フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!
9月といえば
9月になった途端に寒くなった。秋を通り越して冬の気配がする。朝8度。セーターを引っ張り出した。その10日後、今度は29度。いい加減にしろ~!
9月といえば新学期。いろいろなことが始まる。夏休みを終えて、気分新たに新しいことが始まるのだ。もちろんダンスも新シーズンが始まったし、改装中のシャトレ劇場が再開したとの朗報もある。
ダンスざんす
今年は9月からダンス公演が目白押し。ボリス・シャルマッツ、シモン・タンギー、アクラム・カーン、フィリップ・ドゥクフレ、そしてオペラ座では杉本博司演出の「鷹の井戸」。豪華なスタートだ。
アクラム・カーンの新作+新劇場=いいね
まずは、パリの新しい劇場ル・トレージエーム・アート( Le 13ème Art)へ。トレージエームとは、13番目という意味で、 13区にあるからという単純な名前に由来する。ちょっとシンプルすぎないか?まあいいや。プラス・ド・イタリー駅前の商業施設(丹下健三デザイン)にあった映画館を改造して新しくできた劇場で、左岸で最大級の劇場という触れ込み。
建物の前はダンス会場になっていた。みんなの広場はみんなのもの、いいね!
パリの市立劇場テアトル・ド・ラ・ヴィルが改装工事中のためだからなのか、新劇場の宣伝のためなのかわからないけれど、市立劇場主催の公演のいくつかは、ここで上演される。
アクラム・カーンの新作「Outwitting the Devil」は、ギルガメシュ叙事詩をもとに、死を前にした昔の英雄を描いた作品。得意のインド舞踊を交えた振り付けを、 ダンサーがビシバシと踊る。人間業を超えるようなテクニックと迫力に、圧倒されっぱなしだった。老人役のドミニク・プティは68歳とは思えない踊りで、背中の筋肉は一見の価値あり。
シャイヨー国立ダンス劇場でドゥクフレ三昧
今シーズンのダンスは、9月からワンサカあって嬉しい。ルンルンとトロカデロ駅を出て、恒例のエッフェル塔参り。
トロカデロの土産物売りアフリカ人も健在だ。
路上販売を冷やかしている間に、会場に入る列がどんどん長くなっていた。ヤバイ。開演15分前でこの列! フィリップ・ドゥクフレは人気者だからね。こういう場合はいきなりフランス人になって、そしらぬ顔で横入りしたのだが、劇場丸ごと公演会場なので、定時にしかドアは開かず、ドアが開いた途端に押すな押すなのてんやわんやで、中に入ると受付はごった返している。なんとか予約チケットをゲットして、急いで会場に向かったものの、グループガイドの出発待ちで長らく待たされ、これなら横入りしなくても良かったのかと、ちょっと肩透かし。
中に入れば、怪しい人がたくさん。
この二人に連れられて、劇場内ガイディングツアーが始まった。
孔雀の羽のドレス!かっこいい~ ダンサー扮するガイドさんたち、プロ並みの説明をしてくれる
木製のエスカレーターは、パリでは最古のもので、1937年製
ここで、パスカル・オーバンとドミニク・ボワヴァンのデュエット。踊りに合わせてスタッフがエスカレーターの方向を手動で切り替えて、上りになったり下りになったり。ということはこのスタッフのおじさん、踊りを完璧に把握しているということか。日雇いではできない技だ。ダンスも良いが、おじさんの操作に感動。3つのステージでの公演以外に、あちこちで展示やダンスが繰り広げられている。全部見ることは不可能という説明に、欲張りマミさん、肩の力が少し抜けた。
ラジオ生放送の横で踊り、
ダンサーの服が消えたり、
プラズマジャポネでは、顔と背中がくっついちゃう
廊下で虫たちが踊り、
チアーガールズボーイズも踊る
劇場での公演は大喝采
最後は靴までお揃いの衣装を着て、白髪が混じったおじさんおばさんたちの熱演。
観客交えて踊って、
これが締め。5時間にわたる公演を大いに楽しんだのだった。ダンサーは衣装と場所を変えて、踊って歌っての大奮闘。ドゥクフレの踊りも観れたし、ビデオでしか見たことがなかったLe P’tit Balがオリジナルメンバーで観れたのは感動もの。めっちゃ楽しかったよ~
岩渕貞太パリで踊る
94県ヴァル・ド・マルヌの振り付け開発センターブリケトリで、岩渕貞太が踊ると聞いて見に行った。
センターで3日間行われた国際ダンスプラットフォームの中で、Museum of Humain E-motionという、4カ国のアーティストが各国でレジデンスしながらパフォーマンスをする企画。ちょうど歴史的建造物公開日だったので、元ライター工場の歴史などを聞きながらのガイディングツアー付き。ライターを乾かす為の広大な場所は、ダンススタジオにはもってこいの大きさなのだという説明はあっても、なぜかその場所は見せてくれず、ちょっと期待外れの見学ツアーだった。
台湾のMing-Hwa Yeh
これがシンボルの煙突
その横で踊ったのが、日本とイタリアのハーフ松下マサコ
竹林から紐を持って再登場
Ming-Hwa Yehが並べたレンガに、下駄を置いた松下。いい感じです。
そこへ、岩渕登場、待ってましたっ!鉄板を抱え、それを叩き、どさっと倒れ、庭を我が物顔で走り回る。
実は、踊りながらバキッと竹を一本折っちゃったんですが、関係者は「あら~、やっちゃったわね~」という感じで笑って終わり。この寛容なフランス人が好きだ~
一般人参加の歌手になりきりパフォーマンス。歌って踊って、なりきりまくり。これが大受け
ブリケトリの庭の竹林ではミツバチを飼っていて、最後までいるとくじ引きで蜂蜜が当たるという言葉に吸い寄せられて、最後まで観劇。
ゲットしました!
シーズン最初のオペラ座ガルニエ宮へ!
大好きなガルニエ宮へ!あら、オペラ座大階段横の金のタイヤは常設らしい。350周年記念なのかな、私にはちょっと異様に見えるのだけれど。
ダンスのシーズン開幕演目は、杉本博司演出の「鷹の井戸」とフォーサイスの「ブレイク・ダンス1」。
客席に入って最初に目にしたのが能舞台。ガルニエ宮のゴテゴテ装飾と白木の舞台。このコントラストに期待は膨らむ。
池田亮司の音楽が妙にガルニエ宮に溶け込んでいる。大きなホリゾントの色の変化は照明かと思っていたら、どうやら映像らしい。シンプルでダイナミックが気に入った。しかし、かっこよく見えたリック・オウエンスの衣装はちょっと問題かも。鷹のイメージなのかな、襟元の大きな装飾のせいで首の動きが見えないし、ゴワゴワ素材のローブを扱うのは難しそうだ。老人と若者の違いは髭があるかどうかで、これを理解するのに結構時間がかかってしまった。コールドは男も女も同じ衣装で、黒のストレートのロングヘアー付き。オウエンスの分身が踊っているみたいだった。
鷹姫は真っ赤なパンク。これは悪くないけれど、巨大な羽を持って踊るのは大変そう。奇抜な衣装も良いけれど、扱い慣れるにはまだまだ時間がかかりそう。
能楽師観世銕之丞。ものすごい存在感で、たった一人でガルニエ宮を飲み込むほど。さすがだ。
装置を挟んでのカーテンコールだったので、写真は遠目です。
休憩中は劇場内を散歩するのが常だったのに、今夜はレセプションがあるのかな、フォワイエには入れなかった。残念。
地下はピンクとブルー。ガルニエ宮らしくなくて好きじゃないな…
フォーサイスにしては珍しくバランシン風の作風だけれど、ダンサーたちが楽しんで踊っていて、見ている方まで楽しくなる。さすがフォーサイス。
公演後に必ず立ち寄るショップで見つけた「オペラ座で採れた蜂蜜」。屋根に巣箱を置いて飼っているのだ。超小瓶なのに15ユーロもするけれど、期間限定・数量限定のブランド物なので買いました。
山田マミ プロフィール
幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。