。それは良いけれど、動き回っているから、ぶれた写真しか撮れなかった。もう少しじっとしていてほしい。
東京ゲゲゲイとの合同カーテンコール。これまた動き回ってくれているので、いい写真が撮れない~
東京ゲゲゲイの奇抜な衣装と、キレのあるダンス、ビシバシ変わる照明にこれまた歓声が上がる。ただ、横浜公演より短く感じたのは、なぜだろう。エルヴュ氏が言っていたのとは違って、歌が続く。パリのシャイヨ劇場での公演を見た人も、横浜とほとんど同じだったよと言っていた。では、エルヴュ氏は何を見ていたのだろうか。。。
インタビューを申し込んで劇場側がお膳立てしてくれて、MIKEYさんもやる気だったみたいなのに、事務所の社長さんは私が気に入らないようで、すぐ横にいたMIKEYさん直接声をかけたら、「ちょっと~、勘弁してもらえますか」と言われて、MIKEYさんを覆い隠すようにしながら劇場内に入り、挙げ句の果ては「疲れているのでもうタクシーに乗って帰りました」と言われたのには驚いた。だってここがタクシーが来る楽屋口なのに。この成り行きに劇場側も唖然。事前にインタビュー内容を伝え、10分だけのインタビューで何を突っ込まれると懸念したのでしょうか。しかも記事を検閲すると。フランスでは考えられないことだと劇場側のコメント。私は単純にフランスの印象と、作品が初演から変わったかどうかを聞きたかっただけなんですけどね。
フラメンコの若手で注目度の高いロシオ・モリナ。
大きなお腹で、型破りなフラメンコを見せてくれました。お母さんを交えて、自叙伝的な作品。元気な赤ちゃんを産んでね。
3週間に渡り、オハッド・ナハリン特集を組んだシャイヨ国立ダンス劇場。カンパニーとヤングアンサンブルが4作品を上演。しかも、ヤングアンサンブルの「デカレ」は、子供専用回も。政治とは関係なく活動しているのに、イスラエルというだけで公演を阻止しようとする人がいるから、劇場は厳重警戒態勢だ。そんな中でもアトリエをやり、子供達を招待する精神が素晴らしい。文化に国境はないのだ!
オハッド・ナハリン振り付けバットシェバ・ダンスカンパニーの「ヴェネズエラ」を見ました。
現代アート見本市 ダンスもあるよ
10月のパリはイベントがいっぱい。芸術の秋、商売の秋。
FIAC、国際現代アート見本市では、最低賃金でなんとか暮らしている民衆には考えられないような額の金額が動きます。ゴッホの絵のように、この現代アートが100年以上先までその価値をキープできるのだろうかなどと、妬み半分で言ってみたりして。そんな人には無料で見られるものがいい。今年はダンスが多かったのでホクホク。
注目度上昇中のシャロン・エイアル&ガイ・ベアーの「OCD LOVE」が無料で見られる!もちろん作品の一部だけの上演だけれど、これだけ近くで見られると、ダンサーのエネルギーがダイレクトに伝わってきて、グー。大劇場で見たのとは一味違う。
低い位置で大きく足を開いているのが柿崎麻莉子さん。さすが新体操で鍛えた体だ。以前にモンペリエダンスで見たときは、まさか日本生まれの日本人だとは思わなかった。身体能力も、雰囲気も日本人離れしていて、めっちゃめっちゃ馴染んでる。
ここが会場のPalais de la Découverte。このパレ・ド・ラ・デクヴェルトを日本語訳にすると、「発見の殿堂」となることに気がついた。「殿堂」か…。ちょっと大げさに聞こえるけれど、確かに面白い博物館だ。絵画や彫刻に飽きたら、是非。
今回は、無料で入れる入り口ホールでの上演。
ルシンダ・チャイルズの作品
プティパレでもパフォーマンスがあった。
ダニエル・ラインハン。美術品の中に埋もれてみたり(横たわっているのがラインハン)
常設展の中で走り回ってみたり
美術館内を一緒に回れる感じで、面白かった
では、プティパレ内の現代アートをどうぞ
なんか変。ハンドルが二つと、サドルが二つある自転車だ。
みんな平気で作品の上を歩くから、掃除が大変。
この裸婦像が怖い。まるで生きている人そっくりで、
足の裏のシワの細かさには驚くばかり。
プティパレは、現代と古典が入り混じる、でもそれがうまく調和している空間だった。
ラシド・ウラムダン(注目されているコンテンポラリーダンスの振付家)の写真が展示されているとは!(ヴァレリー・ジョウブの作品で「無題」)
地下のジャン・カリエスの作品にはまった私。
この方が作者。ちょっと不気味なオブジェを作っていて、39歳の若さで亡くなっている。
こんなオブジェがある地下が結構面白かったし、
建物そのものが美術しているし、
中庭が気持ち良いことを初めて知った。
このベンチ、現代アートなのか、常設のものなのか、わからん。
頭が現代アートでいっぱいになると、工事現場のコンセントもアートに見えてきてしまう。
グラン・パレがFIACのメイン会場で、この中で作品の売買が行われています。
天気が良けりゃあ、日向ぼっこせにゃ損、損。
芝生の上の人口密度は高い。
観光客を狙った乗り物が、色々出ています
では、FIAC現代美術屋外無料展示の数々。
コンコルド広場にで~んと。
串団子にしか見えない。。。テュイルリー庭園にて
テュイルリー庭園では、学術員が説明をしてくれる。もちろん無料。ミリ単位で質問をする人に、きっちりと説明していたのには感心した。赤い逆三角錐が、下の石にくっついているのかいないのか、それが問題だったらしい。ふうむ。
作品と学術員の間に、何かしらの関連性があるように思う。
乗り捨てられたバイクかと思ったら、作品だった…
写真を撮りまくり、ほんとだ、すごいわなどという声が聞こえるのだが、何がすごいのかさっぱりわからなかった。
真似して撮ってみた写真。で、何?
コンコルド広場からルーブル美術館に向かう道のあちこちに作品が置いてある。
ふむ、これは…
これもFIACかと思ったら、庭園内の植物ガイドだった。テュイルリー庭園の中には、ものすごい数の木(1400〜1500本)が植わっていて、木や植物を育てる場所もある。パリの公害を少しでも緩和するために、テュイルリー庭園は重要な役割を果たしているのだとの説明に、納得。
これは現代アートではなく、
これも美術を求める人の列ではない
木の代わりに看板が立つ植木鉢
大道芸の人気者は、シャボン玉メーカー。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。